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GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係11~1人1台端末で育む主体的に学習に取り組む態度~

《読了6分》

 前回は「主体的に学習に取り組む態度」には「①知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面」「②①の粘り強い取組を行う中で,自らの学習を調整しようとする側面」という2つの側面を評価することが求められており、①、②双方の側面を一体的に見取ることも想定することについて述べました。
 この場合特に、「自らの学習を調整しようとする側面」と「メタ認知」について、「メタ認知的知識」には、例えば、「課題探究的な学習の方法についての指導」や「課題に取り組む方法を教えること」「理解しやすいノートの取り方」など「学ぶ方法」も含まれるかもしれないこと。また、「メタ認知」は、メタ認知的知識を元に「自分のことをもう一人の自分が解決の過程を振り返ること」で「新たな課題にも、解決の過程を適用しようとすると上手くいくかもしれない」ことに気づくことに意義があります。これが定着すると学習の動機付けが高まり「自らの学習を調整しようとする」メタ認知的活動ができるようになる可能性について述べました。


 今、新年度スタートから約2ヶ月を迎えようとしている中学校現場(特に筆者が在籍している学校)では、GIGAスクール構想における1人1台端末の利用頻度が高まりつつあります。

 特記すべき事項としては、弊校の場合、その取組に生徒も教員も「やらされ感」が見られないのです。

 私が年度当初に担当の先生には、本連載6「GIGAスクール構想での課題探究的な授業とは」で述べたように、教師側のスタンスとして「制限抑圧的な情報モラル的な押さえ」ではなく「デジタルシティズンシップに基づいた理解」の重要性を伝えていました。


 というのも、「主体的に学習に取り組む態度」を見取るためのベースにある「主体的」あるいは「主体的な活動」には、教師による教示、指示、制限は馴染まないからです。1人1台端末を「子どもが文具として活用する」ことが、新学習指導要領における資質・能力のひとつである「学びに向かう人間性」(評価観点の「主体的に学習に取り組む態度」)と密接につながっていると考えているからです。

 放課後の職員室は、さながら「Chromebook活用プチ研修会」となることが多くなりました。若手だけで無く、中堅以上の先生もChromebookの話で持ちきりです。


 「スライドにアニメーションつけたい」「道徳でJamboard使うと意見を出しにくい子も書ける」「フォーム英単語テストやったら、キーボード入力の推測変換で答えがわかっちゃう」「クラスルームのタイムラインの情報を見やすくしたい」「フォームで個人懇談の家庭の希望聞いてもいいですか?」「先生方専用のクラスルームを作ると全教員で情報共有できますね」「Googleカレンダーと連動すると生徒のテスト計画もできそうですね」などなど。

 あちらこちらに端末を囲んで話が弾みます。

 そして、「子どもの方が習得するのが速い」「生徒からいい方法を教えられた」という会話も聞かれます。これも、私の予想通りです。
 さらに、「休み時間にゲームやってる子はどうする」「ダメじゃない?」「いや、休み時間だからいいだろ」などという会話も聞かれます。

 私が安堵しているのは、現段階で教科指導、総合的な学習の時間、特別活動のいずれかで全教員が端末を使ったことです。
 そして、一度使うと、「どうなってる?」「これ、どうする?」という教科の枠を越えた会話が増えるようになったことです。この「教科の枠を越えた」がとても重要です。
 さらに、1人1台端末について「制限的な言動」「否定的な言動」をしないことです。
 余談ながら、弊校の所属する自治体は「教師用Chromebookが配備されていない」のです。ですから、教員は「古いWindowsマシンのChromeブラウザを使って」遅い反応に苛立ちながら耐えているのです。

 定年間近あるいは再任用教員(失礼)も若手教員に。使い方をどんどん聞いています。
 その様子を見る中堅の教員は「もし、私が定年間近なら(1人1台端末のような)新しいけど面倒くさいことにはチャレンジしないな」などと話しています。そして「(年齢が)いくつになっても新しいことにチャレンジするっていいですね」と言います。

 おそらく、弊校は現在「1人1台端末の黎明期」なのでしょう。そして、次に来る「やらかし期」で、様々な問題、課題が頻出することだと思います。
 しかしながら、教員側のスタンスが「1人1台端末を通して教科を越えた協働性」を構築しつつある現状を見ると、きっとうまくいく。そんな気がするのです。

 弊校(あるいは日本全国の中学校)では、授業進度もある程度進み、これから、各教科の「評価の見取り」が本格的になります。

 本稿のタイトルである「GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係」は、今年度のから開始された「GIGAスクール構想」と「新学習指導要領全面実施」の関連および望ましい連携について述べています。
 新学習指導要領での「課題探究的な授業」で1人1台端末が活用され、さらに「新しい評価観点」の見取る方法のひとつとしての1人1台端末を活用する。そして、そこから読み取れる評価資料の適切さについて検討する必要があります。


 「1人1台端末が教科授業で活用される以上、否応なく評価に影響する」ことと考えていいと思います。とすると、先ほど述べた「1人1台端末を通して教科を越えた教員の情報共有や教員間の協働性」が構築された状況は大変有益な教育活動に結びつく可能性があります。なぜならば、各教科がおそらく「主体的に学習に取り組む態度」の見取り方について教科の枠を越えた議論を展開するはずだからです。


 これまで「教科の枠を越えた議論」というのは、なかなか難しかったのです。(筆者はこれを「学校内個人商店組合」と呼びます)各教科の独自性に委ねられてきた領域であり、同じ生徒を指導しながらも、「他教科の評価の具体的な見取り方」について議論されることはありませんでした。

 ところが、「GIGAスクール構想」での1人1台端末の活用によって、「教科の枠を越えた評価方法の議論につながる必然性」が生じる可能性があります。

 もともと、新学習指導要領では全教科同じ資質・能力(3つの観点別評価)が謳われ、その根底には「教科横断的な評価に関する情報共有」がありました。これを「GIGAスクール構想」が別な側面で背中を押すのかもしれません。

 これで、GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係11~1人1台端末で育む主体的に学習に取り組む態度~について終わります。
 今回は、これまでの「教科単独主義」の中学校現場に、1人1台端末が「教科の枠を越えた議論展開の可能性」について述べました。

 お読みいただきありがとうございます。



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