眼差しのコンタクト
多くの制限と制約の中での新入生だから、随分とこれまでとは違う新入生学級担任であった。入学当初はマスクで表情がわからない。
中学校生活への期待は、僅かに目元の緊張感で伝わる。
担任も、このような時期だから、随分気を遣った。これまでは、できなかったら注意してできるまでやらせる。などと鍛える指導があった。それは、もう無い。
学校再開後、徐々に慣れてくると眼差しの中に笑みが見られるようになる。
少しずつ、少しずつ、諸君の本当の姿が見えてきたのは夏休み前あたり。
どこで覚えたのか、給食の配膳で担任の分を大盛りにするのだ。それも満面の笑みで飯を盛る。
担任は、いわゆる自粛期間中に肥えた。若干キツくなったジャケットのボタンを気にしていたのに、問答無用で、大盛り攻撃を続けた諸君。
いただいたものは、きちんと食べる。という躾の元で育った担任は、さらに肥える。
しかし、よいこともある。
マスク上の眼差しがほぼ全員微笑んでいるのだ。それも、嫌らしいものではなく、とても気持ちのよい眼差しで。
どうやら諸君は、担任のことを雛壇芸人として扱う時と、歴然とした学校教員として扱う部分を区別しているのだ。
ちなみにこれを書いているのは十一月の半ば。
願いがある。
憎たらしいCOVID-19が早く終息して、諸君がその本分である明るさを発揮し、エネルギッシュに中学校生活を謳歌する日が来ることを。
私の眼差しの奥には、ニューノーマル時代を切り開く最先端を疾走する諸君の姿が見えるのだ。
(2020年度生徒会誌 学級生徒への寄稿)
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