音楽鑑賞感想文「モノクローム (Dom+Roland Remix) / Every Little Thing」

切なくも爽やかさのある「Every Little Thing(以下ELT)」らしい一曲が、霧の街ロンドンからはるばるやってきた一人の男によって、凍える闇と生物的機械がうごめく暗黒空間に包まれた───。

そんな言葉を過らせてくれるELTの異色リミックス曲「モノクローム (Dom+Roland Remix) / Every Little Thing」の感想文を書き連ねていきます。

ドム&ローランドってなんじゃ?

ELTについては言うまでもないでしょう。
Dear My Friend」や「Time goes by」でお馴染みのJ-POPユニットです。

…え、知らない?
グーグルという文明の利器があるのだから、それで調べてみて。

ちなみに、今回紹介する曲の原曲である「モノクローム」は「Time to Destination」というアルバムに収録されています。
聞き比べたい奇特な人は覚えておきましょう。ジャケットはスバリ、モノクロームな色調でELTの面々が写っているものです。

私がある程度説明する必要があるのは、この暗黒空間に取り込まれたELTという概念を生み出した、ドム&ローランドの方です。
ドム&ローランドってなんだよ!モビルスーツドムの新しいバリエーション機かァ!?」なんて思う人もいる(いない)と思うので、軽く説明します。

ドラムンベースはご存じでしょうか?
分厚いとも、力強いともいえる低音の強いドラムが、「ドゥンパッドゥパッ!!」という独特のリズムを奏でているアレです。

ドム&ローランドは、そのドラムンベースでもかなりダークで引き込まれるようなサウンドに定評があるアーティストです。

とりあえず、ドム&ローランドがいかにギーガー暗黒空間的サウンドであるかは、この曲を聴いてもらうとはっきりするでしょう。
私の初ドム&ローランドとなった曲をご賞味あれ。

■Dom & Roland / Thunder

いかがでしたか?
これがドム&ローランド!悪魔の力よ!!

聞いているうちに引き込まれるような、無機質で冷ややかな、究極の闇。
もはや芸術的とさえ感じるダークネスっぷりが、ドム&ローランドの魅力です。

そんなドム&ローランドですが、日本での知名度は決して高くはない…のかもしれません。
PS2のミッドナイトクラブをやった人なら、後半にあたるロンドンステージで流れてるアレといえば分かってくれると思いますが、そもそもそのゲームを知っている人はそうそう居ないでしょう。

このダークネスに全振りしたサウンドメイキングだからこそ、この組み合わせが、このリミックスを衝撃的たらしめる最大の要因となっています。

本題

本題に入りましょう。
この曲は「THE REMIXES II」というリミックスアルバムの6トラック目に収録されています。
どうやら色々なDJが参加しているのだとか。
ドム&ローランドしか知らないというのが、私の偏食ぶりを再認識させられますね…。
(アナログレコード版も存在しており、そちらには私もよく知っている今はなき「m.o.v.e」のメンバーであるmotsu氏が参加しているようで…。)

イントロは原曲以上に寂しさを感じさせるものとなっています。
それはもう、とても虚しいぐらいです。(※褒めてます)
原曲の歌詞を読み取るならば、「映画館に一人ポツンと過去に浸りながら別れを後悔する女性」が強調されてるかのようです。
しかし、それはまだまだ序の口。
本番は1分55秒過ぎからです。

その1分55秒過ぎ、映画館にて恋人との早すぎる別れを後悔する女性を、暗黒が襲う訳ですよ。
まるで、そんな女性を嘲笑するかの如く!
戸惑う女性は、不可解で不愉快な生物めいた機械が蠢く空間を彷徨うのです。
下手したら、エイリアンの如き怪生物にでも追っかけられてるんじゃないんでしょうか…。
そんな光景が過るぐらい、いきなりドム&ローランド節が、高低差の激しいジェットコースターで急な下り坂に入ったかの如く全開になるのです。

ちなみに、歌詞は本家からサビ等の一部歌詞を除いたものになっています。
これが、また妙に無機質さを醸し出しています。
しかもこの歌詞が入る部分は全体の3割にも満たないというのです。
もはや8割方がドム&ローランド節で占められているといっても過言ではないでしょう。

ここまでくるといっそ清々しい見事な原曲破壊でしょう。
そもそもイントロからして別物ですし、先の1分55秒からは、完全にドム&ローランドの世界です。
原曲の姿は、肉塊と化しながら、かろうじて人としての意識を保つ人だったナニカの人の心の如く、僅かに残されたのみ。
実際のところ、どうもこのアルバム自体は好き嫌いが分かれるようなので、まぁ無理もないなとは思いますね。

とはいえ、感想というのはいつだって「個人」の枠を出ないものです。
私個人としては、この曲は「とても面白い曲」だと思います。

…そう、壊しちゃってるからこそ、面白いんですよ。
たかがリミックス、されどリミックス。
なんだこのリミックス!?と腰を抜かさせてくるリミックスもまた、立派なリミックスなのです。
ここまで原型をとどめてないのは本当に清々しいし、結果として「らしさ」が全面に出ているんですよね。
だから、面白いんですよ。

私はカバー曲で原曲とはまた違った感じになるというところも楽しんでいる身です。
それはリミックスにおいても同様の考えなのです。
聞いても聞いても、何だこれ!?という衝撃を繰り返すことができるこの曲が面白くないわけがないんですよ。

この曲を含めたリミックスアルバムは、当時ELTのメンバーであった五十嵐充氏がプロデュースしたもの。
その上で、ここまで好き放題な一曲が生み出されたということは、実質好きにやんなさいと言ったようなものですよ。
だからこそ、ここまで面白いと思える一曲が生まれたのでしょうね。

まとめ

繰り返しますが、好き嫌いが分かれるリミックスなのは間違いないでしょう。
原曲の8割ほどを破壊した大胆な代物で、なおかつリミックスを手掛けたドム&ローランドの作家性が強烈すぎるのだから、そのあたりは個人差として割り切るしかありません。

ただし、もしダークで重厚なドラムンベースが好きで、ましてやドム&ローランドが奏でるダークな世界観が好きだと思っているのなら。
もしくは、この怪文書を読んで興味を持った奇特なお方なら。
幸いにも、この強烈なインパクトを与え続けてくれる一曲をサブスクにて聞くことができます。
この文を読んで気になったら、是非聞いて見てほしいですね……飛ぶぞ!マジで。

(この記事は以上です。以下は購入者への感謝のメッセージのみとなります。)

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