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シュヴァルツの復刊希望 1冊目『シャンペン・スパイ』

日々新たな本が発売される出版業界。しかし、生まれる本があれば消え行く本もあるわけで、そういった本は忘れ去られる運命にあります。

幸いにして、現代にはインターネットがあるので、過去の本も調べれば簡単に見つかるようになっています。当然私もそれを享受しているうちの一人で、日々目録を読んだりネット古書店を検索したりして、面白そうな本を探しています。

ところが。そうして見つけた絶版本は、極端に高騰していることが少なくありません。めちゃくちゃ読みたいのに、数千円もするのかよ! と諦めることもしばしば。

そこで脳裏をよぎるのが、復刊の可能性です。何かのきっかけにその本が話題になれば、絶版だった本が再度刊行される可能性があるわけです。利用者投票をもとに復刊交渉を請け負う、復刊ドットコムというサイトもあります。

当然、そう簡単に復刊されるわけではないのですが、少しでも声を挙げていけば、声を挙げないよりは、復刊の可能性が高まるんじゃなかろうか、と。

記事タイトルにハンドルネームまでつけてしまいましたが、私ごときに何の影響力も無いのは承知の上で、私が興味を持っている本を皆さんにも知ってもらい、あわよくば同じように興味を持ってもらえたら、と思っています。


前置きが長くなりましたが、要するに高くて買えねーから手に入りやすくしてちょという、何とも身勝手な願いをつらつら書いてみるのがこの記事の趣旨となっています。

今回私が復刊を希望するのは、ウォルフガング・ロッツ『シャンペン・スパイ』です。


本の詳細

  • 著者: ウォルフガング・ロッツ

  • 出版社・レーベル: ハヤカワ文庫NF

  • ISBN: 4-15-050116-5

  • 発売日: 1985年10月

  • 定価: 740円+税

  • 良品の相場: 2000円前後〜(2024年1月23日現在)

〔〈モサドの星〉の回想録〕超一流の馬の育種家にして元SS将校、洗練された大金持で熱烈なアラブ贔屓。エジプト社交界の寵児と言われたこの男、実はイスラエル情報部の首席工作員だった。第三次中東戦争をイスラエルの完勝に導き諜報史上に不朽の名を残した実在のスパイが知られざる内幕を綴る迫真の体験記

出版社情報、紀伊國屋書店ウェブストアより引用

熱望する経緯

どういった経緯で私がこの本の存在を知り、読んでみたいと思い、やがて断念するに至ったか。それは、同著者による作品『スパイのためのハンドブック』を読んだのがきっかけでした。

『スパイのためのハンドブック』は、現在も刊行されている作品。この本がかなり面白いんです。
著者のロッツ氏は、イスラエルの諜報機関・モサドで活躍した元大物スパイ。

そんな氏が引退後に出版したのが、『シャンペン・スパイ』と『スパイのためのハンドブック』の2冊です。
文庫目録で『スパイのための〜』の存在を知った私は、書店でこの本を購入、読了します。ちなみに購入したのは2021年か2022年のことで、その頃読んだ目録に『シャンペン・スパイ』は載っておらず、当時は存在を知ることができませんでした。

『スパイのための〜』では、ロッツ氏が培ってきた豊富な経験を活かし、読者がスパイに向いているかどうか、実務の際にはどのような行動を取るべきか、といった話を繰り広げています。
捕まったスパイが何一つ口を割らなかったという類いの話は全くの虚構であるとか、自分がついた嘘が相手の期待通りの内容なら相手はそれを信じるとか、大物だからこそ書ける様々な裏事情やテクニックの数々。これは当たり本だ!
あっという間に読み終えた私は、その本に巻いてある帯の記述に気づきました。

同じ著者がもう一冊出している! これは買わねば、と思い、ネット書店で検索します。



……………………



無い。

どの書店でも品切れ。Amazonもマーケットプレイスの出品のみで、しかもバカ高い。どうやら絶版のようです。

あれ?と思い、改めて帯を見返します。

嘘つきやがってよ!!

いつの記述だよ。そういえば表紙側の佐藤優さんもちょっと若かったし。

若かりし頃の佐藤さん

……と思いながらも調べてみると、購入した本は2018年9月の23刷だったんですが、その年の目録(幸いにも早川書房のnoteにPDFがありました)には『シャンペン・スパイ』の情報が載っていました。ということは、本当に当時は「絶賛発売中」で、2018年以降に絶版になった可能性が高いわけです。もっと早く気づいていれば……!

そう簡単に入手できないと分かっているのに、いや分かっているからこそ、欲しくなってしまって仕方がありません。以上が、復刊を希望するに至った経緯です。

なぜ読みたいか

んなもん興味を持ったからにほかならないのですが、もう少し詳しく書きます。

タイトルの『シャンペン・スパイ』。これは著者のロッツ氏がモサドの長官からつけられたニックネームだそうです。『シャンペン』というのは当然お酒のシャンパンを指します。なぜ、そう呼ばれるようになったのか。

その答えは『スパイのための〜』に記載がありました。ロッツ氏は、ドイツ国防軍の元将校と偽って上流階級グループに潜入し、スパイ活動を行います。上流階級の相手と親しくなるには、当然相応しい生活水準が求められますし、高価な贈り物も必要になります。それこそ、シャンパンとか……。

ロッツ氏は、モサドの経費を大量に使い、いかにも上流階級らしい生活を送るようになります。そして、それだけの金を使っても文句を言えないほどの成果を残しました。なので誰も文句は言えない。
経費計算に追われ、胃潰瘍や白髪になるほど怒り狂った経理課をたしなめながら、長官はロッツ氏に「シャンペン・スパイ」というあだ名を与え、「おまえはシャンペンの風呂に入っているのかと訊いたりした」そうです(『スパイのためのハンドブック』ウォルフガング・ロッツ、朝河伸英訳、ハヤカワ文庫NF p.151)。

そんな型破りなスパイの回想記が『シャンペン・スパイ』。こんなの読みたいに決まってるじゃないですか……!

終わりに

長々書いている割に、肝心の本の内容に大して触れていないじゃないか!とつつかれそうですが、仕方ないです。持っていない本の内容にはそうやすやすと言及できません。

それでも、その本に対する熱意みたいなものが、少しでも伝われば良いなと思いながら書きました。本が手元にないからこそ、内容を自由に想像できるし、欲も膨らみ続けるわけです。ひょっとしたら将来的に本が手に入ったときより今の方が楽しいのでは? ……まさかね。

グダグダと書き散らしてしまいましたが、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

2冊目以降は気が向いたら書きます。

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