『GIGAスクール構想』に思うこと。

さてさて、前回の投稿からまた時間が空いてしまいましたが、ここらで本業(IT業界)に関連した話題でも。

タイトルの『GIGAスクール構想』ってご存じでしょうか?

「GIGAスクール構想? 何それおいしいの?」と言う方はいないと思いたい・・・ですが、詳しくは文部科学省のサイトに紹介されているので、まずはこの話を読む前にご一読を。

「ICT(情報通信技術)を活用し、全国の小中学生ひとりに1台ずつ情報端末(PC、タブレット等)を与えて、学習の機会を増やしていこう」って言うのがだいたいのところです。

情報端末については令和2年度(2021年3月末まで)に使用実績がないと補助金が出ないことから、ITベンダーへ自治体から「端末納品はよせいや」と矢のような催促が来るわけで、対応している各社はそのオーダーに応えるべく駆けずり回っています。

自分の勤務先も多分に漏れず、このGIGAスクール対応に追われているおかげで時間外勤務をモリモリと稼がせてもらっています(苦笑)

このGIGAスクールに関連して全国的にiPadが超品薄状態になったりとかしていますが、現場で一番困っているのが運用保守の対応。

一部の学校では『検証』として先行して端末が配られているのですが、引き渡し直後からユーザー(児童や生徒)の保護者からあれこれと問い合わせがくるわけです。

例えばですが…

「(自宅の)Wi-fiのつなぎ方がわからないから、設定しに来て」

「液晶に貼られている保護シートをはがれたので新品を(無料で)送れ」

「画面ロックのパスワードを忘れたので(端末を)交換して」

「ACアダプターを間違えて洗濯したので新品を(無料で)送って」

「何だかわからないけど電源が付かない、故障じゃないのか?」

しまいには

「こっちは金払ってるんだからとっとと対応しろ!!」

こんな問い合わせ(クレーム?)が現場のICT支援員やGIGAスクールサポーター、果ては納入ベンダーにまで飛んでくるのが現状です。


まずは、最後のクレームについて言及させてください。

一般的な話になりますが、各学校に配られる端末は自治体が捻出した予算と国の補助金で購入(或いはリース)している『自治体の資産』であり、それを『児童や生徒に貸与』しているものです。よって、児童や生徒さんのご家庭からはお金は頂いていません。

購入やレンタルの代金は国や自治体の予算(原資は税金)と考えれば、そう言いたくなるのも理解できますが、少なくとも購入者は自治体及び教育委員会であって、各家庭に余計な出費を強いることは無いんです。

モバイル通信機能を持つ端末(SIM内蔵のタブレット等)については一部の通信費を各家庭に負担してもらうケースも自治体によっては検討しているようですが、全額請求はまず無いと言うのが実態です。


そして端末の保守についてですが、本来であれば契約を結ぶ際に保守体制やフローを厳密に決めます・・・が、自治体や官公庁関連の悪しき慣習で「要件の変更や追加」を平気でぶっこんで来るんですよね(苦笑)

自治体や官庁関連のシステムに携わってかれこれ10年近くなりますが、この部分はどこに行っても同じだし、修正される気配すらないのは非常に残念なことです。

GIGAスクールで導入される端末の保守に話を戻します。

基本的に端末や操作に問題があった場合は、以下のフローで問い合わせを行います。

【児童や生徒、或いはその保護者】

   ↓ 状態の報告

【担任の教員】

   ↓ 一次切り分け依頼

【ICT支援員 or GIGAスクールサポーター】

   ↓ 対応できない場合、保守対応を依頼

【学校の副校長または教頭】

   ↓ 保守対応依頼

【教育委員会】

   ↓ 保守対応依頼

【保守ベンダー】


学校で先生から児童・生徒へ端末を渡すときに『利用規約』や『簡易マニュアル』を契約上渡すことになっていて、簡易マニュアルには「困ったことがあったら、まず学校の先生に相談してください」って書いてあるはずなんですが・・・先生への相談を飛ばしてヘルプデスクに電話をかけてくる保護者の多いこと多い事・・・。

百歩譲ってユーザーの保護者からなら仕方ないと思うのですが、何故か学校の先生やGIGAスクールサポーターからも問い合わせの電話がくる事態が発生しまして、確認したところ「教育委員会から『この番号に問い合わせれば対応してくれる』と聞いた」なんて事が判明し、私の所属会社から教育委員会へルールの遵守(クレーム)を申し入れるなんてこともありました。

本来の保守フローに従うのであれば、問い合わせについては各学校の先生を窓口にして、教育委員会に報告の上で各種ベンダー問い合わせを行うのがルールになっていますが、現場の先生方も端末操作の習熟ができていないうちにデジタル教材の使い方などを覚えなきゃならないですし、教育委員会の方々も「国や自治体に言われてやってるだけ」なので、基本は「カネは出すからあとはヨロシク!」と丸投げ・・・ひどいもんでしょ?

しかも保守メニューについては当初の入札要件に含んでいないケースが多く、「要件に含んでいない=見積もしていない」と言うことは、予算そのものが確保されておらず、ベンダーが無償(或いは持ち出し)でやらされることが多いので「そこまでの金払ってないやんけ!」とツッコミ入れてます。

実際に私がかかわっている案件でも、いくつか「保守費用ゼロ見積」案件があり、とくに大きな自治体ほど保守予算をケチって無理やりベンダーに押し付ける傾向ですねぇ・・・。


これ以上細かく書くと漏れなく身バレするので、今回はここまで(苦笑)。

少しでも国策である『GIGAスクール構想』の裏側を知って頂けたなら幸いです。





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