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Daphne

「ダフネ Daphne」は1938年にジャンゴ・ラインハルト Django Reinhardtが作曲したジャズ・ナンバー。いわゆるガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム I Got Rhythm」のコード進行を使用した「リズム・チェンジ」の曲。日本語だと「ダフネー」と伸ばされることもある。私は伸ばした方が好みではある。ちなみに英語では「ダァフニー」と発音される。

エロースに撃たれたアポローンとダフネー

タイトルのダフネーとは、ギリシャ神話に登場する精霊の名前から取られている。同時にダプネーはギリシア語で、月桂樹を意味する。

恋愛を司る神であるエロースは、弓の達人だった。彼には黄金の矢と鉛の矢の2つの矢があった。黄金の矢は打たれた人に激しい愛情を抱かせ、鉛の矢は恋を嫌悪を抱かせる。ある日、エロースが人や神を矢で撃って遊んでいると、ゼウスの息子、オリュンポス十二神の一柱のアポローンは、その遊びを馬鹿にする。これに起こったエロースはアポローンに黄金の矢を、たまたまアポローンの近くにいたダフネーに鉛の矢を放つ。するとアポローンはダフネーを激しく求愛するようになるが、ダフネーはこれを嫌悪する。ダフネーは逃亡するのだが、アポローンに捕まる直前に自身を月桂樹に変える。これを悲しんだアポローンは自身の愛の証として月桂樹から月桂冠を作り、永遠に身につけることにした。

録音

Duo de Violons (Paris, September 29, 1937)
Eddie South (Violin); Stéphane Grappelli (Violin); Django Reinhardt (Guitar); Roger Chaput (Guitar); Wilson Myers (Bass)
エディ・サウスとグラッペリの録音。サウス、グラッペリ、ジャンゴの3人のリードがどれも素晴らしい。

Quintette du Hot Club de France (London, January 31, 1938)
Stéphane Grappelli (Violin); Djanqo Reinhardt (Guitar); Roger Chaput (Guitar); Eugène Vées (Guitar); Louis Vola (Bass)
QHCFの録音。テーマはグラッペリが弾いている。ジャンゴのソロはわかりやすく聴きやすい。一番素直に聴ける録音。

Gus Viseur's Music (Paris, September 28, 1938)
Gus Viseur (Accordion); Pierre "Baro" Ferret (Guitar); Jean "Matlo" Ferret (Guitar); Rene "Challun (Guitar); Challain" Ferret (Guitar); Maurice Speilleux (Bass)
ミュゼット・スウィングの王様、ギュズ・ヴィズールの録音。フェレ兄弟のギターはもちろんなんだけど、はやりヴィズールのアコーディオンがかっこいい。

Gus Viseur (Paris, January 12 1940)
Gus Viseur (Accordion); Django Reinhardt (Guitar); Emmanuel Soudieux (Bass)
ギュズ・ヴィズールの録音にジャンゴが参加した録音。やはりジャンゴは別格だと思わせる録音であると同時にヴィズールのアコーディオンのかっこよさと自由さを再確認できる。

Sarane Ferret Et Le Quintette De Paris Avec Georges Effrosse (Paris, January, 27, 1942)
Sarane Ferret (Guitar); Georges Effrosse (Violin); Matelo Ferret or Jean Maille (Guitar); Maurice Speilleux (Bass)
フェレ兄弟の一人、サラン・フェレの録音。ナチスによるユダヤ人強制収容によって命を落とすジョルジュ・エフロスが参加している。素晴らしい録音。

Django Reinhardt and Stéphane Grappelli (Rome, January-Febrary 1949)
Django Reinhardt (Guitar); Stéphane Grappelli (Violin); Gianni Safred (Piano); Marco Pecori (Bass); Aurelio de Carolis (Drums)
ローマ・セッションから。ここではグラッペリが冒頭から非常に美しいヴァイオリンを披露している。ジャンゴのソロは別格。

Stephane Grappelli (Paris, March 7, 1962)
Stéphane Grappelli (Violin); Pierre Cavalli (Electric Guitar); Léo Petit (Rhythm Guitar); Guy Pedersen (Bass); Daniel Humair (Drums);
60年代のグラッペリの録音。イントロから美しくテーマは非常に歯切れがいい。ヴァイオリンのソロは細かいフレーズもどれもが美しい。

Gary Burton & Stephane Grappelli (Paris, November 4, 1969)
Stéphane Grappelli (Violin); Gary Burton (Vibraphone); Steve Swallow (Electric Bass); Bill Goodwin (Drums)
ギャリー・バートンとグラッペリの録音。ドラムとベースがモダン・ジャズっぽい。そいやゲイリー・バートンって書かれるけど発音的にはギャリーの方が近い。

Stephane Grappelli (NYC, October 9, 1995)
Stéphane Grappelli (Violin); Bucky Pizzarelli (Guitar); Jon Burr (Bass)
グラッペリの晩年のライブ実況録音。フラジオのテーマが非常に美しい。バッキー・ピザレリとジョン・バーも素晴らしくまさに名演。

Pearl Django (Edgewood, WA, Released in 1999)
Dudley Hill (Guitar); Neil Andersson (Guitar); Paul Mehling (Guitar); Michael Gray (Violin); David "Pope" Firman (Bass);
ダドリー・ヒル率いるパール・ジャンゴの録音。

Latcho Drom (France, 2001)
Florin Niculescu (Violin); Christophe Lartilleux (Guitar); Doudou Cuillerier (Rhythm Guitar); Joël Trolonge (Bass)
ラッチョ・ドロームの録音。フランスのツアーでの録音。ルバートからはじまり曲になった瞬間のカタルシスがすごい。フローリン・ニクレスクがとにかく弾きまくる。

Biréli Lagréne (Paris, 14, 15, 16 & 21, May, 2001)
Richard Galliano (Accordion); Biréli Lagrène (Guitar); Holzmano Lagrène (Guitar); Hono Winterstein (Guitar); Diego Imbert (Bass);
ビレル・ラグレーンの録音。パワフルな録音でここではリチャード・ガリアーノが参加している。

Aurore Quartet (Paris, November 16 & 17, 2006)
Aurore Voilqué (Violin, Vocal); Siegfried Mandacé (Guitar); Darko Andelkovic (Guitar); Pierre Frasque (Bass)
オロール・ヴォイルケが率いるオロール・カルテットの録音。ベースのソロから入る珍しい録音。またこのソロがかっこよい。その後に続くヴォイルケのヴァイオリンのソロも素敵。

Patrick Saussois & Daniel John Martin (London 2008)
Daniel John Martin (Violin, Vocals); Patrick Saussois (Guitar); Ducato Piotrowsky (Guitar); Andy Crowdy (Double Bass)
パトリック・ソソワとダニエル・ジョン・マーティンのダブル・リーダー録音。テーマのところで休符が入るパターンのイントロ。軽々と弾いている感じもかっこいい。ダニエル・ジョン・マーティンがダイナミクスのある演奏が非常にかっこいい。

Damir Kukuruzović Gypsy Jazz Quintet (Sisak July 26 2008)
Damir Kukuruzović (Guitar); Bruno Urlić (Violin); Goran Grgurač (Guitar); Saša Borovec (Contrabass);
惜しくもCOVID-19によって命を落としたクロアチアのマヌーシュ・ジャズ・ギタリストのダミール・ククルゾヴィッチの録音。ブルージーなギターがかっこよく、またブルーノ・ウルリッチのヴァイオリンも素敵。

Lollo Meier (London, January 17, 2010)
Lollo Meier (Guitar); Ritary Gaguenetti (Guitar); Feigeli Prisor (Guitar); Wattie Rosenberg (Violin); Sani van Mullem (Bass)
いまはなきキューカンバーでのマヌーシュ・ジャズ・ギターのライブの実況版。ロロ・メイアーのギターが炸裂する名演。

Gonzalo Bergara (NOT GIVEN, Released in 2016)
Gonzalo Bergara (Guitar); Florin Niculescu (Violin); Others Unkown
ジャンゴ・フェスティバルのコンピに収録された録音。フローリン・ニクレスクのヴァイオリンもゴンサロ・ベルガラのギターもキレキレ。

参考文献

https://djangoinjune.com/get-ready-2020/daphne/


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