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Alabama Jubilee

「アラバマ・ジュビリー Alabama Jubilee」は、1915年、ジョージ・コブ(George L. Cobb)作曲、ジャック・イェレン (Jack Yellen)作曲のアメリカン・ポピュラー・スタンダード。 1915年にステージ歌手のエリザベス・マレー(Elizabeth Murray)が表紙のスコアが大ヒットし1万枚以上売れた(Jasen, 2003)。ジャズだけではなく、ブルーグラスやウェスタン・スイングでも演奏される。

アラバマの祝祭歌

歌詞においては、タイトルが指し示す通りアラバマが描かれている。他方で、イェレンはアラバマに関わりのない人だ。だから、ここで描かれているアラバマは、都会ニューヨークから見た不思議な場所〈アラバマ〉となっている。実際に歌詞は「マンドリンとバイオリンが鳴っている!音楽でいっぱいだ!ああ、あの時過ごしたアラバマの夜を思い出す。アラバマに行ったらジョーンズ助祭に会ってみな。ブラウン牧師は骨をカタカタならしてピエロみたいにふざけてる。ジェミマ婆も叫んでる!片足ジョーは松葉杖に踊ってるぞ!ギャングもいっぱい!アラバマの祝祭!」という不思議な内容。メロディもおどろおどろしい。『トイ・ストーリー4』のテントで流れているようなそんな感じ。

録音

Hank Penny (Los Angeles March 1950)
Hank Penny (Vocal); Billy Hill or Billy Wright (Fiddle); Mildred Springer (Bass); Warren Penniman (Drum); Stan Ellison (Accordion); Benny Garcia (Guitar); Noel Cooley (Steel Guitar)
ハンク・ペニーはウェスタン・スイングでこの曲を聴かせてくれる。ブロードキャストのトランスクリプションでとても音がいい。歌も演奏もかなりスイングしている。

Doc Watson (Nashville, TN 1968)
Doc Watson (Guitar); Don Stover (Banjo); Floyd Cramer (Piano); Junior Huskey (Bass); Harold B. "Shot" Jackson (Dobro); Buddy Spicher (Fiddle); Tommy Jackson (Fiddle); Merle Watson (Guitar)
天才、ドク・ワトソンの録音。ドク・ワトソンのギターがとてもスイングしており、隙のないアレンジが素晴らしい。多くの楽器が参加しており、祝祭感のある録音になっている。

Muggsy Spanier And His Dixieland Band (August 10 1950)
Truck Parham (Bass); Darnell Howard (Clarinet); Muggsy Spanier (Cornet); Don Chester (Drums); Floyd Bean (Piano); Harry Graves (Trombone)
マグシー・スパニアはシカゴ・スタイルで録音している。おそらくこの時期のニューヨークやシカゴのジャズ・シーンはジャズ史的にはモダン・ジャズだけが演奏されていたみたいな書き方になるんだろうけど、決してそんなことはなくて、そもそも40年代にニューオーリンズ・リヴァイヴァルが起きたし、シカゴ・スタイルやスモール・グループの録音はそもそも20年代からずっと行われていた。革新的な音楽的変化が起こらない、あるいは見出すことができないくらい小さいという意味で無視されるのだろうと思う。

R. Crumb & His Cheap Suit Serenaders (San Francisco 1976)
Allan Dodge (Mandolin); Robert Crumb (Vocals, Banjo); Terry Zwigoff (Cello); Robert E Armstrong (Guitar, Vocal); Tom Marion (Guitar)
ジャグ・バンドのチープ・スート・セレネイダーズもこの曲を録音している。ロバート・カラムもまた60年代のサイケデリック体験からこうしたフォーク・リヴァイヴァル/ジャグ・バンド・リヴァイヴァルに行き着いた人で、こうした曲とジャグ・バンド・リヴァイヴァルの相性は非常にいい。

Leon Redbone (NYC 1978)
Leon Redbone (Vocal, Acoustic Guitar); Kermit Moore (Cello); Tom Evans (Fiddle); Ken Whitely (Mandolin); George Marge (Ocarina); Dennis Drurey (Trombone); Jonathan Dorn (Tuba);  Selwart Clarke (Viola); Julien Barber (Violin); Kathryn Kienke (Violin); Regis Iandiorio (Violin)
レオン・レッドボーンの録音は、かなり20年代のポピュラー・ソングの録音を意識している。こうした録音はフォーク・リヴァイヴァルの文脈を経て、日本ではアコースティック・スイングの文脈でも高い評価を得たという。

Five Mile Mountain Road (Virginia 2018)
Billy Hurt, Jr. (fiddle); Brennen Ernst (guitar); Seth Boyd (banjo); Caleb Erickson (guitar); J.C. Radford (bass)
ヴァージニアで活動中のスウィンギン・オールドタイム・バンド。ブルーグラスのスタイルで演奏している。インスト。近年のストリングス・バンドでもたびたび演奏されていてほかにもBlue PassやThe Whiskey Spittersといったバンドが録音している。

Red Skunk Jipzee Swing Band (San Diego, California, 2014)
Molly Reeves (Guitar); Samuel Boorman (Vocal); Jamie Mather (Bass), Ken Davis (Drums), Justin Au (Trumpet); Pamela Sheffler (Violin)
レッド・スカンクも録音をしている。こちらはパンキッシュなジャズを展開している。モーリー・リーヴスはギターのみで参加。

参考文献

Jasen, A, David. (2003). Tin Pan Alley: An Encyclopaedia of the Golden Age of American Song. London: Routledge.

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