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O'Neil Spencer(オニール・スペンサー)というドラマー

好きになる音源のパーソネルを見ていると特定のミュージシャンが毎回参加している。ある程度の音楽ファンはそういった経験をした事があるだろう。最近はオニール・スペンサー(O'neil Spencer)というスイング時代の、つまりバップとかそういうややこしいジャズが流行る前の時代のドラマーにハマっている。そんな彼が参加した録音をとにかく時系列順に集めたプレイリストを作ったので公開したい。

オニール・スペンサーは、もしかしたらシド・カトレット、ベイビー・ドッズ、ジョー・ジョーンズ、コージー・コールのような派手なプレイヤーではないし、そこまで有名なプレイヤーでもないのかもしれない。ドラムのことはよくわからないから、具体的に音楽的な素晴らしさを述べることができないのが悔しい。しかし、私の耳にはヒップホップやブレイクビーツに通じるようなハットの刻みや音そのものがたまらなく好きなのだ。歌心のあるビートもそうなんだけど、オニール・スペンサーは歌も歌う。それがまたたまらなく気持ちいいのだ。別にうまいわけじゃない。ずーっと聞いていたくなる。そんな演奏だ。

オニール・スペンサーという男

一応プロフィールみたいなものを書いておきたい。

オニール・スペンサー(1909年11月25日 – 1944年6月24日)は1909年にオハイオ州シーダービルで生まれた。ニューヨークのバファローのローカル・バンドでキャリアをスタートさせたあと、アル・シアーズ(Al Sears, Sax)のバンドで演奏をする(1931年)。ウィリー・リンチ(Willie Lynch)の後任として、1931年から1936年までミルズ・ブルー・リズム・バンド(Mills Blue Rhythm Band)に加わる。オニール・スペンサーがとくに有名になったのは、1937年にジョン・カービー・セクステット (John Kirby)に参加した後だったのだろう。シド・カトレットの門下として引っ張りだこになり、ヘンリー・レッド・アレン(Henry "Red" Allen)、シドニー・ベシェ (Sidney Bechet)、ジミー・ヌーン (Jimmie Noone)、ジョニー・ドッズ (Johnnie Dodds)、フランキー・ニュートン (Fankie Newton)、ミルト・ハース (Milt Herth)、リル・アームストロング (Lil Armstrong)、ウィリー・ザ・ライオン・スミス (Willie "the lion" Smith)など、数々の録音に参加。1941年にルイ・アームストロングのバンドに参加するためにカービィのバンド一時的に去る(翌年復帰)。しかし、1944年に結核に罹患し35歳で逝去。私が確認できた最初の録音が1932年2月25日なので、実働録音年数12年である。それでもやはりルイ・アームストロングから声がかかるぐらいには素晴らしいドラマーだ。しかもシド・カトレットの後任である。

オニール・スペンサーのプレイリスト

さて、とにかくオニール・スペンサーにどっぷりハマったので彼が参加している録音をできるだけ集めたプレイリストを作ってみた。Spotify上にもそういったものがなかったし、なにより自分が楽しむためにそういったものが欲しかったのだ。

とにかく時系列順に録音を集めていく。その際に参考にしたのは以下の通り。

ただし先ほども書いたようにほかのレジェンドたちと比べると少し情報が足りない。そのためもちろん取りこぼした録音もあるかもしれないので、それにかんしては適宜修正をしていきたい。また、Spotify上にある録音だけという縛りがあるので、Spotifyにないものはリストに入れていない。
*この録音もしてるよ!とかあればコメントとかください。リストに入れます!

どれを聴いてもタイム感が素敵なドラムである。とくに好きなのは1930年代後半のビリー・カイルが参加している録音と1938年のジョニー・ドッズとの録音、それとボブ・ハワードとの録音も非常に好き。それとシドニー・ベシェの録音ですな。一応気に入ったものだけでもパーソネルを書いておこう。

Johnny Dodds & His Chicago Boys - 1938年1月21日NY
Charlie Shavers (tp), Johnny Dodds (cl), Lil Armstrong (pf), Teddy Bunn (gt), John Kirby (bs), O’Neil Spencer (dr/vo/wbd)
-Wild Man Blues
-Melancholy
-29th And Dearborn
-Blues Galore
-Stack O’Lee Blues
-Shake Your Can

テディ・バンが参加している録音の一つ。38年はスペンサーの豊作の年で、ものすごくたくさんいい録音がある。このジョニー・ドッズのバンドの録音は選曲、演奏ともにもっとも好きな部類の一つ。Melancholyがお気に入り。

Milt Herth Trio - 1938年3月17日NY
Milt Hearth (org), Willie "the lion" Smith (pf), O'Neil Spencer (dr/vo)
- Sissy
- Pop Corn Man

最初期のオルガントリオの録音の一つ。ウィリー・スミスはガンガン攻めまくる感じではなくあくまで寄り添ったような演奏をしている。それでもソロはかっこいい。どっちの録音もスペンサーが歌ってドラムを叩いている。この録音のドラムも非常に気持ちがいい。ほかの録音もあるんだけど、それも非常にかっこいい。

The Spencer Trio - 1938年5月15日NY
O'Neil Spencer (dr/vo), Billy Kyle (pf), Buster Bailey (cl)
- John Henry
- Lorna Doone Shortbread
- Afternoon In Africa
- Baby Won't You Please Come Home

30年代のコンボのよさがつまったような楽しい録音。バスター・ベイリーが気持ちよさそう。それとLornaのドラムソロもかっこいい。Baby don't youとかテンション高いしすこ。

Noble Sissle Swingsters - 1938年2月10日NY
Clarence Brereton (tp), Sidney Bechet (sop/clt), Gil White (clt/ten), Harry Brooks (pf), Jimmy Miller (gt), Jimmy Jones (bs), O'Neil Spencer (dr/vo).
- Viper Mad
- Blackstick
- When The Sun Sets Down South (Southern Sunset)
- Sweet Patootie

これはもうあれですよ。Viper Madがとくにお気に入り。スペンサーの声がとにかくかっこいいジャイヴ・ナンバー。それとWhen the sunはやっぱ素晴らしいです。べシェの録音のなかでもすごく好きな一曲。

Jack Sneed And His Sneezers - 1938年9月9日NY
Billy Kyle (pf), Jack Sneed (vo), John Kirby (Bs), O'Neil Spencer (dr/vo), Charlie Shavers (tp), ギター不明
– The Numbers Man
– Sly Mangoose
– West Indian Blues
– Big Joe Louis

この録音はすごい。Number Manはもっとも早い時期のラップの一つかもしれない。つまりメロディではなくリズムに合わせた語りが行われている。歌っているのはジャック・ニード。Slyは和音とリズムという意味でジャマイカ味がつよく現れた一曲だと思う。それとギターが誰なのか調べてもわからなかった。めっちゃ気持ちのいいギター…。誰だろう。

おわりに

改めてこれを聴きながら書いている。やっぱりいいなあ。オニール・スペンサーが好きでることもそうなんだけど、彼が参加している録音は質がよいと思う。こんな言葉でまとめていいのかわからないけど、とにかくグルーヴィーに思う。いろいろな録音やミュージシャンを知るいいきっかけになった。
オニール・スペンサー。超有名ではないかもしれないけれど、大好きなドラマーである。


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