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再生可能エネルギー事業と人権〜ベンチマークで明らかとなった高リスク〜

[ベンチマーク・ランキング] #気候変動 #再エネ事業 #人権ベンチマーク #ジャスト・トランジション  

先月、ビジネスと人権リソースセンターが初めてとなる再生可能エネルギー事業に関する人権ベンチマークを公表しました。

“Climate change is among the most important and complex issues our planet and its people have faced in centuries, and the COVID-19 pandemic has only reinforced the urgency and necessity of building global economic systems that are both equitable and sustainable. The deployment and expansion of renewable energy technologies will play an integral role in reducing our collective carbon footprint, but can come at a cost for workers and communities if companies do not ensure respect for human rights in their operations and through their supply chains. The ambitious and necessary goal of achieving carbon neutrality by 2050 requires equally robust steps to ensure this transition is truly just.”

「気候変動は、私たちの地球とその人々が何世紀にもわたって直面してきた最も重要かつ複雑な問題の一つであり、COVID-19 の大流行は、公平で持続可能な世界経済システムを構築することの緊急性と必要性を強化したに過ぎません。
再生可能エネルギー技術の導入と拡大は、私たちの集団的な二酸化炭素排出量の削減に不可欠な役割を果たすことになりますが、企業が事業活動やサプライチェーンを通じて人権の尊重を保障しなければ、労働者や地域社会にとっては代償を伴うことになります。2050年までにカーボンニュートラルを達成するという野心的で必要な目標には、この移行が真に公正なものであることを保証するために、同様に強固なステップが必要です。」

今回のスコアリングの対象となった16社のうち、ビジネスと人権に関する指導原則が求める人権尊重責任を完全に満たしているところはなく、約半数の7社が10%以下、約4分の3が40%以下、平均は22%でした。

2010年以降、ビジネスと人権リソースセンターは、再エネ事業に関し、197の人権侵害のケースを認知し、127の企業に対してその対応を求めてきました。これらの人権侵害は、殺害、脅迫、土地の収奪、危険な労働環境及び安価な賃金、そして先住民の人権侵害といったものです。

だからこそ、今回のベンチマークでは、例えば、先住民や影響を受けるコミュニティの権利、土地の権利、安全面・高リスクに関する権利、人権・環境保護活動者の権利といったとりわけ再エネ事業に伴って生じやすい人権リスクに対する企業の対応を評価しています。

日本でも、ようやく石炭火力発電事業の見直しが進みつつありますが、その代替となるエネルギー事業自体が人権へ負の影響を与える可能性も十分に認識する必要があります。

このような人権・社会への負の影響を予防した上での政策・事業転換は、”Just Transition”(公正な移行)と言われます。ここでの「公正」は「衡平」という、構造的な格差・差別の是正も含むものと考えられるでしょう。

日本ではまだ馴染みの薄い「先住民の権利」について数回にわたってご紹介します。再エネ事業分野で特に問題になるこの人権について、ぜひ一緒に考えてみませんか。

Social Connection for Human Rights/佐藤暁子

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