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SDGsと「ビジネスと人権」〜SDGsの本質は人権であること〜

[基本情報] #SDGs #CSR #企業の社会的責任 #サプライチェーン

SDGsの目指す世界

2015年に採択されたSDGs「持続可能な開発目標2030アジェンダ」。カラフルなロゴを日常生活で見かけることも多いのではないでしょうか。企業も事業活動とSDGsへの関連性について、統合報告書、サステナビリティ報告書などで示すことも増えてきました。

しかし、SDGsバッジをつける人が増えている中でも、「SDGsの各ゴールは『人権』を示すもの」という認識はまだ広がっていないように感じます。

「我々は、人権、人の尊厳、法の支配、正義、平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界を思い描く。人種、民族及び文化的多様性に対して尊重がなされる世界。人間の潜在力を完全に実現し、繁栄を共有することに資することができる平等な機会が与えられる世界。子供たちに投資し、すべての子供が暴力及び搾取から解放される世界。すべての女性と女児が完全なジェンダー平等を享受し、その能力 強化を阻む法的、社会的、経済的な障害が取り除かれる世界。そして、最も脆弱な人々の ニーズが満たされる、公正で、衡平で、寛容で、開かれており、社会的に包摂的な世界。」
「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」外務省仮訳

2030アジェンダの「目指すべき世界像」です。SDGsの各ゴールはこういった世界を目指すための指針であり、「人権」は真っ先に言及されています。

SDGsの各ゴールと人権

ゴールやターゲットにたとえ明示的に「〜の権利」と言及されていないとしても、実は、各ゴールの内容は様々な人権そのものです。(下記、「SDGsと人権」ヒューライツ大阪参照)

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例えばゴール5「ジェンダー平等」は、女性に対する差別・暴力の撤廃やジェンダー差別のない労働条件の保障など、「女性差別撤廃禁止条約」や「社会権規約」の実現を目指すものです。

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ゴール8「働きがいも経済成長も」は、働く人たちの健康やディーセントワーク、強制労働、児童労働、人身取引の撲滅など、「世界人権宣言」、「自由権規約」「社会権規約」や「ILO中核的労働基準」が定める人権の保障です。

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暴力の削減、法の支配や正義の促進、賄賂・汚職の減少などを目指すゴール16「平和と公正をすべての人に」は、人の生命、自由や身体の安全といった重要な権利の保障、人権侵害に対して救済を求める権利の保障など、やはり「世界人権宣言」「自由権規約」「社会権規約」といった重要な国際人権条約の内容の実現を求めるものです。

企業に期待される役割

では、SDGsの達成に向けて企業に期待される役割はなんでしょう?

本文では、「民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である」とした上で、次のように述べています。

「我々は、こうした民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める。「ビジネスと人権に関する指導原則」と「国際労働機関の労働基準」、「児童の権利条約」及び主要な多国間環境関連協定等の締約国において、これらの取り決めに従い労働者の権利や環境、保健基準を遵守しつつ、ダイナミックかつ十分に機能する民間セクタ ーの活動を促進する。」(パラグラフ56)

SDGsへの貢献を目指す上で、まず守るべきものとして「ビジネスと人権に関する指導原則」が挙げられています。

たとえSDGsの各ゴールへの貢献を事業活動に紐づけてマッピングしたとしても、そもそもその事業活動自体による人権へのマイナスの影響に対応していないことには、SDGsへの真の貢献とはならないということです。

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例えば、環境負荷の低い製品やサービスを提供したとしても、その原材料調達や製造プロセスで、先住民の権利侵害、長時間・低賃金の過酷な労働や児童労働、セクハラ・パワハラなどが発生している場合は、ゴール7を目指しているはずが、ゴール5、8、16に対するマイナスのインパクトを与えてしまうことになります。

逆に、こういった原材料調達や製造プロセスでの人権侵害に対応することだけでも、SDGsに対する大きな貢献となるのです。

今一度、SDGsと人権の関係性を意識し、自社のSDGsへの取組みの大前提として「ビジネスと人権」を位置づけることが重要です。

Social Connection for Human Rights/佐藤暁子

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