見出し画像

ハッシャダイ×スクール・トゥ・ワーク公開イベント第1弾 「高卒人材の就職に関する有識者トークセッション」⑥

※ 本稿は、一般社団法人スクール・トゥ・ワークの2020年10月21日付ブログ記事「ハッシャダイ×スクール・トゥ・ワーク公開イベント第1弾 『高卒人材の就職に関する有識者トークセッション』(その6)」の転載です。

2019年4月24日に開催された株式会社ハッシャダイと当団体のコラボイベント「高卒人材の就職に関する有識者トークセッション」の様子をレポートとしてまとめました。

今回のイベントでは、官公庁、学校の現場、ビジネスや非営利セクター等、各界の若手キーパーソンによるパネルディスカッションを通じ、もはや避けては通れない日本社会の大きな課題である「高卒就職」について議論を深めました。「高卒就職」について、公開の場で多面的に議論される機会は極めて稀。来られなかった方にもイベントレポートとしてシェアさせていただきます。なお、発言者名については敬称を省略して表記しております。

前回 ハッシャダイ×スクール・トゥ・ワーク公開イベント第1弾「高卒人材の就職に関する有識者トークセッション」(その5)

画像1

勝山:
僕がずっと言っているのは、「第3の選択肢」を作っていきたいということなんです。今って、18歳での進路選択は就職か進学の2択しかないじゃないですか。日本の若者は一回就職してから大学に入り、もう一度学び直すみたいなことってやらないじゃないですか。2%ぐらいしかそういったことをやっていないと言われていて、世界的に見てもかなり低い数字と言われています。そういった中で、18歳での学力みたいなものっていうのが、大学進学に影響するというのはおかしいと思うんですよね。

僕自身もそうなんですけど、今になって大学に通いたいなと思っています。新しく学び直したいなという思いがすごく強いです。この間ですが、ヤンキーインターンの生徒でも就職ではなく慶應義塾大学に受かった子がいるんですよ。高校を卒業して一回働いてみて、そこで何かまた学んでみたいなと思ったら大学へ進学して、大学でスキルを身に付けて、違うキャリアというのがあり得るというのも全然アリだと思います。日本でもそのような慣習が出来上がっていったら、若者たちの中で、もっと学ぶことに対する楽しさや学ぶことに対しての意欲が増えるんじゃないかなと思っています。

今日も「ヤンキー母校へ帰る」の舞台になった高校へ行ってきて、めっちゃヤンキーな子が一杯いたんです。その子たちに伝えたのは、日本の若者たちって世界的に見ても自己肯定感がめちゃめちゃ低いと言われていて、日本の若者は現状の満足度よりも未来に対しての期待度の方が低いというデータが出ているんですよね。

これは世界的に見ても日本の若者だけと言われていて、もっと未来に対してワクワクしようぜという話をしてきました。皆は何でそんなに未来に対して希望を持っていないのかと問うと、大体が受験のために勉強しているとか、外的要因で学校に通っているという子がかなり多いなと思っていて、もっと自分がやりたいこととか、自分が格好いいと思うものに対して、どんどん一歩踏み出して行動しようと言いました。じゃあその時に、こういった学びが必要なんだとか、こういったことを勉強しなあかんってなった時に、真剣に学ぶと思うんですよ。

いつでも学び直せるようなリカレント教育とかが今騒がれているんであれば、若者たちがいつでも学び直せるような環境というのを作っていくのが一番重要じゃないかなと思います。

古屋:
今のお話を聞いて「平均的日本人像」という言葉が浮かびました。各国と比べて見てみるとどういう「像」かと言うと、仕事のエンゲージメント・レベルが一番高い人間を指すレベル5って、日本人の中には3%しかいないんです。アメリカでは30%います。アメリカでは仕事に燃えている人が30%いるんだけど、日本人は3%しかいない。世界の中でぶっちぎりで低いんですよ。だから日本も、仕事に熱意を燃やしている人はほとんどいないんです。超レアキャラなんですよ。

一方で、ファクトとしてもう一つ、日本人の能力の高さなんですよね。これは、5年ぐらい前に、OECDがPIAACって言う調査を社会人向けに実はやっているんですよ、日本ってOECD加盟国の中でぶっちぎりで全科目1位なんですよね。20歳から65歳までの成人男女にテストさせているんですけれど、日本人は平均点が全教科1位なんですよ。僕がそれを見て思ったのは、要するに日本人って、「やる気はないけれど能力はある」。これたぶん最強ですよ。やる気ださせるだけで力を発揮するわけですから。実はポテンシャル民族なんですよね。日本というのはポテンシャルの高い人ばかり住んでいる島なんです。だけどやる気が無くて、満員電車とかで皆目が死んでいるみたいな。これはあまりにも悲しすぎませんか。そんな話をちょっと今思いました。

新井:
教員という目線で考えると、埼玉県だと浦和高校っていうところが凄いというふうによく言われるんですよね。何でだと思いますか?

参加者男性:
偏差値が高いから。

新井:
そういうことですね。東大輩出全国1位の公立高校です。じゃあ「何でそれが偉いんですか」というのを定時制高校で働いてる自分は感じています。東大行ったら幸せかと言うとそんなこともなくて。ただ幸せって何なのかなってことを考えなきゃいけないと思っています。

僕も一応、群馬県の一番手の県立高校に通って、MARCHの大学入って、文学部で歴史を勉強していたんですが、周りがみんな就活しなくて、部活の皆が就活していたからその流れで就活して、なんとなく大企業に入った方が良いのかなと思い、カッコイイから営業やりたいって感じで就職してみたけど、本当にやりたいことじゃないと思い辞めました。なので、本当にやりたいことを追いかけて、やりたいような環境にして行けたら良いのかな。それは、たぶん大人もそういうふうに向かっていかないといけないのかなと思います。

鈴木:
先ほど自己肯定感の話が出ましたね。国立教育政策研究所というところで調べたのですが、子供たちの、世の中や学業に対するモチベーションを何年かかけて調べているのですね。そうすると、とりあえずその自己肯定感というのは先進加盟国の中でも最低ランクだったりという状況があるんです。ただ、その中でも少し希望があるのは、そういう今の子たちほど、承認欲求と言われるような、認められたいとか褒められたいという欲求が高い。その中でも役に立ちたいという項目が相当高いんですよね。たぶんOECDの平均より上なのかなというぐらいの数字が出ているのを聞いたことがあります。

じゃあ世の中に出た時、その「役に立ちたい」という気持ちが搾取されていないかどうかというところだと思うんですね。役に立ちたいというのがイコール就職という時代なのもどうなのかなと思います。いろいろな価値観や選択肢がこれだけある世の中ですから、果たして就職だけなのかというところもあると思います。

逆に、世の中がそういう気持ちに応えられるような、新しい産業だったり就職形態というものだったりを用意してくれる社会があれば良いなというふうに思っています。

実は私は、ベンチャー支援をやっていたところがありまして、社会としても、様々な価値を受け止められるような職種を用意できれば良いのかなというふうに思っております。

ちょっと蛇足になるんですけれども、30年、40年近く初等中等教育に携わっている者から見ますと、今の子供たちというのは、相当良い子たちが育っていると思います。戦後生まれの昭和世代から言わせてもらうと、物足りないとか、活力が無いと言う方が結構多いんですが、ルールや道徳というのをきちんと理解できて、論理付けた思考を持てる子たちが育ってきている。これはもう、学校教育の賜物じゃないかなというふうに思っているんですね。

犯罪も少なくなっています。そういう意味では、教育全体で人は育てられたのだから、じゃあ社会に出た時、社会がそこで育てるということは、新しい変化を生み出せるんじゃないかなというふうに思っております。もう少し旧態依然とした受け入れというものをブレイクスルーすることができないかなと、学校サイドや教育サイドの人間からするとそれが希望かなと思っております。

米山:
新しい時代にということで、ポイントはやっぱり、多様性をどう受け入れるかみたいな話だと思うんですよね。何でこれがまず必要かというと、私も今担当している中に、働き方改革とかもあるわけですが、話としては結構似ているなと思っています。いろんな解釈がある世界ではあるんですが、働き方改革や労働時間、これ以上働かないようにしましょうというところでいろいろあります。

例えば、高度プロフェッショナル制度の導入です。本質的には、昔は、やっぱり働いている時間と成果がかなりリンクする世界だったので、真面目にやれば、もちろん良い人と悪い人がいても、生産性の差というのも1.5倍とか2倍ぐらいの差でした。しかし、どんどん世の中変わってきて、そのような職種だけじゃなく、いろんなクリエイティブな職種が増えてきて、サービス業を中心に、時間では生産性は測れませんとなった。同じ1時間働いて1を生み出す人と100を生み出す人がいます、みたいな世界が出てきています。それでもなお、時間というものをベースとした規制の部分というのがまだまだ残ってくると思うんです。そういうところなんかも、高卒就職の問題とリンクしていると思っています。この話のポイントは、要するにその能力の測り方というのが、昔は、その真面目さとかというのが、社会にとって結構重要な要素だったわけなんですよね。だけど今って、それ以外の部分も含めて、いろんな評価軸があります。活躍するポイントがあります。本当に評価軸はいろいろ出てきているというところを、どう受容していくかというのがかなり重要なことかなと思っています。

高卒の話で「一人一社制」みたいな話なんかもやや苦しいと思います。これもマッチングのパーセンテージがとても成功していることを前提にしています。やっぱり学校ごとの評価がベースになってきていて、じゃあ、学校では活躍していないけど外で活躍できる人を、どう評価していくかというところで、課題は出てくると思います。それを先生の努力で拾っているというのが現状だと思います。これをどう広めていくかとか、あるいは、どう支援していくかみたいな話は必ず出てくると思います。そういう意味での在り方というのは必ず考えていかなきゃいけないと思っています。

もう一つあるのが、受け入れる側の企業の話ですよね。企業の話で思うのが、「何で大卒と高卒に給料差があるんですか」とか、あるいは「採用要件で大卒以上だとかを設けるところがあるのか」と言うと、これはもうぶっちゃけて言うと、やっぱり企業側も自信が無いと思うんですよね。

つまり、「この人の能力はこれである」というのに自信が無くて、ある意味言い訳に使えるわけですよね。自分の経験から言うと、私も就職活動をしていて、ある大手銀行に内定をいただいたんですが、結局辞退したんです。その時に言われたのが3、4人しか採らないわけだけど、「君が辞退したらその枠一人減っちゃうよ」という。まさにそういう採用の仕方で、もうある意味言い訳ですよね。

そういうのが横行しているというか、実際かなり行われています。なぜかというと、面接でどこまで見極められているかというのは、定量化もできないですし、自信も持てていないというのが現状じゃないかと思います。

実際これは、人事の人からは、面接の時と入った後の活躍度は、特に定型的じゃないフリーな面接と、入った後の活躍度っていうのは相関がありませんと言われています。やっぱり就業体験とかの方がよほど相関性あります。やっぱりそういうのを進めていくというところも含めて、企業側もちゃんと評価するというか、それができれば高卒の方も関係無く活躍できるっていう幅で、正に多様性が広がっていくことに繋がると思います。

まさに今、HR Techとかって多少バズっているワードになっています。そういう採用支援のサービスが非常に出てきていますが、こういうのも含めて企業側を変えていくというのは我々としては非常に重要なミッションだと思っています。我々側のジレンマとしては、そういう人材の施策みたいなものに力を入れている企業と、株価の影響みたいなのは調査しようかなと思っています。いろんな採用とか任用とか評価とかも含めてですが、そういうことに力を入れている部分、なかなか会社の中だとあまり評価されない部門というか、所詮バックオフィスだみたいなところを、どうやって光を当てていくかみたいなことは、我々としても考えていきたいと思いますし、企業さんとしても変わっていただかなきゃいけないというとこなんじゃないでしょうか。



一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
 一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、学生及び早活人材(非大卒人材)に対するキャリア教育事業等を行っています。
 私たちは、キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?