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カンボジアの教員養成制度ってどうなってるの?

日本では、たとえば小学校の教師になるには大学の教育学部(もしくは同様の学部)を卒業し、教員免許を取得しなければなりません。免許を持っているから即教師になれるわけではなく、一般的には、公立の場合はその自治体の採用試験を、私立の場合はその学校の試験を受ける必要がありますよね(一部例外もあり)。では、カンボジアの場合は?

小中学校教員養成校制度

カンボジアには、悲しい歴史があることは有名ですが、教育へのダメージが絶大でした。1975年から79年のポルポト政権時代に、約4年間学校教育そのものが廃止され、教師の75%が抹殺されたと記録されています。政権崩壊後、教育が再開される際、教師がいない! というピンチにみまわれました。
仕方なく、文字が読める人を探して教師になってもらったそうです。

1998年に教員養成校の制度がスタートしました。全国18か所に小学校教員養成校を、6か所に中学校教員養成校を設置して、地方で教師の育成をする制度です。ここで2年間学ぶと、必ず教員免許がもらえて、卒業すれば教師になれます。農業が主体の地方では、お役所勤め以外、安定した職を探すのはなかなか困難です。プノンペンといった都市に出るか、タイ等の近隣諸国に出稼ぎに行くかという選択に迫られることも。田舎で働きながら家族を養いたい、そう希望する若者が教師という道を選ぶこともあります。

増え続ける学童人口と教師不足に対応するため、特例で中卒での小学校教員養成校の入学も当初認めていました。小中学校プラス2年で教師になれてしまうんです。しかし、この制度は現在は廃止されています。

シビアな赴任先校の決定方法

教員養成校を卒業と同時に自動的に教員免許が与えられますが、では、赴任先の学校はどうやって決まるでしょうか。
これはなかなかシビアな世界でして。まず各州でその年採用のある学校の名前が発表されます。それをもとに、卒業試験の成績がいい順に、赴任する学校を選んでいくという方式なのです。もし試験にしくじったら、自分が行きたい、もしくは、地元の学校が自分より成績のよかったクラスメイトに取られてしまうということになりかねません。

一度赴任したら異動がほとんどないカンボジアの学校では、最初の選択がその後の教師人生に大きく響いてくることになります。

教員養成制度の改革

指導方法はさまざまありますが、カンボジアは、教師が黒板の前に立ち、教科書を読み、板書し、子どもたちが暗記をする、Teacher-centered approach という方法を主に採用しています。となると、教育にとって教師は非常に重要な役割を担うこととなり、カンボジアでは、教師の量だけではなく、質の向上がこれまでもずっと課題となっていました。

2018年プノンペン都とバッタンバン州の小学校・中学校教員養成校を4年制に移行し、カンボジア初の教員養成大学が設立されました。小学校や中学校の教師になるのに、4年間かけて学べる制度がスタートしました。まずは2つの地域からはじめて、ゆくゆくは全国に展開していくプランとのことです。

尚、高校教師に至っては、大学卒業後1年国立教育研究所を卒業しなければならなかったのですが、今回の制度改革で、大学院卒が資格に加えられ、ますますハードルが上がりました。

現在は2つのパターンが共存

カンボジアは今、教員養成制度の過渡期にあります。そのため、小中学校の場合は、高校を卒業したあと教員養成校で2年学んで教師になる人がまだ大多数ですが、2年後には4年間の教員養成大学を卒業した教師が誕生します。
教員養成大学を卒業した教師が活躍するのはまだ数年後ですが、どう変化が起こるのか、楽しみです。

東京学芸大学のプロジェクトは、この4年制の教員養成大学において、保健指導教官を育成していく活動を行っています。またカンボジアに存在しない保健の先生を、教師育成の専門機関でじっくり育ててまいります。


(プロジェクトコーディネーター YM)

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