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「新聞記者、本屋になる」を読む

落合博 著の「新聞記者、本屋になる」を読んだのでその感想を述べていきたいと思います。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334045616

まず帯の『定年目前の58歳、子どもは3歳、書店員経験は0からの本屋開業記!』と胸躍る最高な文言です。こういうほとんどリスクしかないような事に突っ込んで、ワンスザアゲインみたいな冒険物語は好物です。
誤解がないようにいっておくと、フィクションでなく実際にReading 'Writin' BOOKSTOREという本屋を開業した落合さんの実録です。

この本書で一番好きなところは、なぜ本屋を始めたかの理由が書かれていないところです。その理由がない理由は冒頭に書かれていて、落合さん自身もよく分からない、多くの人を納得させられる説明を持ち合わせていない、とのことで、これは痺れます、かっこいいです。

多くの人が理解し納得できる合理的な説明を持ち合わせているなら、年齢と経歴の上に、採算性をとるのが難しいと言われている本屋をわざわざ選ばないだろうな〜。無謀ともいえる挑戦には、なんとなく面白そうとか、自分がやらないといけないと思ったからとか感情ベースの理由の方が逆に納得します。

新聞記者時代の話から始まり、開業までの準備期間、開店直後の様子、そして現状まで、随所にクスッと笑えるようなエピソードを挿入しながら、丁寧に綴られています。落合さんの自他ともに認める偏屈で天邪鬼な人となりも文章から伝わってきます。

読み終えて、本書は個人レベルで本屋を開業しようとする人には必読の書と言っていいと思います。著者の意図する通りwhyではなくhowが、具体的に細かく書かれているので、とても参考になる内容だと思います。
さらにお金に関連した本屋の厳しい現実にもきちんと触れていて、本だけを売って採算を取ることは不可能で、トークイベントなどの企画からの収入源を別途確保してなんとか継続していける状態らしいです。

Amazonという巨大で便利なプラットフォームがあって、僕も明確に欲しい本がある場合はわざわざ書店に行って購入することはなく、Amazonを利用します。そういう利便性だけを考慮するならば、はっきり言って勝負にならないでしょう。ただ僕自身は書店という空間自体が好きなので、町密着型の書店がバンバン潰れている現状は、嫌な社会だと思っていて、微々たるものではありますが、書店を応援しようと改めて思いました。

後日談として、読了後、実際にReading 'Writin' BOOKSTOREに訪ねてみました。お店は田原町駅から歩いてすぐな立地にあって、外観と内装共に温もりを感じさせるような洒落た印象を受けました。書棚もコンパクトにまとまっていて見やすかったです。その時はお客さんの出入りもわりと多く、本も購入されていたので、余計なお世話ながら安心しました。
選書はジェンダー関連の本が多い気がしました。個人的には今読みたい本ではなく、興味ある2番手あたりに欲しい本が多い印象でした。でも、この店が家の近くにあったら、定期的に通うだろうなと思いました。近所の方はうらやましい限りです。

もちろん訪ねるだけでなく、本も購入しましたよ!
分厚めで真面目な本です。途中まで読んでしばらく放置状態ですが。。。。
読了してまもなく訪ねたので、著者の落合さんがカウンターにたたずんでいるのを見て、少し感慨深いものがありました。そして会計の際に何か声をかけられるのかと思い、ちょっと緊張した面持ちで対面したのですが、「ありがとうございます」と一言だけいただきお店を去りました。
どうやら僕は話しかけるなオーラを纏っていたようです。ちょっとショックでした。。。はい。

それはよしとして、住居がお店から遠く、今後さらに遠くなるので、直接お店に立ち寄ることはないかと思いますが、定期的にオンラインからでも参加できるイベントを開催しているようなので、そのようなかたちで応援できたらと思います。頑張ってください!



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