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「史上最強の哲学入門」を読む

飲茶著の『史上最強の哲学入門』を読んだのでその感想を述べていきます。

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309414133/

タイトルの最強という単語や、表紙の絵柄で想像される通り、格闘漫画『バキ』の要素を取り入れて、歴史上著名な哲学者の思想を解説している本です。

まえがきが最高で、格闘家の選手入場コールをもじって、各哲学者の紹介文が熱い言葉で書かれています。その熱さ具合は哲学入門書は他にはないと思います。著者の飲茶氏も最初は定石通りな入門書を書いていたそうなのですが、そのような入門書はすでに沢山存在しているし、哲学の面白みというのを伝えきれていない感覚があって、苦しみながら模索したなかで本人が大好きなバキに至ったとのことです。

哲学を専門的に学んでこなかった身からすると、哲学は独りでずーーと、考えに耽るイメージがありますが、実際はそういう側面だけじゃなく議論をガンガンしまくって、論理を駆使して極限まで思想を言語化していく、まさに身を削りながら強さをひたすら目指すまさしく格闘家に近いのかもしれません。

本書の第1章で登場するソクラテスはまさに戦う哲学者という感じです。
当時のギリシャは内容がなくても聞こえが良い弁論に長けた政治家ばかり民衆に指示されていたようで、民主制の脆弱性が顕在化した衆愚政治に陥っていたといわれています。

その状況下で現れたのがソクラテスで、中身のない政治家相手に「正義」や「幸福」とは何かというような、根源的な問いを追及し続け、相手の無知をさらけ出してしまう、そして、ソクラテス自身も分からないから一緒に考えましょうと迫ってくる、めちゃくちゃ鬱陶しくて、めんどくさいけど、真理の探求に愚直な人物だったようです。

そのようなストロングスタイルは一部の若者に支持されて、彼の模倣をする者まで出てきます。そうなると当然、時の権力者たちにとっては目障りなわけで、最終的には若者を堕落させたという罪で、処刑されてしまいます。ただソクラテスの行動や思想は弟子の大哲学者プラトンを筆頭に引き継がれ、後世に多大なる影響を及ぼしました。

ソクラテスの紹介が長くなりましたが、本書ではその他に古代から近代までの哲学者の思想のさわりを知ることができます。
その中でも個人的に印象的なのはルソーで、人格的にダメなところもあり、現代社会では性犯罪として捕まる行為をしているのですが、そんな彼がフランス革命の原動力になる思想を残し、歴史に名を刻むことになるとは、人生本当にわからないものです。
あと資本論で有名なマルクスも紹介されていて、なかなか考えさせられる内容がとても興味深かったです。

本書はあくまで入門とあるので、各思想の内容はごく一部です。僕のような哲学初心者対象で、この本で気になった人物を他の書籍なりで掘り下げていくのが良いかと思います。入門のための入門書という立ち位置が適当かと思われます。

哲学のことはよくわからないけど、なんとなく気になっている方、または刃牙が好きな方、必読です!





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