池平コショウ

文章で人を喜ばせたい。 貧乏旅行、徒歩旅行の経験多。海外生活あり。アルバイト経験多種。…

池平コショウ

文章で人を喜ばせたい。 貧乏旅行、徒歩旅行の経験多。海外生活あり。アルバイト経験多種。 全て私の引き出しになっています。 職業として文章を書いていました。今後も続けていきたいと思っています。 速書き得意。情報を組み合わせて脈絡をつけていくのが好きです。メンサ会員です

最近の記事

それでは次の選挙に勝てません

池平コショウ  市役所通りの押しボタン信号を赤信号のまま渡っていくのが樋山徹四十八才で、押しボタンをせわしなくグリグリと押しながら樋山を必死に呼び戻そうとしているのが田代知生だ。 「市長、市長。信号は守ってください」  田代は周囲を気にしながら声を押し殺して何度も叫んでいる。 「大丈夫だよ。車、来てないから」  樋山はすでに道路を渡り切って、涼しい顔で振り返った。  信号が緑に変わった瞬間にダッシュした田代は、ここ発山市の総務部長でことし五十七才になる。元気

    • サインボール

       小学校のときに所属していていたサッカークラブにはマモルという同級生がいた。  マモルの両親は数年前に離婚していてお母さんと2人で町の野球場の裏にある古いアパートに暮らしていた。  お金がかからないスポーツといわれるサッカーだったがシューズは自分で用意しなければならない。  マモルはサイズがあわなくなった小さいシューズをいつも大事に履いていた。 マ「ブラジル代表のストライカーも一回り小さいシューズを履いているんだぜ。そのほうが強いシュートが撃てるからな」  その言葉通り、マモ

      • 被災地支援より考えなくちゃいけないこと

        災害が起きるとマスコミも一般人もみんななんか興奮状態になっちゃう気がする。そんで「それー、被災地にお金を落とせー」ってヒステリー爆発しちゃう。 それはそれで重要なことなんだろうけど、それよりとても重要なことがある。 あっ。この「お金を落とす」って表現大嫌いなのね。 観光地でも被災地でもそこでまっとうな経済活動をしている人に対してね、「落とす」はないでしょ。 まっとうな商品やサービスの対価を払うのに「落とす」って失礼よ。 それはまた別の機会に書くけどさ、今、本当にお金を使わ

        • 伝統行事を新しくでっちあげた話

          祭の価値はまず第一に古さなんだよなあ。だから「古めかしさ」を捏造しなければならないわけだ

        それでは次の選挙に勝てません

          船で沖縄についたらお金がないことに気づいた話

          あわてて港のターミナルに貼ってあった製糖工場の季節職員のチラシを確認しに延々走っていった。 会社は那覇市内のようだった。面接に行ったら「じゃあ、明日、久米島に行ってね」僕「久米島ってどこですか?」

          船で沖縄についたらお金がないことに気づいた話

          公用語すら知らずにニュージーラントに行った話

          飛行機でとなりあわせたオーストラリアに行くというおばさんが聞いてきた「ニュージーランドって何語を喋るの?」。僕「ニュージーランド語じゃないですかね」

          公用語すら知らずにニュージーラントに行った話

          大文字焼きにハートをつけたときの話

          ゲリラで市長に直談判したりね、ほんとにいろいろやりましたよ

          大文字焼きにハートをつけたときの話

          千葉から大阪まで歩いたときの話

          もう、ドラマでしかないので、小出しにします(笑

          千葉から大阪まで歩いたときの話

          雨漏り

                      池平コショウ  あぁ、やっぱり雨漏りが始まった。  夕方から降り始めた雨は勢いを増してナイター中継が終わるころには豪雨になった。僕はシミが広がっていく天井を見上げながら絶望的な気分になっていた。  オトー(ウチではお父さんをオトー、お母さんをオカーと呼ぶ)が庭から大きなタライを持ってきた。本来は、銭湯代を節約するための行水用なのだが、雨漏りで活躍する。  天井を見上げながら狙いを定め、タライの位置を微調整していたオトーが「ジャスト!」と親指を立てた。う

          二大政党制を体験してみたいの巻

          二大政党制を体験してみたいの巻 読売新聞と早稲田大学が共同で行った世論調査によると、一党による安定政権を望まないとした人が82%にのぼったという。政権を任せられる野党の出現を大多数が求めているという結果だ。 最初にことわっておく。筆者は政治に全く疎い。そのずぶの素人が突然思ったのだ。二大政党制ってどんな感じなんだろう。 まずは「癒着」について 官民が仕事をスムーズに進めるため密に連携する場合は多い。馴れ合い程度のものも含めると官民の癒着をなくすのは難しいだろう。 全ての

          二大政党制を体験してみたいの巻

          引き分け組でどうでしょうの巻

          引き分け組でどうでしょうの巻 デジタルってのは「指」を表すナントカ語だそうで、指を折って数えることが起源らしいのだ。 一般的には、数字に置き換えられたデータのことだと思っていて間違いないだろう。絵や音楽も数字に置き換えると、遠くに送るときも長期間保存しても色が変色したり、音程が狂ったりしないから便利といえば便利。 だけど、デジタル化した絵や音楽は「本物とは違う」とも言える。 デジタルの狭間 音楽愛好家の間では依然としてアナログレコードが珍重されている。 デジタルは前述の

          引き分け組でどうでしょうの巻

          民主主義の大変革の巻

          民主主義の大変革の巻 沖縄に万座毛(まんざもう)という名所がある。ゾウのシルエットに似た巨岩が海に突き出ているところで、ゾウの後頭部から広々とした草原が広がっている。 古代の琉球人が一堂に集まって会議をしたという説明をどこかで読んだ気がしていた。 改めて観光情報を確認すると、琉球王朝の王様が「一万人が集まれる広さだ」とその景観を絶賛したことから万座毛(毛は草原の意味)と名付けられたとある。実際に会議をしたという記述はついぞ見つからなかった。 記憶がどこかで混線したのだろうか

          民主主義の大変革の巻

          こいつじゃない。こいつでもない

          こいつじゃない。こいつでもない              池平コショウ  次、いつ会おうか、だって?  冗談でしょ。可能性があると思ってるの? スーパーの初売り並みにおめでたい男ね。 「スケジュールを調整してこちらから連絡しますね」  そう言ってから少し後悔。こいつ察しが悪そうだから本気にしちゃうかも。  わたし沢木真理子が彼氏に求める条件はたった一つ?、二つ?、三つかな? とにかく簡単なこと。  今回の男。ルックスもまあまあ。年収も私の条件以

          こいつじゃない。こいつでもない

          キャミーノタズラル

            キャミーノタズラル               池平コショウ  課長の怒声がまだ頭の中に渦巻いていた。同僚たちの蔑みは背中に突き刺さったまま。 「もう一度行ってこい」。突き放されたのが逆に救いだった。オフィスから逃げ出した。  空はどんよりと曇っている。小さなつむじ風をひき連れた木枯らしがズボンの裾から這い上がってスネを冷やした。 「この仕事は向いていないのかも知れないなあ」。言ってみる。(なにを今さら)。俺の中でもう一人の俺があきれた。メンタルは強いつもりだっ

          キャミーノタズラル

          記憶消去装置

          記憶消去装置              池平コショウ  ドアが激しくきしみながら開くと白煙とともに白髪 をモジャモジャにかき乱した白衣の老人が現れた。  ロイドメガネの奥の疲れ切った目は今にも閉じてしまいそう。足取りはおぼつかなくよたよたとドアから出てきた。 「篠原くん。実験は成功じゃよ」  何度も息継ぎをしたのは疲労のせいか興奮のせいか。 「おめでとうございます」  篠原は博士に駆け寄って握手を求めた。 「人間の記憶を自在に消す装置の完成だよ」 「苦節20年。変人扱いされ

          夏の終わりの日

           夏の終わりの日    池平コショウ  お父さんはいつも私に共感してくれる。  「嫌なことは先送りしたいのが人間だよ。智花はとても人間らしいと思うよ」  どんなに慰められたとしても涙は目からボロボロ落ちる。夏休み最後の日に宿題を山のように残した小学5年生はひたすら心細くて怖くて誰かに助けてもらいたい。  きっと今夜は徹夜だ。それでも宿題は終わらないかもしれない。もしも「今、一番欲しいものは何?」と尋ねられたら「私が寝ている間に宿題をやってくれる小人さんたち」と言う。

          夏の終わりの日