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スーファミの取り出しボタン

スーパーファミコンといえばイジェクトボタンだと思う。

画像がファミコンじゃねーかとお思いだろうが、だってunsplashにこれしかなかったんだもん。

おれはニンテンドー64世代なので、スーパーファミコンに触れたのは少し後のことだった。おれがスーファミで遊んだ期間は非常に長いが、如何せんスーファミ世代ではないから、申し訳無いがあまりスーファミに懐かしいレトロゲームという感情がわかない。なにしろスーファミの発売は1990年だが、おれがスーファミを親戚からもらったのはせいぜい17年くらい前のことで……レトロ…なのか……?

それはともかく、スーファミで1番謎だったのは、電源とリセットボタンの間にある、PCのスペースキーを思わせる灰色で(うちのは黄ばんでるけど)横びろのボタンだ。ご存知の通りカセットを取り出すためのイジェクトボタンなのだが、64しかゲーム機を知らないころのおれにとっては完全に用途不明なわけだから、なんか触っちゃいけない気がする!と思い込み手をつけることもしなかった。こう思った原因は64だと同じ位置にメモリー拡張パックを挿す場所があったからだろう(あれのCMの内容は「はがさないでください」と書いてあるデンジャラスなシールを少年達が思い切り剥がすという、子供に蛮勇を教えてくれるものであった)。

だからスーファミのカセットを抜くときは64みたいに手で引き抜いていた。やたら硬くて抜きにくいとは思っていたが当然正規の抜き方じゃないからなわけで、実際カセットに相当な負荷がかかっていたんじゃないだろうか。イジェクトボタンがカセットの取外しに使うものと気づいたのは、カセットを抜いた後に偶然押してしまってからのことだ。カセットがささっていない時には軽すぎるほどにストンと深くボタンが押し込まれる。差込口の中でカラクリめいてカチャカチャ動くアームの存在は衝撃的であった。なにしろカセットをボタンを押して取り出すゲーム機なんて他に知らなかったからだ(海外製ゲーム機とかにはあるかもしんないけど)。そういうわけでおれにとってはスーパーファミコンといえばこのボタン、と強く刷り込まれたのだった。

使い方に気づいたあとも、むやみに押すとカセットが勢いよく発射されてぶっ倒れるボタンなのでとても恐怖していた。なんて危ういゲーム機なんだろう。倒れた衝撃でデータが飛んだらどうしてくれるんだ。カービィのデータが消えるのはこいつのせいなんじゃないのか(それは違う)。おれの頭にはカセットを手で支えてからボタンを押すなんて発想はなかった。

最近出たスーパーファミコンクラシックミニだとイジェクトボタンはただの筐体の飾りでしかなく、押してもピクリとも動かない。クラシックミニにはカセット交換の概念がないから当然のことなのだが、おれにとってはこのボタンこそがスーファミの象徴なので、この扱いはなかなか寂しい。クラシックミニでしかスーファミのデザインを知らないキッズは、これが何を意味するものだったか推測できるだろうか。

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