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霧のなか

朝から辺り一面深い霧に包まれた日の午後、近所の森を歩いていたら、同じくらいの年齢の見知らぬ女性と出会しました。目が合ったので挨拶を交わします。こういうことは、この辺りでは珍しいことではありません。そこから話が色々と広がることもあります。天気のこと、物価のこと、もうじきやって来るクリスマスのこと…。彼女とも暫く立ち話をしました。すると、しばらく経ってから彼女が「私の家はすぐ近くなんです。ちょっと寄っていきませんか」と誘います。私に予定はありません。せっかくなのでその言葉に甘え彼女の家へ行くことにしました。彼女の家は森の外れにある小さな一軒家でした。居心地の良い居間で美味しいケーキとお茶をたっぷりご馳走になりました。素敵な居間ですねと褒めると、彼女は家の中を色々と案内してくれました。いつの間にか外が薄暗くなっていたので、そろそろお暇することにしました。私の家は森の反対側にあるのでけっこう歩かなければなりません。そこでトイレを貸してくださいとお願いすると、突然彼女の顔色が変わり「それは絶対出来ません」と言います。彼女の顔色から何かよんどころない事情があるように思いました。私はそれ以上お願いすることも出来ず、暗くなった森の中、タプタプのお腹を抱え森の中を走って帰りました。

…という夢を、今朝見ました。起きてすぐトイレに向かったことは、言うまでもありません。

霧に包まれた森の中は、現世と異界の境界が不明瞭になります。ですから、実際にそこで何が起こってもおかしくないような気がするのです。たぶん、木々の間に突然お菓子の家が出現しても、私は驚かないと思います。

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