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フッ軽移動記~東北新幹線編~


はじめに

 本作は2023年8月に発行した「フッ軽移動記~合同版~」より抜粋した「3.東北新幹線編」のため、前提として「1.東海道新幹線編(2001年)」「2.山陽新幹線編(2012年)」があります。また、合同版では書ききれなかった細かい話も含まれます。関西の新幹線無し県民出身者による痛快新幹線乗車エンタテイメントをお楽しみください。
 凡例  【】:駅名
     {}:補足・解説

東北新幹線に乗ってみた(2020年6月)


 時代は大きく流れコロナ禍に突入。2019年12月に一気見した"新幹線変形ロボ シンカリオン"にドハマりしたオタクがいた。主人公である速杉ハヤト君が運転するはやぶさに乗りたい一心で計画を立てるも、緊急事態宣言の発出により4月の計画は頓挫。ちょうど仕事を辞めた直後で悶々とする日々を乗り越えた6月。ついに宣言が解除され、中止されていたグランクラスのサービスも再開となった。

行 く し か ね ぇ

グランクラスは、グリーン車よりももう一つ上をゆく座席等級だ。ざっくりいうと新幹線のファーストクラス。ハヤト君も誕生日に乗車している(シンカリオン42話)。なおこの旅は
・人生初のE5系はやぶさに乗る
・岩手県・遠野でカッパに会う(「さらざんまい」見てね)
がメインイベント。遠野へ行くには東北新幹線を【新花巻】で下車しレンタカーで向かう予定だ。各種予約は完了、いつも通り夜行バスでいざ東京へ。
   新幹線に乗るのは夕方。それまでに別件をこなしにまず浅草へと向かった。趣味の一つであるカモ井マステ「mt」の限定柄をゲットするためだ。日本各所でそういったイベントが実施されている。そして浅草はもちろんさらざんまいの聖地。浅草で宿を取り、エンディングのカットを求めてたびたび深夜徘徊したものである。しかし時勢が時勢。あの仲見世通りがかつての活気など感じることのできない虚ろの空間へと変貌していたことを今も忘れはしない。
 そのあとも日本橋パピエティグルでのmtイベント、お台場ノイタミナショップでつり球周年イベント、神楽坂アコメヤでmtイベントと各種オタクの用事をこなして【東京】へ。私は事前チェックしていた『ビューゴールドラウンジ』{ちょっとリッチな待合ラウンジ。【東京】発のグランクラス乗車券を持っていると使える。他にも、利用条件あり}で焼き菓子とドリンクサービスを受け、優雅な待ち時間を堪能。優雅とか言いつつ、一人ぽつんとラウンジの中で待っているのは分不相応の身の程知らずの気分だった。

わ、私ってば場違いじゃね……?

 ソワソワが抑えきれない中、出発の時刻が近づき始め、私は改札をくぐる。緊張の汗は流れ、心臓は早鐘を打ち始める。ゆっくりと昇ったエスカレーター、たどり着いたのは傾きかけた太陽に照らされている新幹線ホーム。そして目の前には、念願のE5系はやぶさの姿があった……!! その御姿、いと尊し……!!

夕焼けまぶしっ
ぐ、グランクラスだぁぁぁああああ!!


 意気揚々と10号車・グランクラスへ。1編成に18席のみの別世界。アニメで見た通りの空間。背後の乗客を気にせずフルリクライニングできる革張りのシート。専属アテンダントさんのフルサービスによって提供される軽食・お菓子。専用グラスで提供される飲み放題のドリンク(酒含む)たち。これは気が狂ってしまう……🤪 

最高か…?

はやぶさは走り始め【大宮】ではてっぱくを横目に加速度を上げる。軽食だが作中では「和軽食」か「洋軽食」を選択できたのだが、再開後のメニュー変更で和洋折衷らしき「軽食」一種のみの提供だった。「和軽食で……」をやりたかった……くっ! 

1種類になってしまった軽食&スパークリングワイン
これが飲みたかったのよシードル🍎

その後も調子に乗ったオタクは、食事をしながらワインを開け、シードルを開け、コーヒーまで堪能する始末。グランクラス最高! えへへうふふはははは~! そう、これがまさに有頂天、浮かれポンチというやつだった。
 【東京】から【仙台】までは約1時間30分。2015年には飛行機(Peach)で来たことがある。5年振りの仙台だ。早いもので楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますなぁといそいそ下車し、乗っていたはやぶさを見送る。ありがとはやぶさ、ありがとうE5、ありがとうグランクラス……。さーて、いったんホテルに荷物おいて、深夜のイベントに備えるぞとホームを後にして異変に気付いた。

ス マ ホ が な い

気が狂っていたのだよ。もとい、酔っぱらっていたのだよ。嘘です、酔っぱらってなくても普段から結構な忘れ癖があるので、酔っぱらってなくても忘れていたかもしれない。そこからはシフラに戻った自分との闘いだった。さっきまでいた酔っ払い混じりの私は一瞬にして消えた。駅員さんに必死の形相で乗っていた新幹線の情報を提供し捜索依頼をするも、『走り始めたはやぶさは止まらないよ☆』と言わんばかりに、発見されたスマホはそのまま終点の【新青森】へ。後続の新幹線に乗れば追いつけるものの、時刻は20時を過ぎたところ。行きはよいよい、帰ってくることは不可。現地で宿を探すことも考えたが、どうしてもこの後の深夜イベントのために仙台に滞在したい……! さらに連泊予定なので荷物を置いておきたい……。こうして私は仙台で予約済みのホテル泊を決めたのであった。そしてこの日、噂の未来からやってきた新幹線が見れるかもしれない日、ということでこの行程を組んでいたのだが、まだリサーチ力に乏しかった私。この日は保線作業の兼ね合いで未来からやってこない日だった……。ALFA-Xチャレンジ失敗! グウウウウウ……!!!!! 朝始発の新幹線に乗るべくマジで眠れぬ一夜を過ごす羽目になった。
 まだ薄暗い朝。眠気と吐き気を抑えつつ駅へ。始発の新幹線たちがずらりと並んでいる中「へへっ……E5系がいっぱいだね……」と虚ろな笑みを浮かべながらいざ始発のH5系はやぶさ{E5系の兄弟新幹線。E5系はJR東日本(East)で、H5系はJR北海道(Hokkaido)の所有新幹線。見分け方は車体側面のロゴマークと帯の色、車内の床デザイン・カーテン柄、他にもいろいろ異なる点がある}に乗車。そう、まさかの編成数たった4編成のH5系だったのだ……! ちなみに始発で運行することは決まっている、ということを後で知る。リサーチ力…!

E5!E5!H5!
なぜスマホがないのに写真があるのかというと、カメラを持っていたのです


 また、昨日は浮かれすぎたビギナーで気づいていなかったが、【宇都宮】以北はやぶさの本領発揮で最高速度の320km/h近くで走行を行う。現状、日本最速の新幹線だ。そして一瞬正気に戻ったオタクはあることを思い出す。【新花巻】下車ではたどり着かなかった、その次の停車駅である【盛岡】に着くことを。

はやぶさこまちの離合がある!!

そもそも論として、東海道・山陽新幹線が新幹線のすべてだと思っていたオタクにとっては「種類の異なる新幹線が合体して走行している」ということ自体があり得ない現象なんですよ。なんやねんそれ、めっちゃすげぇ。やばい。なんでそんなことしてるの。教えてくれてありがとうシンカリオン。【盛岡】に着いてホームに降り連結部分へ。発車メロディが流れ始めドアが閉まると、併結が外れてこまちは走り始めます。少しずつ速度を上げながら連結器カバーも同時にゆっくりと閉まり、【秋田】に向かって走っていきました。いってらっしゃーい! いやーすごい、本当に別れていった。これが東の新幹線……! なんて呑気にしていると放っていかれてしまうので自分も座席に戻ります。この時カメラの誤操作で、猛ダッシュして自身の席に戻る動画が残っていた。「放っていかれる前に自席に戻らねば!!」の気持ちでダッシュしていたが、そんなに焦らんでもええって。新幹線ビギナーはとても忙しい。
 はやぶさ単機となり、さらに北上。本来であれば1時間45分ほどでたどり着けるが、始発のはやぶさは各駅停車ゆえに2時間半かけてたどり着いたのが本州最北端の地、青森県は【新青森】です。まさか人生初の青森がこんなことになるとはな、ハハッ。

おかえりスマホ…の1枚目

無事にスマホと再会したので、次のはやぶさで引き返します。その間の滞在時間わずか40分。噂のりんごジュース専用自販機、【新青森】の外観、ねぶたと凝縮された青森をさらっと楽しみ、また来るぜ☆ と別れを告げ再び【盛岡】へカムバック。今度は併結の見学ができました。

こまち待ちのE5


リンク合体だ~! ガッチャン!

 そんな【東京】へ向かうはやこまを見送り、やまびこ{東北新幹線ver.のこだま}に乗り換えれば、次の駅が【新花巻】です。

新花巻駅前の銀河鉄道モニュメント

 事前に遅刻の連絡をしていた駅前のレンタカーも無事に借りることができ、いざ遠野へ。閑静な山間の高速道路ドライブが地元感あってめっちゃ安心しました。まず向かったのは「伝承園」。こちら含む遠野の各所でカッパ捕獲許可証を得ることができます。ちなみにシンカシオンZ 26話でメーテルさんを追いかけてタイジュ君が訪れた不思議な場所がここ。シンカリオンロケ班の取材力に感謝しかありません。さて、カッパ捕獲前に腹ごしらえをします。実はジンギスカンが有名な遠野ですが、青森行ったおかげで時間圧迫により断念。他の有名なものを探し、いわゆるすいとんの一種である郷土料理「ひっつみ汁」をいただきました。

ひっつみ汁、うまい

あっさりお出汁がうまい、鶏肉とひっつみ自体が一口サイズなのでパクパク食べられる、そしてなんといってもきゅうりの酢の物とお漬物、キュウリ三昧ごちそうさまでした美味。
 そこから歩いてホップ畑に挟まれた道を進むと、常堅寺という小さなお寺があります。

カッパ(?)の狛犬がお出迎え

さらに奥、お寺の裏側へ進むと「カッパ淵」に到着しました、うっそうと茂る草木、流れる小川、いかにも……です。

カッパが飛び出してきそうな…?

ここでタイジュ君とソウギョクさんがエンカウントします。尻……。用意されているキュウリ付きの釣り竿を装備し、いざカッパ釣り!

捕獲賞を持ち、いざ vsカッパワ・カッパデス!
(※この時は聖地になるなんて知りませんでした)

 尻子玉と引き換えにでも釣ってやるぜ! ……残念ながらボウズに終わりました。カッパに会いたかった……。
 伝承園を後にしドライブ続行ですが、まず寄り道をします。「道の駅みやもり」です。ここはソウギョクさんが「駅」と勘違いした例の場所です。その横にSL銀河の通過が絵になるめがね橋こと「宮守橋梁」があります。この時はSL銀河の運行はなかったため、橋の記念撮影。

ライトアップイベントもあります

いつかSL銀河が復活するときは、この景色を見てみたいものです。そのあと計画していたいくつかの予定をカットし、5年ぶりに中尊寺を訪問。これまた滞在時間40分ほど。なんでこんな行程組んだのか覚えていません。そのあとは【一ノ関】でレンタカーを返却し、この旅4度目の新幹線(しかも【一ノ関】停車のはやぶさ)で【仙台】へと戻りました。

やまびこじゃないのねお前…!

 事故とはいえ2日間で4回も新幹線に乗るなんて、普段の東京遠征も夜行バスや格安・中堅航空利用が多いの私からすればあり得なさすぎることなんですよ。推しのパワーすごい。
 夕飯には、関西から引っ越したフォロワーと数年ぶりに再会し牛タンを食らい、やっとのことホテルで一休み。実はこのホテル、ちょっと【仙台】からは離れてるんですが、事前に連絡すれば「新幹線ビュー」ができるホテルなのです…! 目の前を走っていくE5、E6、たまにH5……3日目の目覚めは最高でした。

ホテルの部屋からの眺め

しとしと雨の降る中、朝から「ペルソナ5 スクランブル」の聖地にもなった仙台市内観光をして、帰る前にハルカちゃん推しのひょうたん揚げを食べ、無事仙台空港から関西へと帰っていきました。

政宗公、お久しぶりでありました!

 こうして、事故ながらも旅行フッ軽の味を占めたゆきせが誕生してしまったのであった。ここから新幹線完全乗車への道が開幕したのである。

東京~新青森 間 完乗


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