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モバイルオーダーの会社でCTOをやっていたら10年が経とうとしていた

この記事は、Showcase Gig Advent Calendar 2021 最終日の記事です。

こんにちは!Showcase Gig CTOの石亀です。 今日でアドベントカレンダーも最終日ですね。 初めて弊社開発陣が取り組んだアドベントカレンダー。 飲食店という幅広く奥深い領域において、テクノロジーで課題解決に挑む我々も、複雑で多様な生態系に対して悩み、考えながら臨んでいます。 そこから得た知見やチャレンジの記事の数々お楽しみいただけたでしょうか。 読んでいただいた方に「おもしろかったよ」と言っていただけたらうれしいです。

10年の振り返り

さて、そんなShowcase Gigにおいて私はCTOという役割を担わせていただいているのですが、設立当初から数えるとかれこれ10年が経とうとしている訳でございます。

10年は共同創業者CTOとして改めての節目でもあるので、これまでを振り返り、これからを考えてみようと思いました。

当初からCTOとして常にあったのは技術という血を会社全体に巡らせ、テクノロジーから経営の舵取りを行う、という事でした。 その中では当然モバイルオーダーという我々の軸となるサービスがあります。 現在進行形で、過去よりも今、そして未来に向けて日々進化を遂げているプロダクトです。 世の中がコロナ禍により大きく変化する事で我々のビジネス環境も激変し、なおさらにニーズは高まっています。 いったいビジネス環境がこんなに大きく、しかも凄まじい速さで変わっていくとは10年前は思いもしなかったですし、直近でもどう変わったのか変わっていくのかを認識するのも四苦八苦しています。

そんな時にそもそもOMO(Online Merges with Offline)という新しい領域において、最初からその作り方やましてや正解なんて見つかる訳がないのです。 だからこそ、この旅は楽しめますし、まだ正解がないからやってみる事が大事です。 よく考えた上でこれが正解なんだと自分を言いくるめ、周りも言いくるめ、そんな事で前に前にと進んで来ました。

ある程度の経験と高い徳が積まれたエンジニアであれば、こういう事がやりたいなと思った時にこうすればできるだろうな、という事がイメージできます。 実際は抽象度を高くする事でさも簡単に見えてしまうという罠はありますが、自身の経験や知識、Webを見れば先人のありがたいプラクティスを見つけることができ、なんだなんだできるじゃないかと考えてしまう事はよくあると思います。

実際2013年に私も初めてモバイルオーダー(2013年当時はそんな名称もなく、飲食店におけるファストパスみたいな概念でいました)を作ってみようとなった時に、これまで様々なサービス開発やプロジェクトで培われたエンジニアとしての経験から、「ふむふむスマートフォンから注文情報をキッチンまで何らかの方法で届ければ良いのだな」、という雑い抽象化にもなっていない考えでまぁできるだろうとすぐに思った次第です。 今その時その場に戻れるのなら懇々と自分に説教をし、いかにお前が甘っちょろい考えでいるのか、泣くまで問い詰める事ができるのですが、そんな事よりも当時のやってみようという強い想いの方が何よりも大切です。

そんなこんなで初めてテイクアウトにおけるモバイルオーダーをチームで生み出す訳ですが、そこからが長い旅路の始まりです。 最初の導入店舗は運良くすぐに見つかり、パイロット店舗としてフィールドテストを開始します。 やってみるとすんなり我々の思い描く体験を得る事ができました。 それはそうです。 なぜなら開発中にその導入店舗のオペレーションを聞いていた訳ですし、その店舗が必要とするオペレーションに沿った機能を実装していたのです。 当時は飲食店の幅広さや奥深さについてほとんど知ったような知らないような知識しか持ち合わせておらず、このサービスはどんな店舗のオペレーションにも合致するだろうと考えていました。

導入店舗を広げようとセールスを頑張る訳ですが、行けども行けども次々に新しい要望が出てきます。 そこで初めてあれれと思い始めました。 テイクアウトというのは概念としてはあっても、2013年から最近まで、事前にスマートフォンで注文し決済もしておくという体験は店舗にもユーザーにとっても新しい体験でしたし、Uber Eatsなどのシェアリングデリバリーサービスもなかったので、誰にとってもまったく新しい市場でした。 我々は当然モバイルオーダーという体験がいずれ必要になるものと信じられましたし、実際にユーザーとして体験してみるとこれがない世界にはもう戻れなくなるという事は分かっていましたが、様々な店舗にスムーズに導入されるまでには時間は掛かるものだと考えました。

そこからは様々な形態の飲食店と接し、数え切れないほどのフィードバックを得て、それをシステムに落とし込むという地道な作業の繰り返しです。 当然次々と必要だとされる機能は開発される訳ですが、同時に我々のドメイン知識もアップデートされ続けます。 そうこうしていると過去のドメイン知識で作った機能やシステムが、新しいドメイン知識とコンフリクトを起こし始めます。

また世の中もデジタル化が進み、あらゆる分野でDXが叫ばれるようになるにつれ、飲食店においてもテイクアウトだけでなく、シェアリングデリバリーが始まりました。 2018年には我々も店舗の外からモバイルオーダーをするだけではなく、店内でのモバイルオーダーとなるテーブルオーダーもひっそりと実験を始めました。 ある程度の確証を得る事ができ、2019年には正式にテーブルオーダーをリリースする訳です。

その間に我々は大小様々な形態の飲食店におけるフィードバックを得る事ができたのですが、同時に汎用的なシステムとしては複層的で大きなものになっていきました。 システムの図体が大きくなると動きは遅くなるので、そのスピードを上げようとする為に開発環境やアーキテクチャ、組織もまたそれに最適化がされなければなりません。

CTOとして

CTOとしてはこの頃にとても悩んでいました。 その時その時で最適と思える判断をしたつもりですが、様々な制約から局所的な解になっていた事もありました。 たくさんの迷惑を掛けましたし、そこでした判断の影響が広範囲に渡ってしまったのは苦い記憶と反省になっています。 思い描くモバイルオーダーはまだ先にあり、それでもかなり見え始めていたのは事実です。 どうやってそれを実現できるのか。 アーキテクチャと組織もその先を見据えて考える必要があるだろうと思いました。

その頃から何年か先の全体像を考え、個人の能力だけでは太刀打ちできないのが明白ですので、チームをスケールする事でそこにたどり着こうと考えました。 そこからは想いを伝え、頼れる人を集め、改めてモバイルオーダーとは何なのかをチームで考える事ができるまでに成長したのは、我々全員が社会をより良く変えたいという強い想いがあったからこそ、正しい方向を見つけて修正できたと思えるのです。

CTOとしてはチームがいかにチャレンジできるか、そして小さな失敗を素早くできるか、そんな環境を作る事を目指すのが良いのだろうと思っています。 口にするのは簡単ですが、コストはどう考えるのかでもありますし、失敗をしても大丈夫な環境は開発にまつわる手法もそうですし、何よりもお客様への影響をなくす為にはどうすれば良いか、というチャレンジにつながります。 制約はアイデアを生むと考えていますし、いかに正しい制約とは何なのかを問い続けるのは、CTOという立場でこそ考えられる事と思いました。

これから

我々にはこれまでの間にたどり着いた、モバイルオーダーという大きな思想を表現する器としてのプラットフォームがあります。 そしてプラットフォームとそれを体現するチームを持って、様々な飲食店のインフラになるという準備が整いました。 まだこれからも我々の考えるモバイルオーダーは進化を続けます。 デバイスやインターフェース、次世代店舗のような店舗実態すらも変わっていく中で、そこに携わることができるのは楽しみでしかないです。 これまでの10年を糧に、これからの10年もたくさんのインプットをし、アウトプットとして還元できるように成長していきたいと考えています。

今年もコロナ禍が続き大変な1年となりましたし、個人的には振り返ることが本当に多かった1年でした。

来年みなさまにとって良い年になりますように。
メリークリスマス!それでは良いお年を!

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