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ワークスタイルとアイスランド

今週から新学期が始まり折り返し地点を過ぎました。たくさんの思い出と学びがあった中、アイスランドに旅行に行ったことをまとめたいと思います。

ドイツ人の友達とアイスランドに3泊4日の旅に11月の中旬頃に行きました。(かなり前になっちゃった笑)

北欧諸国としてもひとくくりにされることがあるアイスランド。しかし、実際訪れてみると、スウェーデンやデンマークなどのスキャンディナビアとは違った自然の魅力がある国でした。1日目は首都のリキャベックの中心街を観光し、なんだか迫力のある大きな教会に行き、2日目にはツアーに参加して、中心街からバスで1時間ほど離れたところから有名な滝・湖・地下から温泉が吹き出場所などを1日かけて回りました。

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火山地帯なので黒い大きな岩がたくさんあってその上に氷や雪が覆いかぶさっていて、火山と氷のミスマッチな風景を見ているとまるで地の果てにきたような気分になりました。

そして最終日は世界最大級と言われている、ブルーラグーンと呼ばれる温泉に入りに行きました。世界一物価が高いとされているアイスランドなので、入館料も高くできるだけ長くお湯に浸かっておこうと友達と必死でした。笑

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その帰り、空港に向かうまでのタクシーがスタッフの人に頼んでもなかなかきてくれず1時間ほど待つはめになりスタッフの人とお話しする時間ができました。彼はポーランド出身で小さい頃にアイスランドに移住した22歳の男性の方で、私たちと年齢が近いということもありすごく仲良くなりました。

話はヨーロッパでの生活についてになり、アイスランドでは賃金がとてもよく休日も多く取れるよと言うので仕事について聞いてみると、そこの温泉の見回りと荷物預かりの仕事をしていて驚くことに22歳の若さにして、もう自分の家をローンを組んで購入しており、さらに休みは月の半分休めるというのです。日本もドイツ人の友達もさすがに驚きました。

彼の話によると、例えば平日を仕事・土日を休日にすると次の週の平日が全て休日になり、土日が仕事日になるそうです。こんな働き方があるのかと、調べてみると日本のように正社員・非正規社員などに分けられておらず労働時間ベースの賃金でかなり平等な雇用形態なのだとか。

去年12月、アイスランドの首相が国の指標を経済の断片的指標であるGDP(国内総生産)の代わりが必要だと提起したことがBBCで取り上げられていました。旅行後だったということもあり、さらにその時授業で勉強していた内容とマッチしていたので目にとまりました。ヤコブスドッティル首相はGDP(経済)を国の主な指標にすることで国のビジョンが経済開発優先になり特に環境問題を解決するためには新たな指標をもとに国の開発を進めるべきだと言っています。

ではGDPとヤコブスドッティル首相のいう”幸福度”の間にどんな関係があるのか、授業で議論した内容も含めて考えていこうと思います。アイスランドを含め、北欧諸国はいつも幸福度指数上位の常連国なのは有名ですがその理由は教育・福祉に焦点を当てた政策が身を結んでいるのだと思います。実際北欧を旅行したりスウェーデンで住んでいて思うのは、子供の多さです。それもそのはず、教育費は大学まで無料で男女平等が進んでおりお母さんも安心して子供を育てて仕事もできる。

しかしそんな北欧諸国の幸福度についてSNSで発信している人に対して「北欧が福祉先進国であるというのは幻想だ」「日本と比べて、国の大きさが違うんだ人口が少ないからそんなことがうまくいくんだろう」というコメントをよく見ます。

しかしそうでしょうか。北欧のシステムが一番素晴らしいと断言できませんが、私が半年間北欧のみんなの暮らしを見ていてたくさん日本が見習わないといけないところを見つけました。アイスランドの温泉で働いていた彼も、仕事をしながら趣味を楽しみ友達や家族との時間を大事にできるのがアイスランドのいいところだねと言っていたように、”朝から夜まで働き詰めさらに休日は平日たまった疲れを取るための休息日” のサイクルが日本では当たり前だと思っていた私からすると、人生の価値観についてすごく興味を持つようになりました。

アイスランドの国民の人生の価値観が国の政策に影響しているのかどちらか先かはわかりませんが、少なくとも国の価値観(ビジョン)と国民の人生の価値観の間には強い関係性があると思います。

例えば日本の高度成長期を支えた私のおじいちゃん世代は、経済の成長こそ国の強さの証だと信じ世界の経済第2位の大国になったことを誇りに感じたでしょう。この経済大国というのはまさにGDPを指標としているわけですが、これを国民の人口で割った指標、一人当たりGDPをみると24位(2019年時)であり日本人がGDPで世界で3位だとしても世界で3番目にお金持ちな国民とは到底言えません。

このいくら国が儲けようと、個人レベルでの幸福度が上がっていないと気づいたのは1998年初のアジア人としてノーベル経済賞を受けたアマルティア・セン(Amartya Sen)で、彼は開発学を学んでいると必ず学ぶ経済学者です。彼は、経済開発に潜む貧困・不平等についてを潜在能力アプローチを使って、人間が産まれながらにして持つ潜在的能力をできるだけ広げる努力をすべきだと説きました。この彼の視点は人権などの発想につながるのですが、教育・福祉など個人の基礎を固めることで結局的には国益にもつながるため目先の経済政策を中心だった国策を批判しました。

彼の思想は、UNDPの人間開発指数(HDP)の概念に大きく影響を与えました。このHDPというのは教育・保健・所得の三つから出された指数で、この指数からもGDP(経済開発)と人間開発が比例しないことがわかっています。アメリカの科学雑誌「ブレティン・アブ・ジ・アトミック・アイエンティスツ」は先日現在の終末時計を2019年の2分から20秒はやめた1分40秒と発表しました。この主な原因は、さらなる軍拡競争と気候変動への対策の遅れだとしていていよいよ環境問題から目を背けることができなくなり、私たちの生活の根幹を揺るがそうとしています。

大自然が魅力のアイスランドでの旅行がきっかけで、国として人間としてどこへ向かうべきなのか何のために働くのか開発の根幹を考えるようになりました。


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