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恋煩いの治し方ー草津温泉滞在記ー

「草津温泉に来たなら、わたの湯に入るべし」
ここで伝えたいのはこれである。詳しくは後述する。

全方位に豪勢を尽くした朝食(ブッフェ)をいただいた後、昼寝ならぬ二度寝をキメた後に向かったのは、草津温泉の代名詞「湯畑」である。硫黄の湯気が立ち込める街並みに、洋館のような宿場に白根神社。この街がドイツ人であるベルツ博士の功績により、温泉街として発展した名残のように感じた。
※宿泊所には『ベルツ博士と群馬の温泉』と題した冊子があり、さらりと目を通した。草津という街や温泉の成り立ちを深く理解するのに役立った。

湯畑をかほりを堪能した後は、茶でもしばこうということで「茶房ぐーてらいぜ」へ。300年以上の歴史を誇る「草津温泉 日新館」の風呂場として使われていた建物を店舗にしたカフェ。太い梁や湯気を抜くための天窓など、当時の名残が感じられる趣深い喫茶店とのこと。全て後で知った内容だ。山下清先生の作品、『西の河原露天風呂』が飾ってあるのが印象的だった。もちろん、ブレンドも美味。

せっかくなので西の河原露天風呂へ向かおうと思ったのだが、土砂降りの雨の気配を察して宿場に帰ることに。案の定、バスターミナルに着いた頃には結構な雨が降り始めていた。まるで湖のような広さとの噂がある西の河原露天風呂には、次の機会に訪れてみたいと思う。

私が宿泊しているホテルヴィレッジは、草津が誇る秘湯「わたの湯」に入ることができるテルメテルメという温泉施設と繋がっている。「泉質主義」の証明でもあるこの湯は、湯もみをした後の温泉に浸かることができるというものである。湯もみという作業は、高温の湯の熱を下げるために和らげるという意味を持つとのこと。日本には十五通りの入浴法があり、草津温泉はそのうち十二通りを用いているという。「わたの湯」はその中でも「時間湯」に該当し、1日に五回時間を分けて集団で3分おきに入浴するために、湯もみを行い、かぶり湯(お湯に浸かる前に何回か頭にお湯をかぶることで貧血を防ぐ)をする。私はこの作法を知らずに浸かってしまったのだが、44℃の熱さはかなりのもので、体が慣れるまでに身動きが取れずじっとしているしかなかった程だ。(5分間以上浸かってはならず、3分を目安にとのことで、砂時計が置いてあった)
しばらく浸かっていると屈強な肉体の若者が入ってきて、湯場に備えてあった神棚に向かうと一礼二拍手し、しばらく手を合わせていた。これは本物が来たと思って見ていると、その後、先述した通りかぶり湯をしてから浸かり始めたではないか。少し恥ずかしさを覚えた私は、その場を立ち去る前に神棚に一礼二拍手をしたのは言うまでも無い。

草津節が湯場の壁面に書いてあった。「草津良いとこ〜」から始まるアレである。私が気になったのは「お医者様でも草津の湯でも惚れた病は治りゃせぬ」という一節。まあ確かにとは思いつつ、次にはこう書いてあった。

「惚れた病も治せば治る 好いたお方と添や治る」

ごもっと過ぎてぐうの音も出なかった。チョイナチョイナ〜。

草津のシンボル『湯畑』

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