見出し画像

【goodな仲間 #8】Alopecia Style Project Japan

【goodな仲間 #8】 Alopecia Style Project Japan さん


今回のgoodな仲間は、Alopecia Style Project Japan (以下:ASPJ) さんです!
「髪に症状がある事をハンデにしない社会」をビジョンに掲げ、当事者とご家族の情報共有、医療機関との提携、交流の場の提供を通して、ヘアロスの方の社会との境界線を柔らかくするため様々な活動を行うASPJさんについてご紹介します。
団体の活動や、渋谷に対するご意見を、同協会で代表理事を務める土屋光子さん、アドバイザーを務める佐々木つぐみさんに伺いました!


ASPJさんについて

土屋さん:まず、Alopecia Style Project Japanはとても長いので、ASPJと略してお呼びいただけたらと思います。Alopecia(アルペシア)とは "脱毛している”という意味を指します。日本だとあまり知られていないのですが、”スキンヘッド”は英語圏ではあまり使われません。脱毛症などを総称する言葉として"アルペシア"という言葉を使っています。そして、Style Projectという名前には、"人との違いに悩む世の中でも自分はこう生きていきたいというイメージが見つかる場所"になれば良いなという思いが込められています。

(ALOPECIA STYLE PROJECT JAPAN)

 ASPJの事業は大きく分けて4つあります。1つ目は、ヘアロスの人の当事者のコミュニティの運営です。お子さんでヘアロスになっている方も沢山いらっしゃるので、親御さん同士が繋がることができるコミュニティを運営しています。オンラインだけでなく対面での交流会も実施しています。
 2つ目は、ヘアロスについて社会に知ってもらうイベントや学校での講演の実施です。
 3つ目は、毛髪疾患に関する調査、研究事業です。病院を受診せずにウィッグを利用するヘアロスの方も多く、ヘアロス人口を正確に把握できていない現状にあります。そこで、ASPJが調査をしたり、学校でヘアロスに対する認識(髪の毛がないことはストレスではない等)を広げるためのアンケートを実施しています。
 4つ目は、アートやデザイン、音楽を通してヘアロスの普及活動を行っています。

(ASPJアート写真)

ヘアロスの症状について


土屋さん:色々なヘアロスの名前があるのですが、私は抜毛症という症状です。自分の毛を抜くことが習慣化し、今はウィッグを使用するようになりました。抜毛症は小学4、5年生の女の子に多い傾向にあります。思春期により体とメンタルのコントロールが利かなくなったり、受験のプレッシャーを感じたりして、毛を抜いてしまう子がいます。抜毛症は治る人も多いのですが、何人かはそのまま繰り返し辞められなくなってしまいます。昔は自傷行為と言われていたのですが、今は抜毛症に対する認識が変わりつつあり、脳のセロトニンの分泌によるもの・強迫性障害の1種とも言われています。しかし、抜毛症が病気であるという認識は完全には広がっていません。

▶︎髪がなくなる症状について

ASPJさんの good history

⚫︎当事者コミュニティ発足

土屋さん:当事者のコミュニティには、現在約5000人登録しています。毛髪に関する悩みを、普段使っているInstagramやX(旧:Twitter)で共有したいと考える人はあまりいません。そこで2021年7月、普段利用するSNSとは紐づかない”完全にクローズなコミュニティ”を発足することにしました。そのコミュニティでは、自分の髪の毛の悩みを正直に吐き出せる場所を目指しています。そのコミュニティに関して、大々的に宣伝をしていたわけではないのですが、多くの会員数を集められたというのが衝撃であり、このようなコミュニティを求めている人が沢山いることを知ったのが最初のターニングポイントです。

▶︎ASPJコミュニティはこちら

⚫︎ヘアロス啓発イベントの実施

土屋さん  :  ヘアロス啓発イベントは今年で2年目になりますが、毎年9月に実施していこうと考えています。特に、アメリカやヨーロッパでは日本よりも大きな規模でヘアロス啓発月間が設けられています。例えば、大きな企業が協賛したり、メジャーリーグがチャリティ試合をしたりと様々なイベントが行われています。そのような風潮が日本にも広まっていくといいなと考えています。

▶︎イベントの様子はこちら

2023ヘアロス啓発イベントの様子

⚫︎教員向け「毛髪疾患サポートハンドブック」

土屋さん:今年になって、ヘアロスについて詳しくまとめた「毛髪疾患サポートハンドブック」を作成しました。実際に、学校の先生への研修で使用していただいたり、教育委員会を通じて配布していただいたりしています。他にも、大分県大分市の公約に「ヘアロスの小中学生をサポートする」という内容を入れていただきました。このように、教育機関に対してヘアロスの理解を深めるための活動を行っております。これも大きなターニングポイントだと思っています。

また、ヘアロスの方は学校でウィッグを付けるか付けないかについてとても悩んでいます。なぜなら、ウィッグを付ければそれを取っていじられたり、付けなければ容姿についていじられたりすることがあるからです。ジェンダーについての理解は広まってきていますが、“髪がない事をハゲと揶揄する風潮”を変えていきたいと思っています。

▶︎毛髪疾患サポートハンドブックはこちら

(毛髪疾患サポートハンドブック)

ASPJさんが今後目指すこと

土屋さん  : 今までは比較的当事者の人に向けた活動をメインに行っていましたが、それだけでは世の中のヘアロスに対する認知を変えられないと感じています。したがって、ヘアロスの方もそうで無い方も分け隔てなく一緒に過ごし、ウィッグの着用も自由にできるような“カフェアンドバー”を渋谷で開きたいと考えています。その先には"ハゲが笑いにならない世の中"が広がると信じています。今はまだみんな笑いのネタであり、「ストレスでハゲそうだよ」と普通に言われることがありますが、そういった状況が無くなることを目指しています。

佐々木さん  :  渋谷からジェンダーが発信されたように、渋谷からもっとお洒落にかっこよくヘアロスを発信していける町にしていきたいと考えています。例えば、渋谷から雑誌モデルを出していきたいです。若者の子が雑誌を見てメイクを真似するように、ウィッグを着用するモデルの子を通じて、「ウィッグって医療ウィッグだけじゃなくて、安価なものから医療ウィッグまで自分のサイズに合わせたものが沢山あるんだ!」とヘアロスの子が感じるような社会にしたいです。また、美容室もウィッグを切ることに抵抗がある美容師さんが多いのが現状です。今後は、美容室と提携しているウィッグが増え、購入後そのまま切ってもらえるようなサービスが当たり前にあるようにしていきたいと考えています。そして、そのために必要となる活動をしていきたいと思っています。 

ASPJさんが考える"goodなshibuya"

渋谷のgoodなところは?

土屋さん:私が埼玉県民ということもあり、学生の時も「遊びに行くなら渋谷」というイメージがずっとありました。大人になって改めて渋谷に来ても、最新の物が集まる街であり、外からのものを柔軟に受け入れてアップデートしていく雰囲気が街全体にあり、そこが渋谷の良いところだと感じています。

もっとgoodになるために…

土屋さん:現在「渋谷をつなげる30人」の8期として活動しており、そこで渋谷について聞く機会がよくあります。そこで思ったことは、渋谷には若い世代だけでなく、おじいちゃんおばあちゃん、団塊の世代が共に暮らしているということです。そして、それぞれの世代が上手く繋がることができれば、もっと面白いことが起きるのではないかなと思っています。具体的には、近年報道されているゴミ問題の解決・渋谷の文化継承に繋がっていくのではないかと感じました。「渋谷をつなげる30人」での活動として、街の課題を皆で共有し、改善策を次なる世代につなげていくということが渋谷ならできるのではないかという期待や憧れを抱いています。

また、渋谷はいろいろな人が遊びに来る街ですが、ただ遊んで帰るだけではなく、「遊ぶ街も自分の故郷の延長線」になるようなデザインができるとさらに良くなっていくのかなと漠然と感じています。

ウィッグの可能性

土屋さん:ウィッグは毛髪疾患を抱える人たちだけでなく、福祉の分野においても活躍すると考えています。例えば、寝たきりの人もウィッグをかぶることで気分を明るくすることができます。他にも、今日は出かけたいなというときにウィッグをかぶったり、お洒落のツールとしてウィッグを使ったりする世の中になれば良いなと思います。眼鏡が今そのような位置にあるのではないでしょうか。中には度が入っている人もいますが、完全にファッションの一部として眼鏡を使う人も多くいます。ウィッグも安いものだと2000円くらいから購入できるため、もっと気軽に使用するものになって欲しいです。

学生スタッフ:ウィッグは医療用と考えていましたが、最近ではアイドルの方が様々なウィッグを活用する場面をよく見かけるようになりました。

土屋さん:まだまだウィッグといえば「癌の人が必要そう」というイメージが強い傾向にあります。ですが、ピンで留めれば簡単に付けられるものがあるように、毛髪の有無に関係なく楽しめる商品が沢山あります。かつて、”安室ちゃん世代”が自分を盛るためにウィッグを使っていたような時代がまた来たら良いなと思います。

ヘアロス啓発イベント2023を開催して

ーーー2023年9月ALOPECIA STAND UP!2023」が渋谷ストリーム前にて開催されました。約800名の方が来場され、未就学児から高齢の方まで幅広い年代の方が参加されました。ヘアロスの周知と、脱毛症や抜毛症に悩む方たちのケア情報をシェアできる場所として、ヘアロスパレード、トークショー、キッズモデル・モデルランウェイが行われました。

佐々木さん:初めは私の娘にファッションショーに出てほしいとお声がけいただいたのがこのイベントに関わるようになったきっかけです。100〜130人という大規模でパレ―ドを行うという、このイベントに懸ける情熱を感じ、開催に向けて動き始めました。かつて渋谷からジェンダーが発信されたように、渋谷からヘアロスを発信していける街にしていこうと意気込み、渋谷区長である長谷部区長にもお話し、イベント開催の後押しをしていただきました。多様性のある渋谷だからこそ、世界を変えるくらい活動ができるのではないかと確信しました。

学生スタッフ:具体的にヘアロスパレードにはどのような方が参加されたのですか?

土屋さん:団体の関係者だけでなく、一般募集も行い、ヘアロスの方だけでなくご家族、友人だったりとさまざまな方がパレードに参加してくださいました。
普段ウィッグを付けて生活される方が多いため、「20年ぶりにウィッグをつけずに外に出た!」という声が上がったり、風を感じることに楽しさを覚えたり、などなど。新しい出会いの創出になったと感じています。

佐々木さん:特に小学生ぐらいの子たちは、ヘアロスの情報を自分たちで集めることができません。だからこそ、こういったイベントを通じて、自分の同年代の子たちにも似たような悩みを抱えているということを知るきっかけになれば良いなと思いました。

土屋さん:学校の中ではたった一人かもしれないけど、
佐々木さん:渋谷に来たら仲間がいっぱいいるみたいな!

土屋さん:トークショーではインフルエンサーの「カマたくさん」をお迎えしました。彼は脱毛症でもあり、さらに抜毛症の経験もあります。また、普段からウィッグを使用しています。そのような経緯を踏まえて、今回登壇していただきました。今後は、大学生や高校生が「あれなんかちょっと面白そうだよね」って言って来てもらえるようなイベントにしていきたいと考えています。将来的にはヘアロスの女の子でアイドルグループを発足したいとも考えています。 美容学生の子たちが今回参加してくれたのですが、もっと規模を拡大して、ヘアメイクさんがヘアロスの子どもをいかに変身させることができるかのコンテストも開催したいです。


(ヘアロスパレードの様子)

【お知らせ】

ヘアロス啓発イベント2024 
✳︎ボランティアスタッフ募集!✳︎
今後のHPをご確認ください!

過去のヘアロス啓発イベントの詳細
2022年
2023年

ASPJオンラインおしゃべり会
日時: 毎月第3土曜日
場所: zoom

次回は1/20(土) 21:00〜22:00
テーマ「2024年のテーマや目標を宣言しよう」

▶︎詳細はこちら

【さいごに】 

どのような髪型であるかは個人の自由であり、それを他の人に決められるはずがありません。ですが、日本は毛髪症状がある人への理解や偏見が完全に無くなっているわけではなく、それによって孤独を感じたり、傷ついたりしている方がいるのが現実です。

ASPJさんの活動は、当事者とそのご家族までを視野に入れて、自分の髪型に"自由"を感じられるような取り組みが数多く行われていました。また、取材を通し、ASPJさんの活動はさらに広がっていくだろうと確信しました。

新しい文化に対して寛容であり柔軟な心で受け入れられる渋谷ならば、今までの常識やイメージを覆すような斬新なアイデアが生まれ、ヘアロスへの認識が大きく変わっていくでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?