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アレクサンドロスがイスカンダルと呼ばれるに至った理由

 古代のマケドニア国に「アレクサンドロス」 (英語表記 Alexandros;英語読み・アレクサンダー) という名の大王が居ました。彼は良き統治者でもあったため周辺諸国の多くの訪問地にその名を残しました。エジプトの「アレクサンドリア」(英語表記 Alexandria) は、そのひとつですが、「アレクサンドロス」が拓いた地、という意味を持ちます。

 同様にしてアレクサンドロスが名を残した多数の地に「イスカンダル」(英語表記 Iskandar )又はそれに類した名前が付けられています。では、なぜそのような表記の違いが起きたのでしょうか。

 それは、その名前が最初に広まったアラビア語圏の言語が関係しています。アラビア語の定冠詞(英語のTheに該当)は、アル (Al) です。このため、「アレクサンドリア」という言葉は、「アル=イクサンドリア」という2語に誤解されるようになりました。

 この「イクサンドリア」は、時が経つにつれ発音の上で「イクサンダール」に変形していきます。しかし、「イクサンダール」は発音し難かったため子音のkとsが入れ替わり、「イスカンダール」になります。やがて冠詞の「アル」も省略されて、単に「イスカンダル」になったのです。

 さらに「イス」までも省略されて「カンダハル」と呼ばれたところもあります。今では、以下のような名前(都市名、宮殿の名、その他)は、アレクサンドロス大王の名が由来と考えられています。

アレクサンドリア(エジプトの都市)
イスケンデルン(トルコの都市)
イスカンダリヤ(イラクの都市)
カンダハル(アフガニスタンの都市)
イスカンダル(マレーシアの経済特区)

 現在では、名字としても使われているほか、架空の地名や人物名として、様々な芸術作品のなかに採り入れられています。宇宙戦艦ヤマトの目的地であるイスカンダルの名は、SF設定の豊田有恒がアレクサンドロスの別名だと語っています(『宇宙戦艦ヤマト (1) イスカンダル遥か』秋田書店)。

アレクサンドロスがイスカンダルと呼ばれるに至った理由

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