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旭川問題が民事調停に〔嘱託医問題〕No.4
SBSK自然分娩推進協会では、ご希望の方にメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ71号(2022.12.28)の配信内容です。
前回からの続編です。m3.com記事での西川学長の気になる話の続きです。
m3.com記事での発言について
2022年12月7日付けm3.com記事「旭川医大産婦人科科長ら3人に民事調停、有志が嘱託医療機関求め」では、以下の発言があったとのことです。
(旭川医大産婦人科の)科長からは、「正常な分娩はない。そもそも危険なものに責任は持てないので助産所の嘱託医は受けられない」「大学病院の産婦人科で、嘱託医を引き受けているところはない」などの趣旨の返答があったという。
→ note「旭川問題が民事調停に〔嘱託医問題〕No.2」で解説ずみ(旭川医大学長の)西川氏は、「助産所の出産は妊婦の死亡率が医療機関よりも高い一方、妊婦の満足度は高いとされているようだ」
→ 前回noteで解説
今回も「2」について解説します。
日本の母体死亡率の推移について
今回は日本の母体死亡率の推移について、日本産婦人科医会の調査報告から見えるものを紹介します。
日本産婦人科医会の調査報告から
下の図1、図2は日本の母体死亡に関する調査報告です。
2021年の日本産婦人科医会の報告書「妊産婦死亡の現状とその削減に向けた取り組み ー妊産婦死亡報告事業で集積した事例の解析結果 2010年~2020年の11年間に報告された事例」 日本産婦人科医会 医療安全部 長谷川 潤一 (聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)には、初発症状の出現場所がまとめられ(図1)、助産施設が全体平均で1%とあります。
また折れ線グラフを見ると、2020年には診療所と産科病院はほとんどなく、病院が35%、施設外が64%でした。
![図1「初発症状の出現場所」(出典:長谷川 潤一「 妊産婦死亡の現状とその削減に向けた取り組み」)](https://assets.st-note.com/img/1672352648874-BVkV2z8KmR.png?width=800)
(出典:長谷川 潤一「 妊産婦死亡の現状とその削減に向けた取り組み」)
詳細は分かりませんが、2013年と2014年に助産所からの患者さんが少数例あります。今日、助産所で急変した場合搬送しないとは考えられないので、図2の左表にある3例がその全例と判断できます。
しかしそれ以外の8年間はゼロですので、助産所の母体死亡率は全母体死亡の3/367=0.81%です。
![図2「施設間搬送例の搬送元と搬送先」(出典:長谷川 潤一「 妊産婦死亡の現状とその削減に向けた取り組み」)](https://assets.st-note.com/img/1672352739028-3vr9wocgx7.png?width=800)
(出典:長谷川 潤一「 妊産婦死亡の現状とその削減に向けた取り組み」)
当時、全分娩数のうち助産所分娩が占める割合が1%弱でしたから、やはり死亡率が高いという表現は当たりません。
さらに母体死亡は、地域での搬送体制や連携の問題などの医療環境に大きく左右されますから、ごくわずかな症例について、高い低いという判断は難しいと思われます。
しかし日本産婦人科医会の報告には、別の事実も記されています。
図1を見ると、初発症状の場所は、従来では医療施設が最も多かったのですが、11年間の変化をみると、近年明らかに低下していて2020年では総合病院での母体死亡は35%程度と変わらず、一方産科病院や診療所では急激に減り、その分施設外での発症が65%と増加しています。
これは無介助分娩の増加が原因か?と、長谷川潤一先生に直接お尋ねすると、
「詳細まで把握できていませんが、健診を受けてはいたけれど自宅などで脳梗塞や脳出血など突発的なことが起こった印象があります。特にコロナ禍で14日間の自待機中に急激に血圧が上昇して死亡した症例もありました」
ということでした。
ただし孤立無援の妊産婦が全くいなかったとは考えにくく、詳細を知りたいところです。
また一部の自宅待機妊産婦には助産師を派遣するかまたはWeb訪問のようなシステムを導するべきだと思います。
同時に図2を見ると、「施設間の搬送なし」が11年間の平均で52%、直近の2020年では82%と比率は急激に増えています。自宅での死亡などがあればそれも「搬送なし」に該当すると思われますが、これも前出の長谷川先生によると、「クリニックからの早期の搬送で死亡症例が減り、高次病院での母体死亡が増えていることを示す」図表で望ましい傾向だそうです。
次回の調査報告では無介助分娩や自宅死亡の実情も知りたいところです。
もしも367例中の1例でも無介助分娩があるのならば、詳細を把握し、その妊産婦が助産師のケアを拒まないのであれば、異常発生時に周産期システムにつなぐことができるので、その母体死亡を助けられる可能性が高まります。
しかし日本助産師会のガイドラインでは、医師にかからない妊産婦を助産所が受けることを禁じています。ガイドラインを守らないと、助産所は医療保険を解約されるため、結局上記のような妊産婦は放置されることになります。
助産師会でできないのなら、行政がそのための規則変更やシステム構築にリーダーシップを発揮して頂きたいところです。
日本産婦人科協会特別講演について
2022年12月28日 東京にて、特別講演「私たちは、全国各地の開業助産院で正常分娩を支援します」〔一般社団法人日本産婦人科協会(助産所部会)主催〕が開催されました。講演会のレポートをお届けいたします。
SBSK動画コンテンツのお知らせ
SBSK自然分娩推進協会制作の「自然なお産」についての動画コンテンツを発売いたしました。
詳しくは下記noteをご覧ください。
![](https://assets.st-note.com/img/1672352913315-skvUumc89D.jpg?width=800)
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