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旭川問題が民事調停に〔嘱託医問題〕No.5

SBSK自然分娩推進協会では、ご希望の方にメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ72号(2023.01.04)の配信内容です。

年末の日本産婦人科協会の講演レポート

皆さん、明けましておめでとうございます。
昨年はお産に関するお母さんたちのシンポジウムがいくつか開かれ、私(荒堀)も微力ながら協力させて頂きました。
今年もそのようなWaveがさらに大きくなるよう期待しています。

そして昨年末には、旭川の助産所閉院の問題が調停の場で議論されるという展開になりました。

さて、2022.12.28に開催された特別講演「私たちは、全国各地の開業助産院で正常分娩を支援します」〔一般社団法人日本産婦人科協会(助産所部会)主催〕について、講演会の様子をSBSKの市川きみえ氏にレポートをお願いしました。市川氏はフロアからの指定発言もされました。


■特別講演会【参加報告】(市川きみえ)

特別講演会:
「私たちは、全国各地の開業助産院で正常分娩を支援します」一般社団法人日本産婦人科協会(助産所部会)

 2023年1月3日
助産師 市川きみえ

令和3年、旭川市の「助産院あゆる」は、嘱託医療機関の閉院により分娩の取り扱いができない状況となりました。
それから1年以上もの間、支援住民グループ「助産院に産声を!応援会旭川」や北海道助産師会の支援を受け、旭川市、北海道庁、産婦人科医会、大学病院など関係者に嘱託医療機関受託の調整を求めてきましたが、どこにも引き受けてもらうことができずに今日に至っております。

そこで、「助産院あゆる」院長北田恵美氏と「助産院に産声を!応援会旭川」の共同代表2名は、旭川医科大学病院産婦人科部長と、地元の産婦人科医会会長、旭川市副市長の3者を相手方として、令和4年12月6日に旭川簡易裁判所に民事調停を申し立てました。

 今回の講演会は、全国各地で同様の問題が起こっていることをふまえ、日本産婦人科協会が、旭川の事例を契機に、全国の助産所での正常分娩の維持・継続を支援すべく行われました。

(注)「日本産婦人科協会」と「日本産婦人科医会」は異なる団体。

私自身は、旭川市の東隣の上川郡東川町で2015年に助産院を開業しました。
しかし、この嘱託医・嘱託医療機関の受託契約のハードルが高く、分娩を扱える目処が立たず、2年後の2017年に閉院した経験があります。
当時出会った助産師は、後に開業したのも束の間この状況になってしまいました。それでも彼女は辛抱強く、分娩再開の時が来るのを信じて待っております。
他人事ではない私は、1日も早い解決を願い参加させていただきました。

講演会の内容を簡単にご説明いたします。

【北田氏より】経過の詳細と民事調停について

まず、北田氏により、「助産所分娩の再開の為に、嘱託医療機関受託を求めて、旭川副市長1名、産科医に対して民事調停を申し立てました」と題し、これまでの経過の詳細と、なぜ民事調停を行うことにしたのかについてのお話がありました。
北田氏から、旭川から助産所を絶やすことなく後輩に受け渡すことができる状況を作りたいという、強い思いが伝わってきました。

【井上弁護士より】助産所の嘱託医療機関には、負担もリスクも責任も生じない

次に、弁護士の井上清成氏が「助産所の嘱託医療機関には、負担もリスクも責任も生じません。産科医の皆さん、誤解しています」と題しお話しされました。

まず、「厚労省通達と日本産婦人科医会医療対策部との齟齬」を指摘されました。
これは、厚労省医政局総務課・地域医療計画課・看護課による事務連絡「助産所、嘱託医師等並びに地域の病院及び診療所の間における連携について(再通知)」(令和4年6月6日)の中で、「嘱託を受けたことのみをもって、嘱託医師等が新たな義務を負うことはない」と、「嘱託」には「義務」も「負担」も「リスク」も「責任」も生じないことが明記されているが、
日本産婦人科医会医療対策部では「助産所との嘱託医契約について」(平成18年12月)にて、
産婦人科医にとっては負担を強いられるので全面拒否の姿勢を示したいが、会が強制するのもでもなく、会員の医師が、各自で判断し対応すれば良い
という趣旨の内容が示されている点についてです。

そして、「日本産婦人科協会(助産師部会)の考え方」としては、

  • 「嘱託」には「応召義務」があるわけではなく、当然「損害結果回避義務(過失)」が生じるわけでもないこと

  • また、助産院の嘱託医になったことで、裁判で訴えられる可能性があるとの懸念から嘱託医になるのを嫌がる医師が多いと思われるものの、妊婦は定期的に嘱託医の妊婦健診を受けリスクがある場合には病院に紹介すること

  • 助産院も医療賠償責任保険に加入していることなどから、それが杞憂である
    との考えについて説明されました。

【堀内氏より】助産所での正常分娩を支援

引き続き、日本産婦人科協会から、副会長 堀内貞夫氏(元愛育病院院長)により、「助産所での正常分娩を支援します。分娩全てが異常分娩だという産科医の意見があることのことですが、それは妥当ではありません」として、長年産科医をされてきた堀内氏にとっては、
分娩全てが異常分娩だという産科医が存在すること自体が信じられない
という口調で話されました。

【池下氏より】助産所の嘱託医療機関としての経験

そして事務局長 池下久弥氏より、「助産所の嘱託医療機関としての経験」として、数多くのを助産院の嘱託医療機関を担ってきたが、特に問題はない事等について、お話しいただきました。

【特別ゲスト・参加者からの発言】

最後に、会場から特別ゲストの発言に加え、開業助産師、産科医、お母さんたちから意見・感想として次々と支援の声が挙がりました。現在の産科医療のあり方を「産科暴力」という言葉で表現する女性医師の発言もありました。
なお、市川は特別ゲストとして「北海道の出産環境と無介助分娩の実情」についてデータを基にお話し、安心・安全なお産には助産所の復興が急務であることを訴えました。

最後に

私事ですが、昨年長男夫婦に第1子が誕生しました。この孫が生まれたのは、長男が生まれた助産院(代替り後です)です。ここは、二女とこの長男が生まれた助産院で、私にとっては当時の院長を通して助産観が覆された、助産師人生の分岐点にもなった重要な場所でもあり、最高の喜びの出来事でした。
「助産院あゆる」も、きっと旭川市や周辺の町村の住民にとって人生の分岐点となるようなお産の場であったと思います。
ここが、同様にいのちの誕生を引き継ぐ場として継承されるとともに、北田氏と一緒に友人の助産師が活躍できる日が1日も早く戻ることを切に願います。

(以上 市川氏より報告)


医療ガバナンス学会メールマガジンにも掲載

調停申立人弁護士であり、SBSKメンバーでもある井上清成氏からの記事もご紹介いたします。

『助産所の嘱託医療機関には負担もリスクも責任も生じないし分娩はすべて異常分娩でもない』MRIC by 医療ガバナンス学会 (2023年1月6日 06:00)


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