出産の医療保険化について ⑨

2023年8月9日 08:57

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二（産婦人科医師）よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ98号（2023.07.14）の配信内容の続きです。
↓前回の内容はこちら↓

議員連盟の働き

出産の医療保険化のような新たな法律を作る場合、議員連盟（議連）が重要な働きをする場合があります。

もっとも議員連盟の総数は329もあり、中には「ワイン愛好議員連盟」など、同好会と見紛うようなものもあります。が、それはさておき、産婦人科医療にかかわる自民党の議員による議連は以下のようなものです。

「地域で安心して分娩ができる医療施設の存続を目指す議員連盟」
（会長　竹見敬三）
「成育基本法推進議員連盟」
（会長　川村武夫　事務局長自見はな子）
「出産費用等の負担軽減を進める議員連盟」
（会長　小渕優子）
「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」（会長　野田聖子）
「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」（会長不明）

議連は政策提言や法案の推進などを目的として、議員が自由に結成できる団体で、活動が広がれば議員立法として法律を成立させることが可能です。
例えば「成育基本法」は自見はな子さんたちが中心となり、自民党の議連から出発し、やがて超党派の「成育基本法推進議員連盟」に発展し成立した議員立法です。このように議連の動きは政府や省庁の動き以上に、大きな影響があることがあります。

出産費用等の負担軽減を進める議員連盟

そこで6/19に開かれた「出産費用等の負担軽減を進める議員連盟」の第８回会合について、今一度説明します。
この議連には、会長の小渕優子さんや元厚労省官僚の国光あやの議員（副事務局長）もその中心的なメンバーとして参画しており、出産費用の保険化には大きな影響がある議連です。

出席を求められた人が、日本産婦人科医会の石渡会長や、出産ケア政策会議の古宇田氏や井上清成弁護士ですから、この議連の狙いが垣間見える気がします。前号で述べた様に「やみくもな反対論はかえって社会的なリスクを増す」ことを匂わす雰囲気だったのかもしれません。

会合の内容は6/19日の付のMedifaxという業界紙にも掲載されています。
また出産ケア政策会議のホームページにも掲載されています。

助産所での出産も保険適用へ

この会合に参加した「出産ケア政策会議」の古宇田千恵共同代表が、「保険適応の検討対象が明確でないため現場の助産師らから不安の声が上がっている」との懸念を表しました。
これに対して厚生労働省保健局の原田朋弘保険課長は、出産育児一時金の対象になっている助産所での出産について、「今後の保険適用の検討対象から排除していない」、との認識を示しました。

この「排除していない」は消極的な発言のように聞こえたかもしれませんが、業界用語としてもっと積極的な内容を含んでいます。
即ち、「助産所を保険適用の検討対象から排除していない」
→「助産所も保険適用の検討対象である」
→「助産所も保険適用とする前提である」
という極めて肯定的な発言と受け取ることができます。

また原田課長は、「保険適用の検討は、一時金による給付から医療機関の公定価格の中でやっていく現物給付にどう改めていくのかという議論」だとしました。

つまり妊婦健診の受診券や出産一時金のような現金の給付ではなく、健診や分娩という現物を給付するための議論をするということです。医療一般に行われる検査や投薬、手術などは全て現物給付であり、このシステムに合わせるということです。
助産所もこれまで現金給付で健診や分娩を扱ってきましたが、それを現物給付に改めるのだから、保険の検討対象になるのは当然と言えば当然の話です。

となると、産婦人科医会と同様に助産所もお産が保険化された制度を前提に、自然なお産を未来に残していくための持続可能な制度に向けて、有利な条件を引き出す必要があります。

ちょっと余談ですが・・・

持続可能と言えばよく耳にするのがSDGsです。2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが教えてくれたものに、日本人の「もったいない精神」がありました。エス・ディー・ジーズと叫ぶより、古来大切にしてきた「もったいない」精神に立ち返る方が、日本人らしい自然体で環境保全に立ち向かえる気がしますがいかがでしょう。

古来大切にしてきて、それを伝承する人たちがまだまだ存在するにも拘らず、その価値を忘れ、自然なお産を捨てることになれば、何にもまして「もったいない」ことだと思います。

で次回は持続可能な条件あるいは存続可能な条件について、保険点数表を元に検討します。

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