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誰のためのものでもない日記

こんな暑いのに何故か風呂を沸かして熱々の湯船に浸かった。
音楽を聴きながら、揺れる湯船を眺めて「俺のAir Podsどこいったんだろう」と定期的に行方不明になるあの子のことを考えた。

ボサボサのまま更新した免許証と
翌日、美容室で足元に散らばる自分だったもの。
なんか禊みてぇだなと思いながら時計を見ると18時をさしている。
どうしても食いたいうどんがある。調べると18時半で終了だ。

高々と腕をあげ、タクシーを止める。
近いけどごめん、隣駅まで!と勢いよく指示を出し、メーターが動き出す。
18:25。ギリギリの滑り込みで最後の客。350円てんぷらうどん。
懐かしい味に真夏日だというのに汗ダラダラと最後の汁一滴まで飲み干す。
思わず「うまかったぁ」と言葉が漏れて、じじとばばがありがとうと返してくれる。

350円のために680円払ってタクシー移動したことにあとで気づいた。
約2杯分。側からみたらバカらしいだろう。しかし、その価値のある味なのだ。俺だけがわかればいい。そんな土曜日。

世界は誰のためのものなのか。
ニュースを見てると混乱してくる最近だ。しずかにチャンネルを変えるようにアプリを閉じる。そもそも人間のためのものじゃなかったのかもな。僕らはうまくこの世界を使えなかったってことを証明しているみたいだ。

さらに遡った金曜日。事務所でピザを頼みたった3切れでお腹が満たされる。もういい歳なのを忘れていた。誰かが事務所の光をもう少し落とそうと言い出してほぼ暗闇の中で音楽を聴いた。寝転がり、酒を飲み、時々話す。いい夜だ。何回も言葉に出た。夜に揺蕩うような時間。今日の湯船もそんな感じだ。

あれは誰のものでもない時間だった。そのような瞬間をもっとたくさん過ごすべきだろう。誰のためでもなく、自分のためでもなく、ただそこに流れてる時間のような揺れる湯船のように。

この世界は、だれのためのものでもない。
ただそこに流れてるだけの時間なんだ。
事務所の暗闇で、風呂場の暗闇で、寝室の暗闇で
誰の視線もわからぬほどの闇の中で、ただ移ろうだけの自分を感じて少しだけ光を感じた週末。

無論。この日記も誰のためのものでもない。
ただそこにあっただけのことを淡々と記憶したテキスト。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。