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氷と炎の歌読書会 特別企画(アーサーデインになりたかったのに)

ゲームオブスローンズの原作、ジョージ RR マーティン著の『氷と炎の歌』シリーズ読書会に参加しています。 

今日、4月の読書会がありました。
いつもの課題のほかに、それぞれが1巻から5巻までの中で自分の好きな章を選んで、その章がいかに素晴らしいかを語る、という企画。

これが…最高に楽しかったーーっ!!

みんな選んでいる章が「ですよねー!笑」と思う、その人の大好き世界がさく裂した(メンバーはそれぞれ好きなキャラ、地域なんかが違ってちょうどよくばらけているところも良い)渾身の一章。読みこんでいる人たちが語る、推しのすばらしさ、愛がぎゅーっと詰まったアツい解説、おもしろくないわけがない!

そうだったのか!そんなことも!と気が付かなかったことがいくらでも出てくる、とにかく楽しい紹介タイムでした。
今日聞いた章、読み直すの待ちきれないな。

私ですが、大方の予想通り、四巻『乱鴉の饗宴』38. ジェイミー⑥にしました。単身リヴァーランに乗り込んでって、ブラックフィッシュと交渉する回でございます。

なぜジェイミー6なのか?
ジェイミー章は一貫して「名誉ある誠実な騎士」としての自分を取り戻したい、という渇望がテーマ。
それに対してブラックフィッシュは、「王殺し キングスレイヤー」として軽蔑していることを隠そうともしない。

ブラックフィッシュはいわばネッドであり、キャットであり、北部、そして北の王を支持するであるリヴァーランドの諸侯などの、いわゆるスターク的価値観の象徴。

そこに自分を認めさせようと挑み、やはりかなわず、そんな中で自分との約束は守りつつラニスター家のために健闘するジェイミー。

しかしタイウィン亡き後、諸侯はバラバラになってきておりラニスター帝国の滅亡の足音が聞こえる。そして正しい行いをしたいと求める心があだとなり、破滅を引き起こしていくのだが、その予感をひしひしと感じさせる章でもある。

内容
リヴァーランでの単独会見にあたり、ブラックフィッシュは武装している。ジェイミーとラニスター軍をまったく信用していないし、そもそも話し合ってなんらかの落とし所を見つけようという気は毛頭ない。

もっと他の人、たとえばガーラン・タイレルあたりだったら、そんな気持ちをおさえて実利を取ったでしょうに。城攻めをしばらく持ちこたえられる自信はあるが、孤軍であることも事実。タリー家のためを思って交渉したほうがいいのに、そんな気はこれっぽっちもないところが、さすが頑固者ブラックフィッシュ。

誠実で誇り高く、頑固に自分道を進む、融通はきかない。そういう所はスターク家に通じるところがあって、結婚で結ばれた同盟だけど同じ価値観を共有してたんだな、と改めて思う。

ジェイミーの方は剣も持たないで行ったのに…!!
謙虚な姿を示しても、もちろんこれっぽっちも伝わらないし、それどころかおそらく味方も「サー・ジェイミーそういう策略か~!」と思っていて、本気で誓いを守ろうと思っているとはだれも信じない。

ブラックフィッシュは、ジェイミーが従士をしていた少年時代、リヴァーランに呼ばれてライサとお見合いしたとき、ナインペニーキングスの戦いの話をしてくれた、いわば憧れの騎士。
本来なら認められたい、立派な騎士になりましたね、と言われたいところだが、当然ながら最低の、フレイ家と同類くらいに思われているのがなんとも切ない。

どこに行っても名誉のかけらもない、いくらでも簡単に魂を売り渡すクズ扱いされるジェイミー。

ウエスタリング一家とエドミュアを交換しましょうよ、と持ちかけても
「若き未亡人には赦免状が出ている。危害はいっさい加えぬ。名誉にかけて誓おう」
「名誉にかけてだと?」
サー・ブリンデンは片眉を吊りあげた。
「貴様、そもそも“〝名誉”〟とはなにか知っておるのか?」

まったく相手にされず。

「ぬけぬけとよくいいおるわ、“〝王殺し”〟めが。
誓いを破る者と取引するなど、流砂の上に楼閣を建てるがごとし。貴様のような手合いなど、姪も信用すべきではなかったのだ」

“キャトリンが信用したのはティリオンだ”〟と、もうすこしでいいそうになった。“
“そして、〈小鬼 インプ〉もまたキャトリンを裏切ったではないか”〟とも。
 
ラニスターは信用できない、というならまだあきらめもつくが、ティリオンは多少信用されていた、という事実も傷つく。

でもとにかくぐっと堪えるのは、キャットとの誓いを守るため。
というよりも、立派な騎士になりたかった、なるはずだった少年の日の自分を取り戻すため。
ずっと邪険に扱ってきた内なる自分へのつぐない。

本当はサーアーサーデインみたいな伝説の騎士になりたかった、なるはずだったのに、狂王殺しのせいで七王国いち卑劣な男、と見られている。

それで世間の軽蔑の目を、リヴァーランで捕虜になるまでは、皮肉な物言いをしたり、オラオラな態度でやり過ごしてきたんだけど、ある意味毒である家族から離れて、そういう自分と向き合わざるをえなかくなった。

しかしブラックフィッシュとの会見は失敗に終わり、あぁ…やっぱりタリー家に剣を向けなければいけない、と憂鬱になる。
どうせ誰も本気だと信じていない、自分のことをクズだと思ってるんだし、だれが気にするだろうか?という自嘲的な気分と、ずっと取り戻そうと躍起になっていた名誉ある人物への道がこれで断たれてしまった、しょせん自分は死ぬまでキングスレイヤー、誓約破り、名誉なき男、なのさ、という苦々しいあきらめ。

軍議も、体育会系でやっちまえー!とノリノリの西部諸侯、自分たちの家の中でも争っているフレイ家、心の底からフレイ家とラニスターを憎んでいるのに、今は従わざるをえないリヴァーランドの諸侯。

この後フレイ家の人たちはストーンハートに次々と殺されていき、リヴァーランドの諸侯はもしかしてジェイミー失踪後はこっそりブラックフィッシュを手助けしたり、レジスタンスしているの!?

ライマンフレイにいらいらするが、こんな間抜けな奴らを率いないといけないこと、そして相手は自分も同じアホアホだと思っているだろう、ということもイラつかせる。

だからこの後、四巻の最後の章でレイブンツリーホールに行った時も、ブラックウッド公の名誉を尊重する。過剰なほどに。
跪いたことにして、実際は言葉だけでいいことにしたり、最愛の娘を人質にとるのが有効、と知っていても息子で勘弁してあげたり。

そも昔サー・アーサー・デインは、逆賊スマイリング・ナイト(微笑みの騎士?)と戦ったときも、相手の剣が何度も刃こぼれするから、そのたびに剣を交換するのを待っててあげて、終わってからまた戦いを再開したという、なんか、騎士道!ってかんじの話ですが、そういう騎士になりたいんですな。
が、感情で動いてるから失敗する。

ここで無血開城にこだわってブラックフィッシュを逃したことが、多分のちのち転落へとつながっていくんだけど、今改めて読むともう、あぁ、なんということでしょう!!と思うことの連続。

毎回耳元で、いやいやいや、あなたそれダメだから!こだわってる場合じゃないよ、とつぶやきたくなる。
それと同時に、こうやってあがく姿がジェイミー章の醍醐味なので、まあ、6巻もぜひがんばってなんとかストーンハートを成仏させてあげていただきたい。

今回の結論:
・・・生きて!!



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