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『ブラック・レイン』をみた

「マサ、ニューヨークは巨大なグレーゾーンだ!」

というわけで、NHKBSで放送していたので『ブラック・レイン』を何十年かぶりにみた。

つらつら感想を書きたい。

高校生の頃、TVで再放送していた『探偵物語』をみて、松田優作の大ファンになった。(映画版の、薬師丸ひろ子との謎に長尺のキスシーンのある『探偵物語』ではない)

遺作の『ブラックレイン』(1989年、平成元年)の公開とともに亡くなり、連日ワイドショーで追悼されていたのは、小学生頃だったが、記憶に残っている。昭和の終わりの一コマだった。


高校生の頃優作ファンだったので、松田優作主演の映画など、片っ端からみた。必ずしも、松田優作は、いい作品に恵まれたいるとは思わないが、もちろん、その頃、テレビで放映した『ブラックレイン』もみたし、演技のインパクトでいえば、これが最高傑作だと思う。『家族ゲーム』『陽炎座』も好きだが。

しかし、今回は、松田優作目当てではない。高倉健である。


私も、もう松田優作の享年を越えてしまった。

正直、松田優作にあまり興味がなくなった。

目当ては健さんである。


最近は、もっぱら高倉健の映画が好きで、健さんの演技が大好物になった。

『ブラックレイン』も、高倉健とマイケル・ダグラスのバディものである。

マイケル・ダグラスとの初対面のシーンでで、おでこメガネで、出前のざるそば食ってる健さん。


いつもの健さんである。


高倉健が、高倉健テイストのまま、鉄道員(ぽっぽや)のまま、どこくらいマイケルダグラスとタイマン張れるのか、固唾を呑んで見守った。

結論としては、狂言回しに徹しており、健さん、目立っていなかった。

健さん目立たせる構成にもなっていない。

健さんのどアップシーンが、ほとんどなかった。


健さん主演の映画なら、健さんの三白眼を、これでもかと推してくるのだが、この映画では、終始引き気味であった。


健さんの役どころは、ウルトラマン=マイケル・ダグラスと怪獣=松田優作が戦うのを、見守っている科学特捜隊隊長みたいなものだ。


松田優作が、高倉健を喰ったと言われていたような気がするが、健さんが主張低音で効いている映画であった。

高倉健とマイケル・ダグラスと松田優作とアンディ・ガルシアと若山富三郎と内田裕也をストーリーの中に押し込めるというのは、至難の技である。

健さんが、触媒となって、まとめたのである。


健さん、英語もうまかった。

若山富三郎がいきなり英語でしゃべるシーンは、謎であった。


若山富三郎演じる菅井親分が、アメリカ人のマイケル・ダグラスに『ブラック・レイン=黒い雨』が降って、佐藤みたいな、仁義のない日本人だらけになったと説教した挙句、「殺したろかこのガキ」と凄むシーンは、今だったら撮れない気がした。

アメリカに追いつき追い越せのイケイケだったバブリーな演出である。


松田優作と内田裕也と國村隼が製鉄所で、銃撃戦を行うシーン。あれ國村隼のアクションだったのか、とわかると、若松富三郎の子分が、パチパチパンチの島木譲二であったのと同じくらい、胸熱であった。

スピルバーグの妻であるケイト・キャンプショーがホステス役で、マイケルダグラスをサポート。どうみても、あのホステスは、デヴィット・ボウイに寄せている。

冒頭のニューヨークでの賭けバイクシーンが、ラストのマイケル・ダグラスと松田優作のバイクシーンの筋フリになっている。


製鉄工場に自転車とデコトラが行き交うシーン。鳥居のある建物に、仏壇みたいなものがある、親分の会合シーン。葡萄畑で働く、正体不明の農民。突っ込みどころ満載だが、仕方がない。


(おわり)






お志有難うございます。