読書日記(2023.9.20)二つの同時代史

『二つの同時代史』 大岡昇平 埴谷雄高  岩波現代文庫

昨日久々にブックオフに行ったら売っていたので落掌。

大岡昇平と埴谷雄高の『世界』誌上での連続対談。

小林秀雄と中原中也と長谷川泰子の三角関係を間近で立ち会って観察してきた大岡昇平の生々しい話がたくさん書いてあった。

大岡昇平が小林秀雄に出会ったのは、フランス語の家庭教師として小林秀雄を雇ったからだった。

大岡 小林は来て十円だから少し安いわけだ。そのうちフランス語より小林に聞く文学の話に凝っちゃって、月に二度になった。小林は一時間、ボードレールの『パリの憂鬱』を教えてくれ、その後一時間は文学の話をしてくれた。彼の愛人(長谷川泰子=小林佐規子)はヒステリーだから、なるべくなら家におそくまで帰りたくねえんだよ(笑)。だからおれの家でぐずぐずしていた。

埴谷 長谷川泰子から逃げてきていたんだね。

大岡 逃げ出し来るんだからなるべく遅くまでいるんだよ。丁寧に教えてくれたし、フランス語の後の時間はいろんな話をしてくれたよ、そのうち、月に二度になる。一度は家に来てもらって、一度は向こうに行くという具合に。そこで中原(中也)に会うわけ。そのうち教えに出向いてくる小林と一緒に中原とお佐規(長谷川泰子)がついてくるんだよ(笑)。もうめちゃめちゃだよ(笑)。

埴谷 二人がついてきちゃまずいね、それは。

大岡 フランス語の一時間のあと、前は文学を教えてもらったけど、今度は一緒に百軒店へ飲みに行く。おれはそれまで持っていた本を全部売り飛ばしちゃった、飲み代をつくるために。一冊もなくなって、ランボーとボードレールとフランス語の字引きだけになっちゃったがことがあったよ。

『二つの同時代史』 P.115〜116

(おわり)

お志有難うございます。