太宰治 『風の便り』
作家志望の30代後半の男に、短編集を寄贈されて、ある作家が、ハガキで簡単に礼を述べたら、結構めんどくさい手紙が来て、今度は親切に返事を書いてみたら、以下の返事が来た、という筋である。
『怒ってください。けれども絶交しないでください。』
いいフレーズだと思った。マニピュレーターの資質がある。
『私は、世界中で、あなた一人を信頼しています。』
太宰は、こういう屁のように軽い言葉を書かせると抜群の才能だと思う。
共依存に陥れようと必死な手紙に、創作とはいえどすごいこと書くなあと思ったが、読者を共依存状態に陥れようとする罠でもあるので、剣呑である。(小並感)
相手の時間を浪費させようとするサイコパスの常套手段である。
(終わり)