マーケティングとは
僕は現在、広告デザイン専門学校(http://www.kdps.ac.jp/)で講師を務めています。担当する科目の1つがマーケティングです。近年、デザインを教える大学などでもマーケティングなどの科目を重視するようになっています。
マーケティングの重要性は様々な場で説かれていますが、その内容にはかなりの開きがあり、そもそもマーケティングの捉え方自体が様々です。多くの場で、マーケティングは販売もしくは販売努力のように捉えられています。広告・マスコミの世界では、マーケティングは主にプロモーションと捉えられているようです。それではマーケティングとは一体何でしょう。
マーケティングには様々な解釈がありますが、一般的に大学の講義ではは以下の定義を説明ます。
「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値ある提供物を創造・伝達・配達交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」
(注)2007年AMA(American Marketing Association:全米マーケティング協会)慶應義塾大学高橋郁夫訳
ちなみにこの定義は1940年、1960年、1985年、2004年、2007年にそれぞれ改定されています。特に2007年の定義は、2004年から3年という短い期間で改定されたことで注目を集めました。
他にも日本マーケティング協会や様々な研究者による定義があります。
現代マーケティングの第一人者と呼ばれるフィリップ・コトラーは著書である『マーケティング・コンセプト』(フィリップ・コトラー,東洋経済新報社,2003)の中で、「マーケティングとは、充足されていないニーズや欲求を突き止め、その重要性と潜在的な収益性を明確化・評価し、組織が最も貢献できる標的市場を選択したうえで、当該市場に最適な製品、サービス、プログラムを決定し、組織の全成員に顧客志向、顧客奉仕の姿勢を求めるビジネス上の機能である」と記しています。
僕が大学院生の頃ご指導いただいた先生は「社会の無限に連なる連鎖の、欠けたピースを探して繋ぐ行為」と仰いました。
どの定義も大変難しいですが、一つ言えることは、「販売」や「プロモーション」と言う言葉は出てきません。なぜなら販売もプロモーションもマーケティングの中の1つの機能に過ぎないからです。
とは言えどの定義もとても包括的で、しかも抽象的ですから、容易に理解することは困難です。そのため僕も講義では、マーケティングの定義と考え方を最初に説明しています。
余談ですが、実はこの定義を説明するにあたり、高校デザイン専門学校で教鞭を執ったことは、僕にとってとても勉強になりました。
大学は入試がありますから、そのレベル以下の質問をするようであれば(実際にはしませんが)突っぱねてしまっても構いません。2年生の科目で、稚拙な質問であれば(ちゃんと答えますが)「君は1年生の科目をちゃんと勉強したのか」と叱ることもできます。しかし広告デザイン専門学校は経営学部ではありませんから、この理屈は通用しません。僕自身、どのように説明するか、あらためて考える良い機会となりました。
話は逸れましたが、講義ではマーケティングの定義を一つ一つの言葉に分けて説明します。そのうえで、僕は以下のように伝えています。
「誰をどんな笑顔にしたいのか、そのために何ができるのかを考えること。そしてその考えを謙虚に実行すること。」
僕はまだまだ未熟で勉強中なので、先生方のようにマーケティングを定義づけるまでには至っていないのですが、この説明は我ながら気に入っています。
最後に、、、
前述の『マーケティング・コンセプト』でコトラーは最初にこう記しています。
顧客ニーズを満たし、
顧客と社会をより幸福にしたいという情熱をもって
ビジネスとマーケティングに取り組んできた
全ての人びとに捧げる
マーケティングとは人と社会の幸福を実現する行為と捉えて頂ければ嬉しいです。
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