新訳版の『引き寄せの法則』(赤本)は、どうアレンジされたのか?
このたび、『引き寄せの法則 エイブラハムの教え』の新訳を15年ぶりに出版できることに、深い喜びを感じています。エイブラハムとは、エスター・ヒックスというアメリカ人の女性がつながることができる集合意識です。スピリチュアルなことが初めての人は、少し「???」となるかもしれませんが、内容はとても的を射ていて、納得がいくことが多いと思います。
この本は、シリーズで何十万部も売れたベストセラーで、引き寄せ界隈の人たちには、バイブルのように読まれていると聞いています。通称赤本(あかほん)というそうで、シリーズの中でも、いちばんパワフルな本だと見なされているとのことです。
それを新しく翻訳するのだから、ドキドキです。自分の本に関しては、批判をあまり受けてきませんでしたが、エイブラハムファンの人には、今までの本のイメージもあるし、お叱りを受けるかもなぁと、重い気分もありました。
結局、この本の翻訳には、自分の本を書く3倍の労力がかかりましたが、やりがいのあるプロジェクトになりました。
この本を最高のものにするために、エイブラハムの英語の膨大なプログラムを聴き込んだり、英語のニュアンスを的確な日本語にするために、たくさんの人に相談しました。
時には、1つの単語を巡って、アメリカ人のスタッフ、編集者とともに何時間もディスカッションしました。途中、苦労もありましたが、最終的に、素晴らしいものに仕上がったと思います。
「ですます」調で親しみやすく
今回の翻訳でいくつかお伝えしたいことがあります。本書をお読みいただくエイブラハムファンの方にとっては、エイブラハムの話の雰囲気や内容がまったく違って感じられると思います。
英語のエイブラハムは、とても気さくでお茶目で、誰にでも対等な感じで接してくれます。英語が理解できる方は、YouTubeで見ていただけるとわかりますが、すごく親しみやすいキャラクターだといえるでしょう。でも、日本語では、翻訳のスタイルが、「である」調だったために、少し上から目線の印象があったと思います。ちょっと説教好きな昭和のおじさんのイメージでしょうか(笑)。
今回の翻訳の方針でいちばん大きいのは、英語で話すエイブラハムの楽しい感じを伝えるために、思い切って、「ですます」調にしたことです。重々しく語るエイブラハムが好きな方には、お叱りを受けるかもしれませんが、友人が親しく話すような口調にしました。ですから、以前の本とは、全然違うテイストになったと思います。
チャネリングの世界では、もともとの意識は同じでも、チャネリングする人の性格などによって、内容や雰囲気が大きく違うそうですが、翻訳にもそういうところがあります。好き嫌いがあるかもしれませんが、今までと違うバージョンのエイブラハムを楽しんでいただけたらと思います。
英単語のひとつひとつのニュアンスを大切に
いくつか本書で出てくる用語についても、お話ししておきましょう。
まず、「Allow」という言葉です。わたしは、この言葉を「ありのまま受け入れる」と翻訳しました。「Allow」には、「そのままゆるす」というニュアンスがあります。
「あるがままゆるす」という訳語も考えましたが、日本語の「ゆるす」には、「許す」と「赦す」があり、誤解を与えかねません。この「Allow」という言葉には、「そのままにする」「受け取る」「受け入れる」という意味があります。「許可を与える」という意味もあり、日本語でひと言にはなかなかしにくい言葉です。
以前の翻訳では、「許可して、可能にする」と訳されていました。確かに、「Allow」の中には、その要素があると思います。ですが、わたしの感覚では、それだと少し積極的すぎて、本来の「Allow」の意味が伝わりにくくなると判断しました。「やってくることを許可して、可能にする」よりも、ただやってくるものを「そのままを受け取る、受け入れる」という言葉に変えたほうがしっくりくると感じました。
エイブラハムの他の講演やセミナープログラムを相当聴いていますが、「Allow」は、「引き寄せられてきたものをただ受け取る」という感覚だと判断しました。そこで、訳語は、「ありのまま受け入れる」としました。本書でいくつか、「Allow」を「ゆるす」「受け取る」という言葉にもしましたが、基本は「ありのまま受け入れる」という訳語を採用しました。
引き寄せというと、積極的につかんでいくイメージがあるかもしれませんが、エイブラハムの引き寄せは、そうではないようです。自分の欲しいものがやってくるのを「そのまま受け取る」というニュアンスがあると思います。
別の視点から言えば、努力してがんばらないとも言えます。このあたりは、わたしのYouTubeその他でしっかり解説しているので、興味があったら見てください。
また、「Segment」という言葉に関しても、編集者、通訳者などと、いろいろディスカッションしました。これは、以前の翻訳では、「節目」という言葉を使われていましたが、わたしは、場面という言葉のほうが、ふさわしいと考えました。節目とは、人生の節目という使い方がされるように、大きな出来事を指します。車に乗り込んだり、人と出会うときは、節目よりも場面のほうが理解しやすいと判断しました。
それ以外にも、わたしの語感で読みやすくなるように、元のわかりにくい英語を理解しやすくしていきました。本書は、超訳バージョンではないので、あくまで原文に忠実に翻訳していますが、ところどころ、読みやすくアレンジを加えたことを、おことわりしておきます。
エイブラハムのメッセージが、あなたにダイレクトに響くことを願っています。