むち打ちを診る上で必要な知識②骨、関節
頚椎
頚肩腕部痛に対して超音波ガイド下インターベンションを行う際には、頚椎の解剖およびその超音波解剖を理解することは必須の条件となる。
椎骨の基本形態は、前方の椎体と後方の椎弓および4種、7個の突起から形成される。椎体と椎弓から椎孔が形成され、これが連なって脊柱管をなす。突起は、後方に突出する棘突起、側方は横突起、頭尾側への突起が上・下関節突起と呼ばれる。
頸椎の特徴としては椎骨動脈を通る横突孔があること、棘突起先端が2分しているや椎間jtの関節面が水平面に対して傾斜していることが挙げられる。またC1は椎体と棘突起がなく、前弓・後弓・そして外側に位置する外側塊からなる環状の構造をしており環椎とも呼ばれることも大きな特徴であり、頚椎における回旋運動の多くをこのC1/2の環軸jtで行っている。
棘突起・椎弓
C7の棘突起は特に長いことから隆椎とも呼ばれ、体表から容易に触れることができるため、頚椎前屈で触知し体表からメルクマールとなる。
椎間jt
椎間jtは椎体の後方にある関節で、左右1つずつある。椎間jtの形状は、頸椎、胸椎、腰椎でそれぞれ異なり、この形状の相違が各レベルでの椎間の運動パターンに影響を及ぼす。
中下位頸椎の椎間jt(zygapophyseal joint:facet joint)は上位椎骨の下関節突起と下位椎骨の上関節突起との間の平面jtで、関節包や靱帯で覆われている。関節面は前上方から後下方に緩やかに傾き前後運動を容易にしている。また、椎間jtは脊髄神経後枝内側枝から起こる関節枝によって神経支配を受ける。それぞれの椎間jtは頭尾側それぞれ2本の神経によって支配を受けている。
頚椎の機能解剖
頸椎は、7個の椎骨からなり、全体として正面から見ると直線状、側面から見て前弯の配列を取る。上位頚椎と中下位頚椎で大きくその構造と機能が異なるため、これらを分けて記載する。
上位頚椎
上位頚椎は、環状構造をもつ環椎と歯突起を有する軸椎からなる。環椎は棘突起をもたないが、軸椎は多くの筋が付着する大きな棘突起を持ち、これらの筋群が頸椎前弯維持に重要と考えられている。後頭骨と環椎の間では環椎後頭jtが存在し、強い凸面をもつ後頭骨後頭顆が、弱い凹面をもつ環椎上関節窩にはまり込んで、周囲は強靭な靱帯性結合によって固められており、前後屈以外の可動域はほとんど許容しない。環椎と軸椎の間では、歯突起部で環椎前弓と環椎横靱帯とそれぞれ関節を形成し、その後方にある左右の外側環軸jtを合わせた環軸jtは、頸椎回旋運動においてその可動域の6割を分担する重要な役割を担っている。これら環椎後頭jtと環軸jtには椎間板はなく、滑膜jtと靱帯により連結されている。
中下位頚椎
中下位頚椎の形態はいずれも似通っているが、鉤状突起の存在と椎間jtの形態にその解剖学的特徴がある。椎間jtは水平面に対して45~60°の傾斜をもつ。この角度は各椎体で異なり、C5椎体で最小、C7椎体で最大となる。鉤状突起は、頚椎にしか認められない。椎体で適合して互いに鉤状椎体jt(Luschka jt)を形成している。鉤状椎体jtは椎間の回旋や側屈の安定性にも寄与している。
前・後結節
横突起の先端は前結節と後結節に分かれ、エコー下に頚椎神経根・脊髄神経へのインターベンションを行う際に重要な目印となる。また、C6の前結節は大きく総頚動脈の後方に頚動脈結節とも呼ばれ、星状神経節ブロックなどの際に体表からのメルクマークとなる。
頚椎のキネマティックス
頚椎は、前項屈、左右回旋、左右側屈の6方向をもっている。前後屈の最大可動域は、C5-6椎間にあり、前屈角度はC5-6、C4-5で大きく、後屈角度はC6-7、C4-5で大きいことで明らかにされている。回旋、側屈時の動きに関してはIshiiらが、回旋運動はC1-2間で最大(全可動域の49.0%)、Oc-C1で最小(全可動域の2.3%)の可動域をとることや、回旋、側屈運動時に認められるカップルドモーションの生体内での運動パターンを明らかにしている。
カップルドモーション
カップルドモーションはある運動に随伴して生じる異なる方向への運動のことである。頚椎におけるカップルドモーションは、軸椎下頚椎で生じ、回旋時に側屈を伴う。この運動は、主に軸椎下頚椎の椎間jtの形態に規定されて生じる。
頚椎を回旋すると、軸椎下頚椎では、回旋と同方向の椎間jtは関節傾斜を滑り降り椎間が短縮、回旋と反対方向の椎間jtでは関節傾斜を滑り上り椎間が延長し、結果として各椎間で回旋と同方向に側屈が生じる。一方で側屈方向への自由度がある上位頚椎では、軸椎下頚椎と反対方向への側屈が生じることで軸椎下頚椎の側屈を代償し、全体として頚椎回旋運動を可能としている。
頚椎を側屈する場合でも、軸椎下頚椎での動きは基本的に同じくであり、随伴する同方向への回旋運動を同じく上位頚椎で反対方向に回旋することで、全体として頚椎側屈運動を可能にしている。
引用・参考文献
岩﨑 博執)、山田 宏監):脊椎エコーのすべて 頚肩腕部・腰殿部痛治療のために、日本医事新報社、2021年、5月
長本行隆:頚椎のバイオメカニクス、Jpn J Rehabil Med Vol.53 No.10 2016、P746-749
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