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橈骨遠位端骨折を診る上で必要な知識③筋

肘jt屈伸、前腕回内外に関わる筋はOCDを診る上で必要な知識③筋をご参照ください。

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橈側手根屈筋(FCR)

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 起始は上腕骨内側上顆、停止は示指、中指の中手骨底掌側である。作用は手jtの掌屈、撓屈、補助的に肘jtの屈曲である。FCRは、内側上顆から斜め外方へと走行しているため、前腕回外位では、回内作用を有している。
浅指屈筋(FDS)

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 起始は、上腕骨頭が上腕骨内側上顆、尺骨頭が尺骨粗面、橈骨頭が橈骨近位前面、停止が示指から小指までの中節骨底掌側である。作用はPIPjtの屈曲、MPjtの屈曲および手jt掌屈にも関与する。補助的に肘jtの屈曲に作用する。示指から小指までの4つの筋束がそれぞれ単独で収縮することができる。すなわち、各指にPIPjtの屈曲運動が可能である。
深指屈筋(FDP)

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 起始は、尺骨内側面、前腕骨間膜、停止が示指から小指までの末節骨底掌側である。作用がDIPjtの屈曲、PIPjt、MPjtの屈曲である。手jtの掌屈にも関与する。示指以外のFDPは一般に分離が悪く、環指から小指のFDPを独立して働かせることができない。FDSと対比して覚えるとよい。
尺側手根屈筋(FCU)

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 起始は、上腕頭が上腕骨内側上顆、尺骨頭が肘頭の内側面から尺骨後縁の近位2/3、停止は、豆状骨を介して小指の中手骨底掌側、有鉤骨鉤に付着する。作用は、手jtの掌屈と尺屈、補助的に肘jtの屈曲に作用する。豆状骨に付着することから、豆状骨より起始する小指外転筋の固定筋としても作用する。
長掌筋(PL)

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 起始は、上腕骨内側上顆、停止は手掌腱膜に付着する。作用は、手掌腱膜に緊張を与えつつ、手jtの掌屈に作用する。また、肘jtの屈曲ならびに前腕の回内にも補助的に作用する。
長掌筋は手jt屈筋の一つであるが、欠損例においても特に機能障害を呈することなく、臨床的には手jt屈曲の補助筋として扱った方が妥当である。
長母指屈筋

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 起始は橈骨骨幹部、前腕骨間膜、停止は母指の末節骨底掌側に付着する。作用は母指IPjt、またその走行上、MPjtの屈曲、手jt掌屈にも関与する。手jt掌屈位では、長母指屈筋はその働きを失う。
橈骨遠位端掌側部の2つの骨性隆起点
 橈骨遠位端掌側部を橈骨に接して通過するのは、深指屈筋腱および長母指屈筋腱である。

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これらの腱を除去すると、橈骨遠位端掌側部には、橈側と尺側に2つの骨性隆起点が存在しているのが観察される。尺側の骨性隆起点は橈側のそれより大きく掌側方向に突出していた。これら2つの骨性隆起点の浅い溝の底部を長母指屈筋腱と示指への深指屈筋腱が走行していた。長母指屈筋腱の中心は、尺側の骨性隆起点から平均8.1㎜(SD 0.9㎜)橈側に位置していた。また、尺側の骨性隆起点は、示指の深指屈筋腱と中指の深指屈筋腱の境界にほぼ一致していた。

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 個の尺側の骨性隆起点は、橈骨遠位端掌側部における屈筋腱の位置関係を把握する上で非常に重要な起点となると考えられる。長母指屈筋腱や示指への深指屈筋腱は2つの骨性隆起点の間を走行しており、この部位でプレートやスクリューを橈骨よりも掌側に突出させないと必須であると考えられた。
長母指外転筋

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 起始は尺骨骨幹背側(回外緊張の遠位で、長母指伸筋の近位)、前腕骨間膜、橈骨骨幹背側、停止は母指中手骨底掌側である。作用は、長母指外転筋母指CMjt掌側外転、手jtにはその走行上、掌屈に関与する。
長橈側手根伸筋(ECRL)

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 起始は上腕骨外側上顆に至るまでの外側顆上稜、停止は示指の中手骨底背側に付着する。作用は手jt背屈・撓屈、肘jt屈曲である。
短橈側手根伸筋(ECRB)

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 起始は上腕骨外側上顆、LCL、橈骨輪状靱帯、停止は中指の中手骨底背側に付着する。作用は手jt背屈・撓屈である。停止が中指の中手骨底となるため、撓屈作用はECRLに比べ弱い。
尺側手根伸筋(ECU)

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 起始は上腕骨外側上顆、尺骨の後面上部、停止は小指の中手骨底背側付着する。作用は手jtの純粋な尺屈である。
総指伸筋(EDC)

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 起始は上腕骨外側上顆、LCL、橈骨輪状靱帯、前腕筋膜、停止は示指から小指までの基節骨底に停止後、中心束(central band)となり中節骨底、中節骨に停止する前に外側束(lateral band)を伸ばし、終末腱(terminal tendon)となり末節骨に付着する。作用は示指から小指までのMPjt伸展、肘jtには補助的に伸展に作用、PIPjt・DIPjtの伸展は、手内筋との共同作用によりなされるが、MPjt伸展位では、中心束・外側束が弛緩し、伸展作用を失う。MPjt屈曲位では、総指伸筋がPIPjt・DIPjtの伸展に優位に関わる。
長母指伸筋

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 起始は尺骨骨幹背側(示指伸筋と長母指外転筋の間)、停止は母指末節骨底背側に付着する。作用は母指MPjt、IPjt伸展、手jtには補助的に背屈である。
短母指伸筋

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 起始は橈骨骨幹背側遠位1/3、前腕骨間膜、停止は母指基節骨底背側に付着する。作用は母指MPjtの伸展、手jtには補助的に背屈である。

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示指伸筋

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起始は尺骨遠位骨幹背側、前腕骨間膜、停止は示指に向かう総指伸筋腱の延長部に付着する。作用は示指MPjt・PIPjt・DIPjt伸展、手jtには補助的に背屈に作用する。
小指伸筋

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起始は上腕骨外側上顆、停止は小指に向かう総指伸筋腱の延長部に付着する。作用は小指MPjt・PIPjt・DIPjt伸展である。手jt・肘jtへの関わりは補助的であり、それぞれ背屈と伸展に作用する。
短母指外転筋

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起始は舟状骨結節、大菱形骨、屈筋支帯の橈側前面、停止は母指の基節骨底および橈側にある種子骨に付着する。作用は指CMjt外転である。
母指内転筋

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 斜頭と横頭から起始する。斜頭の起始は有頭骨、中指および示指中手骨底掌側、横頭の起始は中指中手骨の骨幹掌側面、停止は母指の基節骨底および尺側にある種子骨に付着する。作用は母指CMjt内転、母指対立、屈曲には補助的に作用する。
短母指屈筋

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 起始には浅頭と深頭がある。浅頭の起始は屈筋支帯、深頭の起始は大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、停止は母指の基節骨底橈側にある種子骨に付着する。作用は母指MPjt屈曲、母指掌側外転や対立運動には補助的に作用する。
母指対立筋

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起始は大菱形骨、屈筋支帯、停止は母指の中手骨の橈側縁に付着する。作用は母指CMjt対立運動である。
小指外転筋

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 起始は豆状骨、屈筋支帯、停止は小指の基節骨底尺側に付着する。作用は小指MPjt外転である。
短小指屈筋

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 起始は有鉤骨鉤、屈筋支帯、停止は小指の基節骨底掌側に付着する。作用は小指MPjtの屈曲である。
小指対立筋

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 起始は有鉤骨鉤、屈筋支帯、停止は小指中手骨の尺側縁に付着する。作用は小指CMjt対立運動である。
短掌筋

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 起始は手掌腱膜の尺側縁、停止は小指球の皮膚に付着する。作用は手掌腱膜を緊張させる。
第1-4虫様筋

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 起始は深指屈筋腱、停止は総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底に付着する。作用:MPjt屈曲、PIPjt・DIPjt伸展である。
第1-4背側骨間筋

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起始は母指から小指の中手骨の相対する面、停止は総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底に付着する。作用はMPjt屈曲、PIPjt・DIP伸展、手指の外転である。
第1-3掌側骨間筋

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 起始は示指中手骨の尺側、環指、小指中手骨の橈側、停止は総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底に付着する。作用はMPjt屈曲、PIPjt・DIPjt伸展、手指の内転である。
橈骨遠位端背側部の局所解剖

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 橈側から第1区画には長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が、第2区画には長・短橈側手根伸筋腱が、第3区画には長母指伸筋腱が、第4区画には総指伸筋腱および固有示指伸筋腱が、第5区画には固有小指伸筋腱が、第6区画には尺側手根伸筋腱が通る。橈骨背側面中央、すなわち第2背側区画と第3背側区画の間にはLister結節がある。
引用・参考文献
青木隆明監)、林典雄執):運動療法のための機能解剖学的触診技術上肢、改訂第2版、MEDICAL VIEW、2012年
坂井建雄他)監訳:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系第3版、医学書院、2019年、1月
秋田恵一他):運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座―、全日本病院出版会、2020年
安部幸雄編):橈骨遠位端骨折を極める 診療の実践A to Z、南江堂、2019年



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