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ポケカ剣盾カードデザイン賞4選

カードデザインのお話がしたくなったので、カード剣盾の良かったカードを4つピックアップして話していきます。ただし、カード単体ではなく関連カード群やデッキをまとめて評価すべきだと考えたものについては、代表的なカードを挙げています。

・ムゲンダイナVMAX

かつての人気デッキ≪MレックウザEX≫のリメイクと言えるコンセプトのカード。しかし、ポケカでは極めて珍しい、システムポケモンを含めた単色での構築を要求する<ムゲンゾーン>の存在によって、全く違うゲーム体験をもたらしている。

また、悪タイプ限定という制約があるにも関わらず、構築の幅がとても広いことが特徴。
単純に攻撃の要求値が低く、確定枠が少なくなることに加えて、色の制約で一部の強カードを締めしたうえで「何でも良いからとにかく悪タイプをベンチに8匹並べろ」と要求することで、普段はあまり見られないような様々な悪カードに対して採用を検討する必要が生まれることがデッキビルド体験を豊かにしている。
ダイナの展開を担う<クロバットV>がターンに1回まで、かつ出たときの効果であるため、ベンチをクロバットで埋めづらく、他のカードの採用が強く要求されることも大きい。

もしその辺の適当な強カードに色指定の効果を与えても、ただ構築の幅が狭い窮屈な構築になるかもしれない。しかし、ムゲンダイナは緻密に計算された設計によって、新鮮かつ幅広いデッキビルドを実現させているのだ。

それと、ムゲンダイナVMAXが環境に現れたときに、それまで目立った活躍が少なかった<ザマゼンタV>がメタとして活躍するようになった流れが非常に美しかった。(多分この流れを想定してザマゼンタVデザインしてるよね)

・ガラルファイヤーV

無条件でトラッシュのエネルギーを自身につけられる特性と、当時基準では優秀な攻撃技をもつたねポケモン。

このカードの魅力は極めて高い汎用性にある。

例えば、簡単に盤面にエネを増やせる性質を活かした使用法。エネルギーつけかえ系のカードと組み合わせることで、好きなポケモンに手軽に悪エネルギーを加速できるカードとして運用できる。<ムゲンダイナVMAX>など様々な悪デッキで使うことができるが、特に<マニューラGX>と悪タイプのタッグチームGXを組み合わせたデッキでは、大型のTAGを動かすためのエネを用意するのに必要不可欠な存在と言える。
ここで重要なのがファイヤー自身もアタッカーとして優秀な数値を持っていることで、1番の役割がエネ加速だとしても、そこにファイヤーをアタッカー運用する選択肢が加わることでプレイに柔軟性が生まれる。

逆に、「自前でエネ加速できるアタッカー」としての側面を評価して、≪三神ザシアン≫ ≪スイクンV≫などの悪タイプ以外のデッキに悪エネと一緒に出張パーツとして使われることも多かった。≪こくばバドレックス≫、≪ミュウVMAX≫などの強力な超タイプデッキへのメタカードとしての役割をこなせるのは勿論、勝手に育っていくアタッカーという性質が強いため、途切れなく攻撃するためのカードとして、悪弱点ではない相手にも繰り出されることが多かった。

このようにあらゆる方面で抜群の活躍を見せるファイヤーであるが、秀逸なのが「あくまでサブに徹している」という点。攻撃性能は優秀ではあるけれど最強格ではないというギリギリのラインに留まっているためデッキの主役を食ってしまうようなことは少なく、また<じゃえんのつばさ>はファイヤーが何匹いても1匹しか使えないため、ファイヤーをメインとしてデッキを組むこともできなくなっている。このようなファイヤーの控えめな振舞い方によって、高い汎用性があるにも関わらず「環境の多様性を潰している」といったネガティブな印象を与えられることも無い。

・ミュウVMAX / FUSIONデッキ

<ミュウVMAX>で様々なFUSIONポケモンの技をコピーして戦うデッキ。その神髄は<ゲノセクトV>による、過去にあまり類を見ないドロー体験だ。
しかし、<フュージョンシステム>でのドローを狙うならできるだけゲノセクトを並べたい一方で、<ミュウVMAX>で<クロスフュージョン>を使いワザのコピーをするためには対応したポケモンをベンチに置く必要があるため、「下手にゲノセクトを並べるとかえってやりたい動きができないようになる」という戦略性が存在している。
ゲノセクトのドロー体験にミュウの技コピーの性質をうまく組み合わせ、ただの無法ではなく駆け引きを伴うようにしたた素晴らしいデザインである。

また、フレーバー的な見方をすると、「味方の様々な技をコピーして使い分ける」というポケカのミュウの十八番に加えて、<ミュウVMAX>はミュウの「全てのポケモンの祖」以外の性質の表現に力が入っている

<ミュウVMAX>、<ミュウV>は逃げ0であり、また<フュージョンシステム>のドローのために入れかえを消費する必要があるため、≪ミュウVMAX≫デッキでのミュウは場とベンチを頻繁に往復することになる。おまけにダメージを与えても<サイコジャンプ>で山札に帰り、こちらの手の届かないところに行ってしまう。

全てのポケモンと繋がっているだけでなく、滅多に捕らえることのできない幻のポケモンとして、あるいは我々をおちょくるように逃げ回る「ミュウ」の表現として素晴らしいと言えるだろう。

・ジメレオン(うらこうさく)

進化ポケモンの歴代最高傑作。
ポケカでの2進化は多くの場合「1進化よりも出しづらい(その分つよい)進化ポケモン」としてデザインされている。多くの場合で2進化というギミックそのものはデメリットでしかない。(その上で2進化に面白い工夫を与えているカードは一定数存在する。)

しかし、このインテレオンラインは「2回進化すること」を完全なメリットとして活用することに成功した少ないカードであり、その最高峰とも言えるデザインを持っている。

まず注目したいのは「進化させたとき効果を2回起動できる」という点。1進化止まりのポケモンは、1回進化して能力を使ったらもう終わり、場合によってはベンチスペースを埋めるだけの置物になってしまうのだが、メッソンラインはまず、ジメレオンの進化で<うらこうさく>を使った後、さらにそのままインテレオンに進化し、より強力な<うらこうさく>を使うことができる。これは2回の進化を行う2進化にしかできないギミックだ。

また、メッソンやジメレオンの進化を使う時には、駆け引きが発生する。
<うらこうさく>は出たときに発揮される使い切りの効果であるため、然るべきタイミングで<うらこうさ>を使えるよう、メッソン/ジメレオンを進化させずに残すというプレイングは重要になる。

また、ジメレオンは<クイックシューター>のインテレオンへ進化する選択肢を持ち合わせており、<うらこうさく>インテレオンと同時に採用されることも多い。こちらも汎用性が高く強力な効果である。

つまり、インテレオンラインのデッキでは、いつ、どのタイミングで進化を使えばゲーム中で最も適切にパーツを手札に加えられるのか、インテレオンは2種類いるがどちらをいつ使うのか… といった、数ターン先を見据えてプランを立てていく、パズルのような体験が楽しめるのだ。これはカードを引く効果での体験とは一味違うものになる。



他にも語りたいカードはたくさんあるが、今回はここまで。
誤字、誤情報の指摘その他連絡があれば@Tausend_Pfeileまで。



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