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11月27日(1999年) 未来を見つめた11.27

 1999年11月27日(土)、浦和レッズは駒場スタジアムにサンフレッチェ広島を迎えてJ1リーグ2ndステージ第15節を行い、1-0で延長Vゴール勝ちした。勝利はしたが、延長勝ちでは勝ち点2しか得られず、順位を15位に落とし降格が決定した。

 勝ち点26の14位で迎えたこの最終節。残留を争う相手は、勝ち点25で15位のジェフユナイテッド市原、勝ち点28で13位のアビスパ福岡だが、レッズは90分以内で勝ちさえすれば市原、福岡の結果に関わりなく残留できる位置にいた。
 チームの調子はというと、2ndステージ11節までに勝ち点6しか挙げることができなかったのが、12節で市原に勝ったのを皮切りに、ベルマーレ平塚戦、ヴェルディ川崎戦の前節までの3試合で勝ち点7を挙げる上り調子。中位の広島を相手に必ず勝つと誰もが信じていた。

 サポーターはビニールシート、小旗、赤白黒のデカ旗など持てるアイテムのすべてを使ってビジュアルサポートを行い、入場する選手たちの心に火を付けた。

 試合はレッズがほぼ主導権を握っていたと言っていい。だが、最後の詰めが決まらなかった。振り返ってみると、それまでの3試合で見られた必死さが少し足りなかったかもしれない。
 そんなはずはない。何が違うのか。
 ここ3試合すべてに先発し、市原戦と平塚戦で連続ゴールを挙げた福田正博がピッチにいなかった。市原戦から中3日、中2日、中3日の4連戦であり、疲労が考慮されたのかもしれないが、ヴェルディ戦は53分に交代しており、それはこの最終節のためだと思われていた。
 ベンチには入っているので故障ではなさそうだ。切り札と考えられたのかもしれないと僕は思っていた。

 広島が必死に守っていた様子はなかった。想像でしかないが、レッズの味方はしないまでも、残留を積極的に邪魔することはしない、という姿勢に見えた。そんな中でもレッズの先発陣は1点を挙げることができなかった。
 後半に入ってレッズのア・デモス監督は、FWを次々とピッチに送り出したが、福田が呼ばれたのは3人目で、時間は81分。アディショナルタイムを考えても12~13分というプレー時間しか与えられなかった。

 前線で動き、ボールを呼び込む福田。しかしゴールネットは揺らせず、試合終了の笛がなった。勝ち点2以下が決定した。
 他会場では、市原が勝ち、福岡が負けていた。両チームは勝ち点28で終了。レッズが延長で勝てば勝ち点で並ぶが、Vゴール制では得失点差が1しか縮まらない。何をどうやっても、レッズは残留できない。
 しかし、こういう状況であることは試合前に知っていたが、現実に両チームの結果がどうなったか、延長に入る前、僕は知らずにいた。サポーターはみんな知っていたのだろうか。知っていて、延長のあの応援を続けたのだろうか。選手たちは、試合終了と同時にレッズのJ2降格が決定することを知りながら戦い続けたのだろうか。

 その虚しい試合を終わらせたのは福田だった。延長後半に入ったばかりの106分、ゼリコ・ペトロヴィッチの左クロスに飛び込み、ボールをネットに押し込んだ。サッカージャーナリストの大住良之さんが「世界で一番悲しいVゴール」と表現した得点だった。

 試合後、ロッカールームに引き上げた選手たちはなかなかピッチに出てこなかった。
 当時は、最終節で代表の挨拶などはなく、セレモニーとしては選手・スタッフが場内を一周するだけだった。誰もが「どうするんだ」と思っていたに違いない。ロッカールームで締めをやっていたのだろうが、やはり出てくるまでに時間はかかった。

 選手たちが姿を現わし、歩き始めたときのムードは、いつもに比べて悲壮感があったのはもちろんだったが、それ以上に感じたのは「サポーター、闘うのをやめないつもりだな」ということだ。
 もちろん99年のリーグ戦は今日で終わり。だが、J1に1年で戻るための戦いは、もう始まるんだぞ。クラブも選手もそのことを忘れるなよ。
 スタンドから発せられるコールは、そう言っているようだった。
 ブーイングがなかったことを批判したり、貶めたりした評論家がいたが、レッズサポーターはブーイングよりももっと重いプレッシャーをクラブとチームに与えていたのだ。固定観念に凝り固まった頭では想像できないだろうけど、あの場にいれば少しは理解できたはすだ。

 11.27はレッズのメモリアルデーの一つではあるけれど、他の日に比べて、最も未来を見つめた日だったと思う。

 さて、みなさんは1999年11月27日、何をして何を感じていましたか?

【あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~】は、レッズサポーターのみなさんから投稿を募っています。浦和レッズ30年の歴史をいっしょに残していきましょう。詳しくはマガジン「あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~」のトップページをご覧ください。

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