3月7日(2015年) 躍進への扉を開けた宇賀神友弥の活躍

 3月7日について書くのは2回目だが、この2015年の「あの日」が一週間後につながっているので、追加投稿しておこう。

 2015年3月7日(土)。浦和レッズはBMWスタジアム湘南で湘南ベルマーレとJリーグ開幕戦を行った。

3日前、キャプテン阿部の悲痛な叫び

 この年、Jリーグ開幕前に公式戦3試合が行われた。
 2月25日にアウェイで水原三星ブルーウイングスとACL初戦、28日にガンバ大阪と日産スタジアムでゼロックススーパーカップ、3月4日に埼スタでブリスベン・ロアーズとACL第2戦。そのすべてにレッズは敗れた。
 とりわけ3戦目のブリスベンはACLの同組の中でも力が一段下と思われていたので、初戦を落としたレッズとしてはホームゲームでもあり、絶対に勝っておかなくてはならない相手だった。
 しかし立ち上がり3分に先制されると、その後厚くした相手の守備を崩せず、さらに後半になってレッズが退場者を出し数的不利になるなど、内容的にも見ていてストレスが溜まる試合だった。

 試合後、スタジアムは大ブーイングに包まれた。特に選手が場内を一周して北のゴール裏に差し掛かると、それはいっそう激しさを増した。
 そのとき何が起きたか。
 これはYota Kanekoさんの投稿に詳しい

  ふだん目立つことをせず、「背中で引っ張るキャプテン」と言われていた阿部勇樹が試合中以外で初めて見せたと言っていい激しい表情と真摯な訴えを1万3千人のサポーターは受け入れた。

公式戦4連敗を想像させる失点

 湘南とのJリーグ開幕戦は、その3日後だった。
 湘南ベルマーレ。昨季J2に降格し1年で復帰してきたチームだ。ほとんど負けたことはなかったが、昇格の勢いは要注意だ。
 その予感は当たった。相手のスピードに押されたか前半36分にPKを与えて先制されてしまう。

 まずい、と思った。ただでさえアウェイでのJリーグ開幕戦は分が悪いが、負ければ公式戦4連敗となる。しかも「まず一つ勝とう!」と叫んだ阿部勇樹の立場がなくなる。
 この日のこともYota Kanekoさんが投稿してくれている。
 

1ゴール1アシスト1起点

 僕はこの日の宇賀神友弥を強調したい。
 前半の終盤、レッズは敵陣左サイド浅い位置でFKを得た。ミシャ監督からキッカーに指名されたのは宇賀神。僕は思わず二度見した。レッズユース時代はFKを直接決めたこともある宇賀神だが、プロになってこういう場面で蹴ったことはおそらくなかったはずだ。
 だが大方の予想を裏切って(失礼)、ナイスボールが相手GKとDFの間に入っていった。そして抜け出した興梠慎三がGKと交錯しながら頭で叩き込んだ。同点だ。
 この日のウガの活躍は同点アシストにとどまらなかった。
 後半30分、森脇良太が中央からゴール左へ送ったパスに走り込んだ武藤雄樹に「スルー!」と声を掛け、自分がフリーになってシュート。勝ち越しのゴールを決めた。さらに、その2分後、那須大亮がヘディングで駄目押し点を挙げるが、その際にも攻撃の起点となったのがウガだった。

阿部の姿に突き動かされた

 試合後、本人のこういうコメントが残っている。
「この前の試合(3月4日ブリスベン戦)のこともありましたし、特に阿部ちゃんがすごかったです。あんなに気合の入った阿部ちゃんを見たことがないくらいでした。球際やセカンドボールで阿部ちゃんが『もっと行け!』と怒鳴るくらい、ピッチ内で全員を鼓舞して戦っていました。でも今日は全員がすごかったです。今日くらい走るのをベースにしていたら、まず負けないと思います」
 
 チームの中でも特にウガの阿部に対する尊敬の念は強かった。
 阿部の言葉をウソにしてはいけない。阿部に恥をかかせるわけにはいかない。この湘南戦は、ウガの中にそういう思いもあったのではないかと僕は推測している。
 この後のチームの躍進を考えれば、2018年天皇杯決勝でのゴールにも匹敵する、宇賀神友弥の活躍だった。

※【あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~】は、レッズサポーターのみなさんから投稿を募っています。浦和レッズ30年の歴史をいっしょに残していきましょう。詳しくはマガジン「あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~」のトップページをご覧ください。

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