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研究計画書って何書けばいいの~?【マシュマロのお返事】

こんにちは、宇治かばねです。
真面目に答えなきゃいけないっぽい質問がマシュマロに送られてきたので、久しぶりにお返事noteを書いていくぞ~~!

今回のマロはこちら!

こんばんは。 いつもかばね先生のツイート、イラストを楽しく拝見しております。 (中略)
いよいよ志望校を定め、研究計画書を練り始めようかなという段階に入ってきました。まだ個人で気になる教授の論文を読んだりやりたいことを決めたりと行動が遅すぎている部分はあるのですが、研究計画書を書くにあたり質問がありますのでマシュマロを入れさせていただきます。

研究計画書を書く際、教授と面談をしようと考えているのですが、事前に何かやっておくべきことはございますか?また、研究計画書そのものの書き方等をお聞きできたら幸いです。

インターネットでも色々調べてみましたが、理系へのアドバイスが多く、文系や哲学系の大学院に進む際のアドバイスなどが見つからずかなり悩んでおります。色々なアドバイスを見た結果、今後のスケジュールは1~2月に教授と面談、3月に志望研究室の方へ訪問しようと思っています。

長文、乱文失礼いたしました。不躾な質問でしたらスルーしていただければと思います。 寒い日々が続いております。かばね先生もどうかお身体には気をつけてください。これからのさらなるご活躍をお祈りしております。
https://marshmallow-qa.com/messages/841520d3-30ac-4a6a-8700-b278f1a31d93

前回「大学院の選び方」を相談してくれた方ですね~!進学に向けてちゃくちゃくと準備を進めているようで、がんばっている後輩を見守ってる感があってなんだかほっこりしちゃうな……。

さて、今回は研究計画書の書き方で困っているとのことですが、正直私は学部時代をそんなの一生かかっても研究しきれないだろ!」ってレベルの壮大な野望をしたためたハチャメチャな研究計画書を出していた人なので、大したアドバイスができないんですよね…。今からでも学びたいくらい…。

とはいえ、研究計画書がヘタクソだった過去自分に「ここだけは抑えておけよ!!」と言えることはいくつかあります。あくまでも私見ではありますが、私がこの数年間の中で学んだことをまとめてみたいと思います。

1. 何を書けばいいかわからないなら、学振の申請書を参考にしよう!

「そもそも研究計画書にどんなことを書けばいいのかイメージがつかない!」というのであれば、学振の申請書を見るのが一番早いと思います。研究計画書の位置づけや求められる項目は大学や先生によって異なるものの、「私はこういう手順でこういう問題に取り組もうと思っています」と伝えるフォーマットはだいたい学振の申請書と同じです。

学振の申請書を参考にするといい理由は3つ。

① 書かなきゃいけないことが細かく指定されている
「研究目的」とか言われても具体的になにかけばいいのかよくわからんのは(研究に限らずあらゆる企画書において)あるあるですが、学振の申請書は「研究目的」の欄に書いてほしい内容が①~⑤まで具体的に指定されています。これらの項目を埋めていけば、一応研究計画書として必要な情報は揃うので、研究計画書のチェックリストとして便利だと思います。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/boshu/03_pd_naiyo.pdf より引用

② 手引書が出ているので書き方を勉強しやすい
とはいえ申請書を見ただけでは何をどう書けばいいのかわからんのは当然で、だからこそこの世には学振申請書の書き方本が何冊か出ています。作例は理系や社会学系が多い印象ですが、すくなくとも「申請書に求められていることは何か」を知る手助けにはなるでしょう。
私は図書館でバイトしてた頃、棚に並んでた『学振申請書の書き方とコツ』を読んで「そう考えればよかったのか~~~!!」とかなり学びを得ました。
ネットで得られる情報との被りはあると思いますが、一冊の本として整理されているものに目を通しておくのも有効かと思います。

③ 人文系も申請しているのでお手本を探しやすい
研究計画書の書き方というと理系や社会学系が引っかかりがちで困りますが、学振は当然人文系も申請しているので、「専門の近い人はどういうことを書いているんだろう?」というのが調べやすいのも魅力。ちかくに哲学やっている先輩がいるなら、学振の申請書を見せてもらうのも手です。私は研究会の先輩の申請書を見て「こう書けばいいのか……」とかなり気づきを得ました。
どうやらネットには申請書を公開している人もいるらしいので、探してみるのもよいかと。

2. 一番大事なのは「問いを絞り込む」こと!

研究計画書には、研究の背景や目的、研究成果がもたらすインパクトなどをいろいろと書かなきゃいけないことがあります。
しかし、そもそもなぜそんな細かいことを書かねばならないのでしょうか?
答えは単純。「そういうのがあらかじめ決まっていると、研究がスムーズに進むから」です!!

研究に限らず、あらゆるプロジェクトには企画書が必要です。業務改革にせよ、コンテンツ制作にせよ、なぜそれをするのか、それをすることでどんないいことがあるのかが分からなければ、プロジェクトは迷走し、微妙~~な感じで終わります。プロジェクト(研究)が成功するかは、ほとんど企画=計画の出来にかかっていると言っても過言ではありません。

計画なしにプロジェクトを進めるのは、地図を持たずに山を登ろうとするのと同じです。ゴール(目的地)が決まっていなければ、どの道を通っていけばいいのか判断できないので絶対に迷子になるし、帰ってこれなくなります。また、頂上まで早く登りたいのか、ゆっくり景色を楽しみたいのか、キャンプを体験したいのか、山で何がしたいかが決まっていなければ、どんな道具を持っていくべきわかりません。無駄な荷物をもりもりに持っていって疲弊し、挫折します。何がしたいのか事前に決めておくのはめちゃめちゃ大事なのです。

計画書は「大学院に進むために必要だからしかたなく書くもの」ではなく、「自分の計画をスムーズに進めるため」、「満足のいく研究をするため」に書くものです。学振や科研などの場合はお金が絡んでくるのでその限りではありませんが、進学の時に書く計画書は基本的に「自分の研究のために書くもの」と考えた方がいいと思います。

研究計画書が「自分の研究をスムーズに進めるため」に必要なものだとすれば、計画書を書く時に一番力を入れるべき点がどこかもわかります。それは「問いの絞り込み」です。

研究し始めの頃は往々にして、ドデカイ問いを抱きがちです。人間とは何か、自由とは何か、善とは何かといった「とは何か」系の問いは、哲学の永遠のテーマではありますが、研究テーマとしては大きすぎます。それこそ一生かけても解き明かせない問題です。それらに興味を持つことは大切ですが、研究を通して自分なりに一つの答えを出すためには、問いを絞り込む必要があります。

とはいえ、問いを絞り込む作業は難しく、なかなかうまくいかないのが常です。私は研究に丁度いいサイズに問いを絞り込むまでに数年かかりましたし、研究を進めていくことで徐々に焦点が絞りこまれていく面はあります。進学時に書いた研究計画書は、間違いなくあとから変更することになるでしょう。

しかし、だからこそ研究計画書を書く際に一度深く考えておく意義があります。答えを出すのに時間がかかるものには、できるだけ早く着手した方が良いのです。

3. 研究対象にインタビューするつもりで問いを考える

上で言ったように、文献の知識が少ない学部の段階で問いを絞るのはとても難しいです。そんな状態でもなんとか問いを絞るための方法として、「研究対象にインタビューするつもりで質問を考える」というのがあります。

想像してみてください。自分がインタビューを受ける側だったとして、挨拶して一発目に「あなたにとって哲学とは?」と聞かれても、なんていえばいいか全然検討がつきませんよね。でも、「好きな哲学者は誰ですか?」とか「哲学科を選んだ理由は何ですか?」とか細かい質問なら、答えられそうじゃないですか。

研究における「問い」も同じです。インタビューで聞かれた時に、すぐに答えが浮かばないものや、一言で答えられなさそうな問いは、研究テーマとして大きすぎると考えた方がいいと思います。もちろん最初の頃は、どんな質問なら一言で答えられるかイメージできないので、そうそう上手くはいきませんが、少なくとも「とは何か?」系のデカい問いをつぶすことは出来るはずです。

「問い」の粒度がインタビュー同じくらいだと考えれば、インタビューのハウツー本をヒントに研究テーマを絞っていくことができます。私はバイトでライターをしているので、インタビューや取材のハウツー本をちょこちょこ読みましたが、問いの考え方としては研究と通ずるところも多いです。頭がパンクしそうになったら、そういう本を読んでみるのも一つの手だと思います。


数年間の研究生活を振り返って思うのは、結局「いい研究ができたなと思う時は研究計画がきちんと立てられてた時だな~~」ってことです。自分のやりたいことや考えたいことがあっても、それを「研究」として形にするのはすごく難しい。だからこそ、計画を立てて、修正して、洗練させていくことが重要で、そうやって練り上げられた研究計画はきっと、今後の研究の助けになるはずです。

意外と短い大学院生活で、マロ主さんが満足のいく研究ができることを祈っております!


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マシュマロにて、拙著『テツケン』の感想や哲学に関する質問など受け付けております。あんまりいい子と言えないので、アドバイスにはあまり期待しないでほしいのですが、なにか話題を提供してくれるとnoteが更新されることがあります。お気軽にどうぞ。

https://marshmallow-qa.com/sayutetsu


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