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競馬で俳句【2】ヒヤシンスステークス

俳句に欠かせない、季語。
春であれば「春休」「猫の恋」「蝶」などが季語の一例として挙げられます。

実はこの季語、競馬のレース名に使われていることが多いのです。
そこで、競馬ライターであり俳人でもある筆者が、季語の使われているレース、「季語レース」をご紹介します。

2020年2月22日、23日に行われる季語レースは、5レースです。

2月22日(土)
東京9R フリージア賞
京都9R つばき賞

2月23日(日)
東京9R  ヒヤシンスステークス
京都10R  斑鳩ステークス
小倉10R  あざみ賞

今回は、この中からヒヤシンスステークスを取り上げたいと思います。


■ヒヤシンスステークスとは

東京競馬場のダート1600mで行われる、3歳のオープン特別競走です。
「JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY」の対象レース3戦目でもあります。

「JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY」とは、着順に応じてポイントが加算されていき、全対象レース終了後に1番ポイントの高かった馬がアメリカで行われるケンタッキーダービーへの出走権を得る、というものです。

また2019年からはリステッド競走にも指定され、ヒヤシンスステークスはますますその重要性を高めているレースと言えるでしょう。


■季語:ヒヤシンス

ヒヤシンスは春の植物の季語です。
小学生の頃、水耕栽培で育てた記憶のある人も多いのではないでしょうか。

地中海沿岸原産のユリ科の球根植物で、剣状の葉が根本から数枚出て、一本の茎が伸び、多数の小さな花が開きます。
花の色は、紫、ピンク、赤、白、青、黃など豊富です。
ヨーロッパでの品種改良が盛んで、日本には江戸末期に渡来したそうです。

「風信子(ふうしんし)」という別名もあります。

例句として

銀河系のとある酒場のヒヤシンス  橋閒石
教室の入口ふたつヒヤシンス  津川絵理子

などが挙げられます。
私が特に好きな一句は、岡本眸さんのこの句です。

水にじむごとく夜が来てヒヤシンス  岡本眸

ヒヤシンスの水耕栽培の様子と、夜が静かに迫ってくる様子がリンクして、ひたひたと迫りくる厳かな世界を表現しています。


■ヒヤシンスステークス過去の勝ち馬

2008年のヒヤシンスステークスを制したのは、サクセスブロッケンでした。

1番人気、1着。しかも、2着に4馬身差をつけての快勝です。
更に、次走となった端午ステークスも5馬身差での圧勝劇を見せました。

ダート界に、新星あらわる。
否が応でもサクセスブロッケンへの期待は高まります。

しかし、次走に選ばれたのは、東京優駿──そう、日本ダービーでした。
サクセスブロッケンは3歳馬の頂点を決めるこの日本ダービーに、追加登録料を払って出走します。
デビューから4戦すべて、ダートを走っていたサクセスブロッケン。
今までダートしか走ったことがない馬が、はじめて挑む芝の舞台が、競走馬の頂点を決める日本ダービー。
そんな話題性もあり、ダートでの安定した走りも評価され、3番人気に支持されます。

しかし、結果は最下位の18着。
これをきっかけに、サクセスブロッケンはみんなの「愛されキャラ」として定着していくことに。

日本ダービー後は、再びダート路線へ。
大井のジャパンダートダービーを制すると、ヴァーミリアン、カネヒキリとダート古馬の厚い壁に阻まれつつも、翌年のフェブラリーステークスを優勝。
その年の東京大賞典も制し、最終的にはG1・Jpn1を3勝という好成績で引退の運びとなりました。

そして、現在もその「愛されキャラ」は健在。
自身が制したフェブラリーステークスの舞台でもある東京競馬場で、誘導馬を務め、余生を送っています。
日曜に行われるフェブラリーステークスでは、誘導馬として活躍するサクセスブロッケンの姿が見られるかもしれませんね!

■2020年ヒヤシンスステークス注目馬

2020年のヒヤシンスステークス、私の注目馬はカフェファラオです。

注目はなんと言っても、父American Pharoahでしょう。
American Pharoahはアメリカで活躍した競走馬で、アメリカクラシック三冠に加え、ブリーダーズカップクラシックも制しているという名馬なのです。
そんなAmerican Pharoahの初年度産駒のうちの1頭が、カフェファラオ。
デビュー戦ではなんと10馬身差をつけての勝利を収めていますし、期待は高まるばかりです。

もう1頭、気になるのはモリノブレイクです。
こちらはベーカバド産駒、門別出身でヒヤシンスステークスがJRAへの転入初戦となります。
おそらく最低人気になるのでは、とは思います。

しかし何が気になるかというと、こちらも血統のお話になるのですが、母の父がファスリエフというところです。
ファスリエフの父はヌレイエフという名種牡馬。
ヌレイエフ系の血統は母の父として優秀で、短距離・ダート向きとも言われています。

また、地方競馬から中央競馬にやって来る馬は、心情的にも応援したくなるものです。


例句出典:俳句歳時記 角川第五版 春(角川ソフィア文庫)
参考データ:JRAホームページ

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