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真珠湾攻撃の日


1941年12月7日(米国時間)の真珠湾攻撃。
1945年8月6日の広島への原爆投下。
1945年8月9日の長崎への原爆投下。
そして1944年4月25日の祖父の戦死。

これらの日にちを迎えるたびによく思い出す事がある。
前にTwitterに投稿したけどnoteにもまとめておく。


随分前の話だけど、私のお客さんで日本語を話す台湾人のおじいちゃんが居た。
おじいちゃんは日本人美容師が居ると聞いて来てくれた。孫が連れてきてくれて「おじいちゃんは英語は全然話せないけど日本語ペラペラだから」と言うので毎回日本語で話してた。戦時中に日本が台湾を統治した時に日本語の教育を受けている世代です。

私としてはおじいちゃんがそういった経緯で日本語を不自由なく話す事を良く思っているのかどうなのか分からなかった。
台湾の人は親日、という言葉はよく耳にするし、若い世代の台湾出身のお客さん達も殆どの人が日本大好きと言ってくれてる。

日本が学校を建てた、日本が鉄道を引いた、日本が台湾に◯◯したという事が、日本でも台湾でもそれが(わりと美談として)語られるのは聞くけれど、それは台湾の人達の為だったんだろうか。
日清戦争の後に日本軍が鉄道事業に着手したのは台湾の鉄道会社を乗っ取り軍の列車を走らせるためだったからで、台湾に日本が学校を建てたのは戦時中の同化政策の一旦で台湾の人達から母国の言葉や文化を奪ったのではないか、そういう事がいつも頭の中にあった。
若い世代が日本の文化やファッションが好きで日本語を勉強するのとは全く異なりこの日本語世代の人達は母国語を奪われた世代。

だからずっとモヤモヤしていて何度も来てもらって色んな話しをするようになってから、思い切って聞いてみたのだけど。

おじいちゃんはちょっと言葉に詰まった様子だったけど「今は良いと思ってるよ。こうやって今サユリさんと話が出来る訳だし、あのあと台湾は発展したんだし」と言っていた。

私はそれ以上聞くことができなくて「変なことを聞いてしまってスミマセンでした」と謝って、おじいちゃんは「いや聞いてくれてありがとう」と言っていた。
今は良いと思うけど当時はどうだったのか。同化政策が無ければ台湾は発展しなかったのか。

今でもモヤモヤは消えない。


ある日、アメリカ人のお客さんのお父さんが娘のカットに一緒についてきたことがある。この人は退役軍人で「戦争中は日本軍の敵機を幾つも撃ち落とした」と私に言った。周りが凍りついたので、カットの後にお父さんと外に出て話した。

私の母方の祖父は戦争中にパプアで餓死して体は一切母国に戻らないままという事と母は父親の顔を見ずに育った事とその母は私がアメリカに行きたいと言った時に背中を押してくれた事を話した。
お客さんのお父さんはハッと顔色を変え、私に「I’m very sorry 」と言った。

私は何についてsorryなのか聞いたけど、辛そうな顔しただけで答えは無かった。私の家族のことが可哀想という意味のsorryなのか、自分が私に言った言葉を謝るsorryだったのかは今でも分からない。
これも立つ位置が異なると歴史の認識とそれに対する感情は全く異なると言うことのモヤモヤでもある。

このお父さんは日本軍の戦闘機を国のために撃ち落とした事を誇りに思い、私の祖父は国の犠牲となり異国で土になり、そしてその祖父が居た戦場では祖父を含めた日本軍が食べ物を現地の人から取り上げるために現地の人を殺しレイプしている。

コレって誰が正しいんでしょう?

去年の終戦記念日に、姉からメッセージが来た。
今までずっとパプアで餓死したと聞いていた祖父、実はホーランジャヤで「敵重砲弾のため壮烈なる最期を遂ぐ」戦死だったそう。
母の実家から祖父の戦死を伝える1枚の紙が祖父が戦地から家族に向けて送った葉書と共に見つかったそうです。
パプアで遺骨収集されてる方によるとホーランジャヤとは現在のインドネシアのジャヤプラ。

今年の終戦記念日に岸田総理は全国戦没者追悼式の後こうツイートした。「未だ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません。一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くして参ります。
戦後、我が国は一貫して、平和国家として、その歩みを進めて参りました。歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くして参りました」

「一日も早くふるさとにお迎えできるよう」
こういう軽い言葉は怒りしか覚えない。70年以上経ってどうするつもりなのか。
私のじいちゃんは異国で土になってるからそっとしておいてあげて欲しい。

代わりに多くの命が犠牲になった上に残った日本に今現在生きる国民と共に基本的人権について学び、軍備拡張に務める事のみが真の平和国家なのか深く考える事が責務だと思う。


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