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インクルーシブデザインが生み出す語りの三項関係

インクルーシブデザインでは、テーマに寄って様々ですが、障害のある方とのワークショップを行う場合が多いです。

一概にどんな障害のある人がリードユーザーになってくれるかはテーマによりますが、一般参加者や、企業のプロジェクトではそうした方々との接点がさほどない人が関わってくれることが多いです。

兄弟に障害のある人がいるとか、もともとそういう人と接点が多いとかだとその点はあまりやりにくさにならないのですが、多くの方の反応は「障害のある方と接点をもつのですか?(私は慣れてないし詳しくないけど大丈夫ですか‥)」という本音が垣間見えます。

かくいう私も、実は視覚障害の方とちゃんと接点を持ったのは、大学院生時代に、塩瀬先生が京都で担当していたインクルーシブデザインの授業に参加させてもらったのが最初だったと記憶しています。

そんなに抵抗がない私ですら、やっぱり初めてのことだらけで、とまどいがまったくなかったわけじゃないですが、とまどいがわだかまりになったのか、といえばそんなことはまったくなく、当時リードユーザーで来ていた、私の1つ下の全盲の男の子とは、今でも仲良しで、彼が都内に来る時はご飯を一緒に食べています。

インクルーシブデザインの面白さは、「なぜか仲良くなれる場」になることだと思います。たいがい、ワークショップのあとに、リードユーザーさんを中心に、グループが想像以上に仲を深めているという場面はよくあります。

もちろん、リードユーザー役の方々の人間性も十分に影響しているのですが、場の設計は大きく影響していると考えています。

それは、三項関係を作るということです。

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参加者の前提を崩す

障害のある人の困りごと、日常の工夫、気付きなどをシェアしていただく際に、どうしてもみんな、「重たい話を受け止めなければいけない」と思って構えることが多いと思います。

難しい言葉で言うと、障害理解ができてないといけないとか、自分の気づかない偏見があらわになるんじゃないかとか、いろんな不安がかけめぐるようです。

確かにそう思うのも無理はないと思っています。なぜなら「障害を理解しよう」という方法で、障害のある人を知る教育をされてきているからです。

私自身はそれはある側面では弊害になっていると思っていますし、下記の記事でとりあげている、プラスハンディキャップの佐々木さんがおっしゃることはわかるなーと思っています。

よく、「もっといろんな同じ障害者の人がいないから自分はワークショップで貢献ができなかった」と言われることもあるのですが、これは前提が間違っています。

そもそもインクルーシブデザインの場合、例えば視覚障害者の一般像を理解してもらうために実施をしません。

その人からはあくまで課題を見いださせてもらい、インスピレーションにつなげてもらい、共創をするのが大切になります。一般像が抽出されるんだったらわざわざワークショップをする必要はありません。

ただこれも、結局「障害者」として相手を理解しなければいけないというマインドを外しきれてないという意味では、ファシリテーターにも反省テインがあるなあとも思ったりするのですが。

障害当事者は語りたがるという思い込み

インクルーシブデザインでは、障害当事者であるリードユーザーも、自分のことが語りやすくなっているようです。というか、障害当事者も、自分の困りごと、日々の工夫とかって、そんなにいろいろ主張したくない人も多い。それって聞いている相手が責められている気持ちになるし、話題も盛り上がらなく雰囲気を感じるからでしょう。

とはいえ、日々過ごしていると、やっぱり困ることってあって、みなさんいい人だから伝えにくいなと思っているようです。気を使って結局日々の小さなストレスは発散しきれないみたいな人もいる。

そんなときに、三項関係を作るインクルーシブデザインはいろんなメリットが見えます。

三項関係をつくることで、テーマを理由に語れる

三項関係というのは、ワークショップのテーマを間においたうえでコミュニケーションをとるという図を意味しています。(下記図を再掲します)

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説明がしやすいので、視覚障害の方がリードユーザーになった場合という設定で説明をします。そして今月21日に開催したワークショップを例に書いてみます。


テーマがあるから気軽に尋ねられる

まず、一般参加者がどうなるか。同じテーブルに見えない人がいて、本来なら「どう見えてないのか」とか「普段どうやって道を案内すればいいの?何だと嬉しいの?とかはなかなか聞きづらい。聞き方に寄っては失礼かもと思っている。

でも、ワークショップに関わる上では、今月実施した「待ち合わせ」をテーマにしたワークショップでは「いつもどうやって人と待ち合わせするんですか?」という素朴な問いから、結構普段しらない話題に広げられます。そのときに初めて、改札の入り口すぐに点字ブロックがないのがハードルになるのかもしれない、とか、駅員さんがいる有人改札のところで待ち合わせすることで困ったときに声掛けしやすいとか、独自の観点が出てきます。

でもこれが、テーマを抜きにして聞くと結構重たく聞こえがちになります。お互いそういうつもりでなくても。

こんなことも面白がって聞いてもらえると気づく

一方リードユーザーの場合。待ち合わせを普段どうしているかなんて、あまり意識してないわけですよね。もちろんこだわりや工夫はあると思いますが、そんな観点で質問されることはめったにない。

ワークショップのお題として「待ち合わせ」があるから、そういえば待ち合わせのときどんなことを考えているっけ‥?と考えはじめて、そこからぽつりぽつりと語り始める。

すると、晴眼者の側からすると、そんなことを考えて待ち合わせをするのか!と新規発見情報を得られるので、面白がって聞いてくれる。

リードユーザー側も、この話って面白がってもらえる話題だったんだ、と前向きに気づいてくれる。しかも晴眼者側から、「あのときどうしてこんな行動をとったんですか?」とか、ついでに尋ねられて、「そういう観点が疑問になるのか!私にとっては日常なのに面白い!」と思ったりするわけです。

まとめ

アイデアを考えるという理由があるからこそ、そこにテーマがあるからこそ、カジュアルに話題がひろがるとう仕組みになっているということです。ご理解いただけたでしょうか…?

もちろん、なんとなくテーマがあり、「じゃあこれで話し合ってください!」ってできるわけじゃないので、ワークショップデザインをしっかりする必要があると思います。

ワークショップデザインの基礎は、私は完全に山内先生・森さん・安斎さんの『ワークショップデザイン論』をベースに学んでいます。ぜひ読んでみてください。

そして安斎さんのnoteもおすすめです。

また、インクルーシブデザインのワークショップのススメ方については、意外とこの本がおすすめ。実はこの第3部の「19 ワークショップによる対話教育」のところで、塩瀬先生がインクルーシブデザインのワークショップについて書かれています。他の章も贅沢な内容です。


相手とわかり合う取り組みをしたい方は、ぜひこの構造をすこし頭に入れて、場をデザインしてみてくださいませ。

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