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しにたい気持ちが消えるまでの憤りと絶望、そして希望【読書感想文めも】

突然ですが、最近、絶ふと涙が出ることが増えました。
もともとすぐ泣くタイプだろと一部の人には笑われそうですが、最近の涙には一定パターンがあり、それは憤りを感じるとき。憤りの感情が涙に変わる瞬間が最近多くあります。

私の憤る気持ちはどこからやってくるのか、ふと立ち止まって考えてみると、それは、周囲の無理解や無配慮によって排他的な扱いを受けるときかもしれないと気づきました。
もう少し別のことばで言い換えると「非協力的」な状況との出会い、とも表せるかもしれません。そんな感じです。

憤る瞬間、私の場合例えばどんな状況にあるのか。

助けてほしいのに、苦しみを理解してほしいのに理解されない場面に出くわしたり。
ちょっとした手助けだけもらえたらみんなハッピーなのにその手助けすらコストと感じてしまう世の中の窮屈さを感じたり。
こちらは一切関与してなくても、一方的に突っぱねられたり。
なんならこちらはウェルカムでも否定されたり、とか。

本当はもっと良くなるはずなのにできないと思わされる局面に、悔しさを感じているのかもしれません。一言では表現し難い、憤りと悔しさのブレンドが、涙に変わっている、そんな感じです。

最近そうしたことがたまたま立て続けにあったものの、こういうことはある程度(たとえ許せなくても)出来事として許容できる体にはなりました。お恥ずかしながら、これでも少しは大人になってるんだなと思います。

でもそうした、憤るような、悔しさか、もしくは悲しいような出来事が
まだ自立しきれない年頃に何度も出くわしてしまったら。拠り所も決して多くなければなおさら、それは孤立感や孤独感を生み、誰かに評価される以外の自分の価値を知らない年頃だと、役に立たない人間だと思いやすいのかもしれません。それを絶望と呼ぶのかもしれない。

思春期の絶望は、どれだけ周りに「未来は明るいよ」と言われても、拭うことは難しく、自己を支配しやすいのだなと思います。
(こういうことを書くと魔法少女まどかマギカを思い出すんですが、分かる人を見つけたい)

豆塚エリさんの書き下ろしエッセイ本『しにたい気持ちが消えるまで』を読み終わりました。

エリさんがしのうとした前のエピソードも、しにきれなかったあとのエピソードも、はたから見ていて怒りがこみ上げてくるような、時には悔しい気持ちになるような、そして落胆の気持ちに到達するような…そんな場面がちらほらと出てきます。

絶望は突然やってこない。思春期の脆さを抱えた著者に、自尊心を傷つけるような、自分を無価値と感じてしまうような体験が襲いかかる。その体験の積み重ねが絶望という悪魔に化けるのだと思う。日々弱っていく彼女に、絶望という悪魔はは彼女にしぬことを選ばせようとしたのだけれど、彼女はしねなかった。そして思うように動かない体とともに生きる生活が始まった。

しにきれなかった後の世界のエピソードにも、時折絶望や憤りを感じさせることが訪れる。ただ、しのうとする前と違うのは、その積み重ねが悪魔のように襲ってこないどころか、彼女の自立していこうとする姿勢によって、はねのけていくこと。
生きることに前向きになっているからか、その憤りを無視せずちゃんと向き合い、時には言うことは言うようになっていて、いい意味でしのうとする前と同じ人とは思えない。でも、別人では絶対になくて、確かに同じ人がいる安心感もある。

エッセイにのめり込んだ自分は、時折怒りでまた涙が出ていたんだけど、後半はその怒りの対象に立ち向かう彼女の姿勢に、また涙する。

読み終わった頃に、著者の10代の頃の脆さは、確かな強かさに変わっていることにふと気づきました。生き抜く絶望を形作る日々があったはずなのに、すっとその気持ちとゆるやかに同居できてしまうような、なんだか不思議で温かい本でした。

家庭不和(片親とかステップファミリーとか)、障害者差別、障害があることによる就労困難、若者の生きづらさ、メンタルヘルスや自殺防止…この本はこうしたキーワードで切り取ろうと思えば切り取れるのだけど、どうか下手に切り取らないでほしいとも思います。

は〜エリさんと別府で飲み歩きしたいな〜。大分に帰ったら連絡します!(エアリプ)

最後にこれは個人的な感想ですが…

エリさんは思春期を大分県で過ごしていて、県内では屈指の進学校に通っていましたが、高校生のときに車いす生活になります。
結果復学できず現在に至りますが、理不尽な形で退学させられているシーンがあります。
ここは超個人的な話だけど、同じ大分県立高校出身の身としては、もしかしたら私が通っていた高校で面識のある教員の人が、理不尽な言葉を彼女たちに投げかけているかもしれないとしたら、よりリアルさが感じられてまた怒りが湧いてきて…悲しくなりました。(でもこのときの彼女はちゃんと向かい合っていてかっこよかった)

高校生のときにだいぶ生意気していた私が書くのもなんですが、大分県立高校にお勤めの先生方、ぜひこの本を必読書籍にしてくれませんか。

#しにたい気持ちが消えるまで

👇ぜひ読んでね


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