煙草が吸いてぇなあ……というフィクション

フィクションの話。
私はぜんそく患者だし、吸ったことは一度もない。しかし、ものがたりの中での煙草っていうのは、どうしてあんなに魅力的な小道具なんだろうか。まあ、それもあって規制派は喧々してるんだろうけど。

大きな仕事に取り掛かる前、難しいデスクワークを片付けているとき、もう自分は死ぬんだなと覚悟を決めて特攻する前。彼ら彼女らは煙草を吸う。なんて格好いいんだろう。なんて画になるんだろう。
そしてなんといっても、ミステリ好きの私の心に残るのは「今日の一本」の禁を破って灰皿に吸い殻の山を築き上げ、睡眠時間を削り、壮大な謎を解いた島田潔である。

私の父は喫煙家である。亡くなった祖父も喫煙家だったし、田舎へ行けばみんな煙草を吸いながら楽しそうに話をしている。私はその輪にもちろん入れない。そんな事情も、もしかしたら憧れめいた感情につながっているのかもしれない。

持病のことだけではなく、このご時世にこの年齢になるまで吸わなかったのだから私はもう、一生煙草を吸うことはないのだろう。
けれども仕事の持ち帰りに近いことをしていてPCにかじりついていたころ、カウンセリング時に話すことを忘れないように資料を作成しているとき、そしてブログやnoteに載せるための――没となることが多い――記事を下書きしていると何故だかふと、思うのだ。「煙草が吸いてぇなあ」と。

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