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往復書簡・ゆのみのゆ 二通目


よし野ちゃんへ

こんにちは、ひきこもり仲間の雨季です。
わたしは16歳のときに本格的なひきこもりになろうとしたことがありますが、家から一歩も出ないのは3日が限界でした。
おうちにずっといるのは良くないことなのだとつい一年前まで思っていたし、まさかずっと家にいることが推奨される世の中になるなんて考えたこともありませんでした。世界が想像力の外側に来てしまったなとさいきんはよく思っています。

世界の話をちょっとすると、わたしは多元宇宙とか並行宇宙の話がけっこう好きなんですよね。昨年読んだ小説のなかに、人間は実はひとりひとりが日々ちょっとずつ並行世界に移動していることが判明した世界のおはなしがあって。
たとえば手元に持っていたはずのスマホが出かける間際になってどこにも見当たらない、みたいなことって誰しも経験があるかと思うんですが、そういうときまさにちょっとだけずれた隣の宇宙に移っているっていう理屈なんですね。いまの世の中でわかっていることからするとフィクションの設定にすぎないけれど、わりと本当だったりするんじゃないかなあと考えたりしています。

というのも、5年前くらいに設定を何も変えていないのに突然よく聞いていた曲のコーラスがとつぜんデバイスを変えてもソースを変えても聞こえなくなって、理由を知りたくて色々調べたけれどけっきょく原因はわからなかったことがありました。いまもわからないままなので、並行宇宙から移ってきた説を当てはめることもできます。

こういうのを真剣に捉えはじめるとちょっと近づきたくない感じの人になってしまうのかもしれませんが、自分の身のまわりの謎がまだ知らない世界の仕組みに基づいているのかもしれないと思うとすこし怖くなる一方でわくわくもします。
わかることを増やすばかりでなく、わからないことをとっておくのもだいじなのかもしれないですね。「すこし・ふしぎ」のほうのSFを指向していたい人生だなと思います。



香央さんへ

こんにちは。はじめなので恥ずかしいことを率先して申し上げておくと、香央さんのお名前の読みかたがわかっていません。心の中ではカオウさんと読んでいますがよし野ちゃんと話していた感じからするとどうも違う気がするのでどう読むのか教えてください。

われわれはインターネットを介してお話ししたことがあるだけで現実世界ではよし野ちゃんを除けば無縁な人間なのかと思っていましたが、丸実商店(早稲田にある古着屋さん)に二人とも通っていることがわかって嬉しかったです。丸実商店はいい古着屋さんですよね。早稲田大学には進学しないことを選んだ身ですが、日本一好きな紅茶屋さんと日本一好きな古着屋さんがどちらも馬場にあるので早稲田大学に進学すればよかったのではないかと大学卒業を2ヶ月後に控えた今になってもまだ思っています。
今度ぜひ3人で巡りましょうねと言いたいところですが、なかなかお誘いできる状況にならなさそうなのがかなしいところです。

2021.1.18
卒業しなくてはいけなくなるので卒業論文がなかなか書けない雨季より



P.S. 人がなんの音楽を聞いているのかを聞くのが好きなので、書いているあいだに音楽を聞いていた場合はそれを教えてください。聞いていなかった場合は最近好きな曲で。音楽を聞かない人間である場合は最近読んだ本をおねがいします。

ちなみにわたしは.gifというシンガポールのインディーポップユニットの曲を聴きながら書き始めて、書いているあいだに終わってしまったのでドラマ『カルテット』のサントラを聴いていました。


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