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追想:『悪い子は、深夜零時に...』CONAN氏に宛てて

『悪い子は、深夜零時に…』

私は、悪い子です
それは、母が決めました
私は、頭の悪い子です
それは、父が決めました
私は、性格が悪いです
それは、兄弟が決めました

世界は他人が決めるのだそうです
それを誰が決めたのでしょうか?
私でしょうか?  私? でしょうか?
世界でしょうか?  世界? とは何でしょうか?
貴方の世界は貴方のものですか?
私の世界は私のものですか?

答えを探す私は、
深夜零時に家を出て…

*****
『追想:最終列車は、揺籃の様で。』

街へ、街へ、街へ。

上がる息を宥め
迎えが来るのを待った

プラットフォームは、何処か肌寒い
青み掛かった夜に白い吐息がとけてはきえる

街へ、街へ、街へ。

震えていた
正解なんて知らないから

誰に祈れば良いのかもわからないまま

はじめて選んだ行き先を
祈る様に握りしめる。

時刻通りに、それは来た
何故か何も聞こえなかった

きのうまでの さよならを
言えないままで 扉は開く

まばらに降りる 影をすり抜け
飛び乗る 最終列車

「発車します、ご注意下さい」

出荷される動物の気持ちだ
値付けを待ち、運ばれる。

ガタンゴトン、ガタンゴトン
揺籃の様に どこか懐かしい

線路の道は優しくて
迷うこと無く街へ行く

ガタンゴトン、ガタンゴトン
揺籃の様に どこか懐かしい

線路の道は厳しくて
迷っても戻れやしない

ガタンゴトン、ガタンゴトン。
微睡む意識に、終点のアナウンス

扉が開いて、飛び起きる。

街へ、街へ、街へ…

極彩色のビルの影
眠りを忘れた街の呼吸

すれ違う大人達は
頭から爪先まで値踏みする

出荷された動物の気持ちだ
値付けされて、運ばれる。

揺籃は、もう空だ。

-------
『指先で選ぶ、その罪悪に自由を…』

飛び出した街で
私は買われました
その人は 私を女と言いました

放された私は
誰かに拾われました
その人は 私を男と呼びました

捨てられた時
私は思ったのです
誰かのくれた記号は必要か、と

私は
「私」という記号を選びました

私は私

誰かにそれを罵倒されても
誰もがそれを否定したとしても
その自由を奪えはしない、と知りました


*****
『追想:定規、鉛筆、ザクりと鋏。』

「あなたは彼を愛さなくてはイケナイ」

「君は彼女を憎むべきなのだ」

「競いなさい、奪いなさい。そして勝ち取るのです」

それが「私」の為だと

沢山の影が
口々に叫ぶ

私は声をあげなかった
だけど線を一本引いた

その手にあるものじゃ計れない
私の世界は計れない

世界で私を切り刻むのなら
私は世界を切り離す

このたった一本の線を 
ざくりざくりと切り離す

まっすぐになんて出来やしない
それでも一向に構わない

私の世界はみーんな
私の瞳が決めるのだ

アナタの世界もみーんな
その瞳が切り取るのでしょ

夜明けの気配で翳りは深く
夜は一層、醜く美しい

暗がりのこの街では

数多の瞳が愛おしく
ほの暗い輝きを放つ

誰かはきっと色を塗る
誰かはきっと縫い閉じる

だから私は線を引く
無色透明 硝子色

世界は果て無く
どこまでも広く

だから私は線を引く
この視界のこちらとそちら

ザクりと鋏
ザクりザクりと、

私は私
アナタはアナタ

指先でなぞるそれを
私は自由と呼ぶのだ。


*****
『追想:いつか、あの日に灯す小さな光』


沢山の窓の灯り
その外側の薄闇で

宛もなく歩いている
自分の形も曖昧に

私は
何処へ行くの?

私は
何処に行けばいいの?

問いかけは風に…
答えは私の中に

見上げる灯りは
誰かのものだ

だけど、いつか
いつか、この手で

助けてと言えなかった
あの日の「私」の為に…

小さな小さな
たったひとつの光だとしても

誰かの迷いを包める様な
私だけが灯せる光を…

何処へ向かうか
私は選んだ

一歩、踏み出す

トンネルを抜ける様に
道を駆けていく

夜明けは近い
夜明けは近い

誰かの言葉で、
揺るがない

誰かの腕では、
奪えない

この街には沢山の世界があった
だから私も私の世界を

間違えても、迷っても
選んで、進む。

夜の帳が少しずつ上がる
光が、私の瞼を叩く

-------
『数多の世界、夜明けの果てに…』

帰路
硝子色の空気に 朝が来た
光の矢がとおくまで走り去り
窓がまるで海のように輝く。
今まで見てきた、同じはずの光景
それが一層美しく見える
罅割れた世界を押し付けられ
それに甘んじてた私は、
本当の世界なんて知らなかった。
世界は瞳の数だけあるのだ
それを夜の街は教えてくれた
だから私が選んだ私を
否定をする必要はない
卑下する事もない
ただ、何を選ぶか
たった、それだけ

***
悪い子は深夜零時に家を出て
自分を悪い子と呼ぶのをやめました
硝子色のその視界で 貴方は何を選びますか?

その世界は貴方が選んだ、場所ですか…?

*******
2022.07.30 
カフェあめだまparty④ 
上演稿

演者:CONAN
https://twitter.com/edogawa___00000?s=21&t=e63IxC2hAHZpaR6DjgjhiA

大切なお時間をありがとうございます! 少しでも、心に何かを残せたなら幸いです。 少しでも良いと思って頂けたら他作品や、イベント、カフェあめだまをチェックやスキやサポート頂けたら嬉しいです(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 全て活動に還元し、また何か作品をお届け致します。