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試写会レポート『アステロイド・シティ』(登壇:映画評論家/町山智浩氏)

アフタートークレポートが、ようやく公開中の作品まで追いつきました₍ᐢ.ˬ.ᐡ₎


あらすじ

あらすじ:時は1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子供たちとその家族が招待される。それぞれが様々な想いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の真最中にまさかの宇宙人到来!?果たしてアステロイド・シティと、閉じ込められた人々の運命の行方は──!?(引用:Filmarks

アフタートーク

試写会では映画評論家/町山智浩氏がリモート登壇されました。作品の時代背景などを中心にレポートします🎤

🛸1950年代

50年代始め、ソ連とアメリカで核兵器の開発競争をしていた時代。ラスベガスから原爆実験の様子を観るツアーがあったし、砂漠のなかできのこ雲が見えているのが普通の風景だった。そして人々の間で『核によって我々は幸せになるんだ』『核兵器や原子力は素晴らしい』という感覚があった。その時代背景を知っていると、劇中の『君たちが平和に暮らしたいなら、生まれてくる時代を間違えた』という台詞の意味合いが違って聞こえると思う。

🛸当時のデザイン

1950年代は、アトミック・エイジといわれるポップな色合いのデザインが流行っており、この作品にも取り入れられている。

🛸子どもたち

ニューメキシコは、ロスアラモスという研究所が核実験を最初にした街。最近話題になっている作品でもあるオッペンハイマーを始め、各国の物理学者や世界中の天才たちを集めた最先端の科学実験を行っていた。本作ではそれをアレンジして、天才な子どもたちにして描いている。

🛸作品タイトル

本作のタイトルである『アステロイド・シティ』は、ロスアラモスが核実験をしたニューメキシコがアトミックシティと呼ばれていたことをモデルにしている。さらには同じくニューメキシコのロズウェルで起きた''UFO(未確認飛行物体)の墜落現場''もモデルになっている。現在ではUFOの正体は実験用の気球と言われているが、ロズウェルでは今もUFOを観光の売りにしている。

🛸TVショー

実際にあった『プレイハウス90』という番組をモデルにしている。当時(1950年代)のテレビドラマは、録画ではなく、生中継でドラマを演じるスタイルだった。ここでの登場人物もいたるところに実在の人物をモデルにしていることが伺える。劇作家は『ガラスの動物園』『欲望という名の電車』を執筆したテネシー・ウィリアムズがモデルになっている。テネシーは当時としては珍しく自身がゲイであることをオープンにしていた。そのため本作では劇作家と俳優がキスするシーンが含まれている。

🛸演技のメソッド

これまでの演劇界では『キャラクターの表面的な演技』が主流だったが、この頃から『そのキャラクターの内面からなりきって演技をする』というメソッド(スタニスラフスキー・システム)が登場し、1950年代のアメリカではちょうど導入され始めたところになる。前述のテネシーが執筆した『欲望という名の電車』でマーロン・ブランドがその手法を取り入れられた演技をしている。本作では役者陣が集まって座っているシーンがそのワークショップの位置付けになる。

🛸マリリン・モンロー

スカーレット・ヨハンソンが演じている役は、マリリン・モンローがモデルになっており、マリリンはお色気のイメージが強いが実はメソッドの名手とも言われている。マリリンは、自分自身のトラウマと対峙することで傷ついた女性を演じることが人前でできるようになったと語っており、スタニスラフスキー・システムは内面を見つめて演技に活かすスタイルなので、一部では自分と向き合いすぎて病んでしまった?とも言われている。

🛸ウェス・アンダーソンの作品性

ウェス・アンダーソンは、両親が亡くなったことがきっかけで、その後の作品は亡くなった人をテーマにしたものになった。作中でも『時間が癒やしてくれるのは、せいぜいバンドエイド程度のもので、傷はずっと癒えない』という台詞が語られている。


⚠️ここから先は映画のネタバレを含みます。
⚠️未鑑賞の方は、ご注意ください。

引用:公式サイト

アフタートーク(ネタバレあり)

⚠️マリリン・モンローのオマージュ

①列車のなかで読まれた手紙は、前述のエリア・カザン監督が愛人だったマリリン・モンローに向けて書いた手紙が元ネタになっている。
②マリリン・モンローは、お風呂から上がったあとに睡眠薬で亡くなるのだが、似た構図のシーンが本作にも登場する。
③作中でスカーレット・ヨハンソンが言った『あまりにも傷ついたゆえに、誰にもその傷を見せたくないの』はマリリンモンローの人生を象徴しているような台詞になっている。
④マリリン・モンロー演じるヒロインがカウボーイと出会うことで癒やされるという作品があり、本作でもカウボーイスタイルの男性が登場しており、これは『荒馬と女』が元ネタになっている。この作品の脚本を担当しているアーサー・ミラーはマリリンモンローを癒そうとするが、癒せず、結果として『荒馬と女』がマリリン・モンローの遺作となった。

⚠️劇中のメッセージ

エンディング近くで『自分の役が分からない』と悩む役者が出てくる。これは大事なシーンかカットされたために、脚本には反映されておらず、そのため内面まで理解する演技メソッドに躓いてしまうためである。つまりこの作品は''本質的なテーマは映画の中にはないんだ''ということを監督が言いたいのではないかと、町山智浩氏談。

🛸その他

ちなみにこれまでTシャツは下着という扱いだったが、マーロン・ブランドがTシャツを格好良く着こなしていたことからそのままの姿で出演させ、これをきっかけにアメリカではTシャツが普段着の扱いになった。という話をアフタートークで聞いたのだが、マーロン・ブランドの話と本作との繋がりは忘れてしまいました…。その作品を撮ったエリア・カザン監督の名前も出ていたから、白黒シーンでエリア監督がモデルになってる人がいるとかいないとか(この辺、記憶がうっすらしててすみません…)

試写会アフタートークレポートは以上になります。
次回は『BAD LANDS』の完成披露試写会レポートを予定しています。よろしくお願いしますᕱ⑅ᕱ゛

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