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0410|この道の歩き方

朝夕はまだ風が冷たいというのに、いつもの道を歩いているともう満開に近い桜の木がいくつかあった。この桜というのは無自覚にも、私という人間に上を向かせる力を持っているらしい。

私は歩くとき、大抵下を向いている。前でも横でもなく、自分の足元を見る。落ち込んでいるわけではなく、何かを踏むことやつまずくことが怖かったり、そんな理由で下を向くというのが20年でできあがった「私の歩き方」なのだと思う。 

それはただ「道を歩く」という事柄に対してだけではなく「人生の歩き方」にも共通しているらしい。学校という偏った社会から出た私はここ数年、自分とは違う道を歩む人にたくさん出逢った。大勢の中の一部として自分を俯瞰的に見ると、自分の歩き方も見えてきた。前に道が続いているか、横に誰かいるか、どんな空が広がっているか、そんなことはどうでもいい。今、自分が一歩を踏み出そうとしている足元には、自分が進むことで踏みつけられる「何か」はないか、この一歩を踏み出しても転ぶことはないか、ただその足元の一点に集中する。「石橋を叩いて渡る」とは少し違うそんな歩き方をする。

桜が咲いている。気付いた私は、歩きながら桜を見上げ、スマホを掲げた。今日の空は私が思っているよりも明るくて、蒼かった。こんな小さな花にも私の20年の慣性を遮る力があるのなら、私の知る世界にもまだ余白があるのかもしれない。

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