呑気症が授業中に爆音を鳴らした話


中学生の頃、呑気症だった。

きっかけは授業中の空腹だった。
当時肥満気味だった私は授業中の空腹音が心配になった。
朝はしっかりめの量を食べて家を出る。
しかし空腹音の心配はその2時間後くらいからもう既に始まる。

空腹を感じ、お腹に力を入れて誤魔化してやり過ごす。もちろん授業になんて集中できずにお腹のことばかり気にしている。

そして給食にありつき、また2時間もしないうちにお腹の音が気になり出す。空腹音だけでなく消化音も鳴るのだ。

授業中何度もお腹に力を入れて「鳴らないでくれ、鳴らないでくれ」と祈る。
ノートを取るだけで精一杯で話なんて聞いていない。

酷い時は授業の合間のたった5分から10分の休憩に小さなポーチをポケットに入れてトイレへ駆け込んだ。
女子だから生理だろうと思われるだけなので教師に咎められることは一切なかった。
ポーチの中にはキューブ型のチョコを入れていた。
1粒食べただけで少しの安心感を得られた。
すぐに口の中を空にして教室に戻る。なにせ休憩は5分ほどしかないので急がなければならない。

私はそうして放課後までやり過ごしていた。
こんな日々を繰り返していた。


ある日社会科か数学かなにかの授業中だったと思う。
私はついにやらかした。いや、やらかしたのは私というか私の腹なんだが。
時間は昼過ぎ、給食の後だった。相変わらず調子の悪い腹だった。

ゴロゴロと人に聞こえるの聞こえないのかよくわからない不安を煽る音を繰り返していた。
私がお腹に力を入れたりして苦戦していたら

突然

ゴオオオオオオ!!!

とお腹が鳴いた。

かなりの音量だった。
近くの席のクラスメイトたちが

「今の何?」「なんの音?」

と教師に気づかれぬように小声で噂しキョロキョロとしだした。
私もそれに便乗して「え?なに?こわい」みたいな反応をしていた。
隣で寝ていた杉浦くんは爆音で飛び起きた。

顔面は蒼白。身体は硬直。
何が起こったのか自分でもよくわからなかった。
私のお腹の中で何が起きたのか、お腹は大丈夫なのか?
私がオナラをしたとでも思われていないか?

泣きそうになりながら惨めに自分の体より自分だとバレていないかの方が心配でたまらなかった。

授業中だし席の近くに騒ぐタイプの人間がいなかったため、すぐにスルーされた。
杉浦くんは陽キャだが眠かっただろうし。
それは不幸中の幸いだった。

でも、私は今でもあの出来事を思い出すとあの頃のように青ざめる。
あの詰まった排水溝が一気に流れていくような恐ろしい爆音が忘れられないのだ。

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