学校給食への恨み
地域によって給食の量に違いがあることに大人になってから気づいた。
インターネットをふらっと覗いているときはいろんなものが目に入る。
ある日私はどこかの学校給食の画像を見て「え!こんなに少ないの!?」と驚いた。
私が通っていた幼稚園小学校中学校の給食は量が多かった。
「お残し」は当たり前だった。
凄く薄い記憶だが私はほぼ毎日幼稚園での給食を残していた。
私だけではなく教室内のほとんどの生徒がそうしていたと思う。記憶の中に「お残し」をするために先生の前に並び、一人ずつ食器の中身を見せて
「残していいですか?」
と聞くのだ。そこで先生が許可を出せば、配膳に使った大きな食缶に残飯を突っ込んでいいことになる。
先生に許可をもらうときも残飯を突っ込むときにも行列ができている。その行列に並んでいた記憶が私にはあった。
上がって小学校。これはよく覚えている。
私が育った地域の給食では、生徒たち自ら週替わりや日替わりで配膳を分担していた。
給食前の授業が終わったら即ダッシュで配膳の準備が始まる。全員がしっかりしてるわけではないのでダッシュしないやつもいる。なんやかんやあって配膳が終了していただきますをする頃には給食時間残りギリギリ20分か20分切っているときもあった。
さて給食の量はというと、相変わらず「お残し」前提の給食だった。
まずいただきますが済んだらパンや袋に入った麺を割って残す子がいる。食べる前にこの量は無理だと判断した子らは許されている範囲内でまず自分の給食量を減らす。
給食のメニューは様々だったが印象強いのはご飯系と汁物だった。
まずご飯系はお椀に綺麗に収まらない。山盛りが基本だ。何度も配膳係が自分に回ってくるのでわかる。お椀に所謂「普通の量」を入れても、最後にはまだ食缶に残っているのだ。
汁物は「普通の量」…まあお椀の7,8割ほどの量を想定して入れていくが、当たりまえに食缶に余る。
そしてあまったものをどうするかというと配膳係は責任をもって配膳しなければいけない。
「ご飯要る人いませんか?」
声掛けをしなければいけない。人気な物であればワンパク少年たちが名乗りをあげてくれる。
だがクラスのわんぱく少年なんて数名程度。それくらいじゃまだ残飯予備軍は救われない。
名乗り出る者がいなかったり、あまりにも残った量が多いと食缶を持ったまま席を回って全員のお椀に溢れそうなくらい注ぐ。なかには青ざめて
「やめて!!!」
と拒否する子もいる。
配膳係はやがて他の配膳係がエプロンを脱いで席に戻りだすと諦めて自分も席に戻っていく。
すると次のラウンドに入る。
いただきますが済んだらまず教師は残飯ゼロを掲げる学校のために食缶を持ち上げ、
「お願い、食べて、頼む、お願い」
とまだ余っている汁物などを追加で盛り付けに周る。その際ももちろん教師相手に必死で
「やめて!!!」
と拒否する度胸のある子もいる。
「お残し」は重罪である。
小学校低学年では食べきれずに昼休みが終わっても、掃除の時間になっても、廊下に机を出されて食べきれぬ食べ物と暗い顔でにらめっこしている子がいた。晒しものだ。男も女も平等に、そうされる。
それが学年が少し上がると皆どうしたらそうならないのか学んで、不登校になったり、許される範囲で給食の量をうまく減らしたり、教師の目を盗んで家に持ち帰ったりすることで回避する。
私はギリギリ食べられてはいたがやはり苦しかった。というか教師の目を盗んでパンや袋麺を隠して帰宅したことが数えきれないほどあるし、廊下に出されて席から動けず食べ物もこれ以上受け付けられずに食べ物相手に暗い顔で俯いているクラスメイトを見て「ああなりたくない」という半分恐怖心で給食を完食していた。
更に上がって中学。
給食事情は変わらなかった。小学校と同じく「残飯ゼロ」を目指す。給食中の放送では音楽が流れたりするが、放送部による残飯がでた教室ランキングが晒される。そして
「頑張りましょう」
と激励を受ける。
上で書いたように同じく中学でも配膳は生徒がやる。真面目に仕事をする者もいるが、そうじゃない奴もいる。
なんだかんだで給食時間が20分を切る。
少ない時間で生徒たちは急いで飯をかき込む。私はその中で焦りから早食いの癖がついてしまっていた。落ち着いて食べられないのでほとんど噛まずに飲み込むようになった。それでも滑り込みセーフだった。
そんなこんなで半ば愚痴のように吐き捨ててきたが私が小食から過食症のデブになったのは学校給食のせいでもあると思っている。
全部が全部学校給食のせいとは言わない。
でも一因ではある。
「残飯ゼロ」
そんなに大事ならなぜ生徒だけに背負わせる?なぜ残飯がでるのか、なぜ生徒たちは食べきれてないのか。なぜそれを考えない?
そもそもの量を見直して少し減らせばすぐに解決することじゃないか?
大人になってから学校給食への不満がよみがえった。
早食い癖がついたのも過食症になったのも、健康とはとても言えない。
栄養を考え健康を考えた学校給食の結果の一つがこれでは本末転倒じゃないか。と定期的に思い出しては当時の不満を都度募らせている。
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